「HEMSって本当に必要?」「ハウスメーカーの見積もりに入っているけど、外したら困る?」。新築や太陽光の導入を検討していると、HEMS(ヘムス)という言葉が必ず出てきます。ところが検索すると「hemsいらない」という声も多く、何を信じればいいのか迷いますよね。
先に結論をお伝えすると、「HEMSはいらない」は半分正解です。太陽光も蓄電池もなく、電気の使い方を確認したいだけの家なら、電力会社の無料サイトで用が足りることが多いです。一方で、GX志向型住宅やZEHの補助金を使う家では、HEMSは要件そのものなので外せません。そして太陽光・蓄電池・エコキュートを持つ家では、機器同士を連携させる司令塔として働く余地があります。
この記事では、HEMSが家の中で何をしているのかという仕組みから、パナソニックのAiSEG3の希望小売価格、電気代への効果の試算、2026年度の補助金でHEMSがどう扱われているかまでを、公式資料の数字で整理します。売り手の立場ではなく、「自分の家にはどちらか」を判断する材料としてお読みください。
・「HEMSはいらない」と言われる3つの理由と、それが当てはまる家/当てはまらない家
・HEMS本体の価格(AiSEG3は税込68,640円から)と後付け工事の目安
・電気代が10%下がった場合・5%下がった場合の年額の試算
・2026年度のGX志向型住宅・ZEH補助金でHEMSが「必須」になる条件
「hemsいらない」と言われる理由は費用・効果・使いこなしの3つ

いちばん大きいのは「元が取れるのか」という費用の問題
HEMSが不要と言われる最大の理由は、導入費用に対して電気代の削減額が小さく見えることです。パナソニックのHEMSコントローラ「AiSEG3」は、7型モニター付きのMKN7140で希望小売価格92,200円(税抜・工事費別)、税込では101,420円です(パナソニック公式 AiSEG3商品ラインアップ)。ここに分電盤側の計測機器や工事費が加わります。
一方、HEMSの省エネ効果について、家電製品協会は「一般的には10%程度の電気使用量の削減につながると言われている」と紹介しています。月の電気代が12,000円の家で10%下がれば月1,200円、年14,400円です。本体の税込価格だけでも7年分近い削減額に相当し、工事費まで含めるとさらに長くなります。
ありがちなのは、ハウスメーカーの標準仕様に入っていたから何となく付けたものの、見える化の画面を最初の数か月しか見ず、削減効果が出ないまま終わるパターンです。この場合、費用は「電気代を下げる設備」ではなく「表示装置」に払ったことになります。
判断のコツは、HEMSの価値を電気代だけで測らないことです。補助金の要件を満たすため、あるいは太陽光・蓄電池を自動で連携させるためという目的があるなら、費用の意味が変わります。目的がないまま付けるなら、確かに「いらない」側に入ります。
「10%削減」は自動では起きない、という効果の問題
2つ目の理由は、効果の中身です。家電製品協会の説明では、削減は「見える化」によるエネルギー利用効率と省エネ意識の向上に由来するとされています。つまり、画面を見た人が行動を変えて初めて生まれる効果で、HEMSを設置しただけで電気の使用量が減るわけではありません。
なぜそうなるのかは、HEMSの機能の順番を考えるとわかります。HEMSの基本は「測る」ことで、測った結果を見てエアコンの設定を見直す、待機電力の大きい家電を減らす、といった判断は住む人がします。自動制御まで行うには、対応した家電やエコキュートがつながっている必要があり、つながる機器がなければ制御の出番はありません。
具体的には、エアコンが古くてECHONET Lite(エコーネットライト、機器同士が会話するための共通規格)に対応していない家では、HEMSはエアコンを操作できません。「HEMSがあればエアコンを最適運転してくれる」と思って付けたのに、実際は消費電力のグラフを表示するだけだった、という食い違いはこの仕組みから生まれます。
確認すべき点は、自宅にある機器のうち何がHEMSにつながるかです。つながる機器が少なければ、効果は見える化による意識の変化に限られます。その意識の変化で動ける人かどうかが、効果の出る・出ないを分けます。
見ない・触らないまま終わる、使いこなしの問題
3つ目は、使いこなせないという声です。見える化の画面は、分岐回路ごとの電力やリアルタイムの消費量など情報が多く、最初は面白くても、生活のリズムが見えてしまえば毎日見る理由がなくなります。結果として、壁のモニターが時計代わりになっている家も珍しくありません。
これは、見える化の効果が「発見」に集中するためです。冷蔵庫の買い替え時期、待機電力の大きい機器、エアコンの使い方のクセなどは、最初の1〜2か月でほぼ見つかります。発見が一巡したあとは、同じグラフを見ても新しい行動にはつながりにくくなります。
やりがちな失敗は、モニター付きの上位モデルを選んだのに、スマートフォンのアプリしか使わない、あるいはどちらも使わないケースです。AiSEG3はモニター付きのMKN7140(税込101,420円)とゲートウェイ型のMKN706(税込68,640円)で価格差があり、画面を使わない人にとっては差額分がそのまま余分な出費になります。
自分がどちらのタイプかは、今の電気料金の明細を毎月見ているかどうかで判断できます。明細の使用量すら見ていないなら、HEMSの画面も見なくなる可能性が高いと考えてよいでしょう。

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そもそもHEMSは家の中で何をしている機械なのか
役割は「見える化・制御・最適化」の3段階
HEMSとは、家電製品協会の定義では「エアコンや照明などの電気を使う機器と、太陽光発電システムなどの創エネ機器、発電した電気を蓄えるリチウムイオン蓄電システムなどの蓄エネ機器をネットワーク化し、家全体のエネルギーを管理するシステム」です(家電製品協会「省エネ家電 de スマートライフ」)。
機能は3段階に分かれます。1段目が見える化で、太陽光の発電量、蓄電池の残量、家電の消費電力をいつでも確認できます。2段目が制御で、ECHONET Lite対応機器と連携してエアコンや照明などを自動で操作します。3段目が最適化で、創エネ・蓄エネ・省エネをまとめて管理し、どの電気をいつ使うかを決めます。
「HEMSはいらない」という議論が噛み合わない原因の多くは、人によって想定している段階が違うことです。見える化だけを想定している人にとっては、電力会社の無料サイトと大差ないように見えます。最適化まで想定している人にとっては、太陽光と蓄電池を持つ家に欠かせない司令塔に見えます。
自分の家で必要なのが何段目までかを先に決めると、判断が一気に楽になります。太陽光も蓄電池もない家では、3段目の出番はほとんどありません。
ECHONET Lite(エコーネットライト)=エアコン・給湯機・蓄電池などのメーカーが違う機器同士が、同じ言葉でやり取りするための通信規格。AIF仕様は、その中でもHEMSと特定の機器の組み合わせで確実に動くことを認証した仕様です。Bルート=スマートメーターが計測した30分ごとの使用量などを、家の中のHEMS機器へ直接送る仕組み。JC-STAR=IoT機器のセキュリティ要件への適合を示すラベル制度です。
電気の流れを測る場所は「分電盤」と「スマートメーター」の2通り
HEMSがどこから電気の情報を取るかで、できることと費用が変わります。取り方は大きく2通りです。1つは分電盤に計測ユニットを取り付け、回路ごとの電流を測る方法。もう1つは、電力会社のスマートメーターから家全体の使用量を受け取る方法です。
分電盤型は、キッチンの回路、リビングのエアコンの回路といった単位で電気の使い方が見えます。パナソニックはAiSEG3の導入に計測ユニットや分電盤が必要だと案内しており、分電盤まわりの工事が伴います。スマートメーター型は、東京電力パワーグリッドのBルートサービスの説明どおり、30分ごとの使用量や現在の電流値が見えます(東京電力パワーグリッド Bルートサービス)。
失敗しやすいのは、「回路ごとに見たい」のにスマートメーター型を選び、家全体の合計しか見えずに物足りなくなるケースです。逆に「家全体の推移がわかれば十分」なのに分電盤型を選ぶと、工事費が上乗せになります。
見極めのポイントは、知りたいのが「家全体でいつ多く使っているか」なのか、「どの部屋・どの機器が使っているか」なのかです。前者ならスマートメーターの情報で足り、後者なら分電盤での計測が必要です。
「制御」はつながる機器があって初めて動く
HEMSの制御機能は、相手の機器がECHONET Liteに対応していることが前提です。パナソニックはAiSEG3の対応機器として太陽光発電、蓄電池、電気自動車、照明、エアコンなどを挙げ、対応商品の一覧を公式サイトで別に公開しています。一覧に載っていない機器は、HEMSから見えても操作できないことがあります。
制御の効果が出やすいのは、電気を使う時間を動かせる機器です。エコキュートの沸き上げ、蓄電池の充放電、電気自動車の充電は、動かす時間を変えるだけで、太陽光の電気を使うか電力会社から買うかが切り替わります。反対に、照明や冷蔵庫は使う時間を大きく動かせないため、制御による差は出にくい機器です。
ありがちな食い違いは、HEMSを先に入れて、あとから買ったエアコンやエコキュートが非対応だったというケースです。制御機能に期待して払ったのに、使える場面がないまま終わってしまいます。
これから機器をそろえる家は、HEMSを決める前に、エコキュート・蓄電池・エアコンの候補が対応一覧に入っているかを確認してください。対応機器がそろわないなら、制御機能のない安価な見える化だけの選択肢で十分な場合があります。
AiSEG2からAiSEG3へ、世代交代で変わったこと
いま検討するなら、製品の世代にも注意が必要です。パナソニックの比較資料では、従来のAiSEG2は「2026年9月生産終了予定・今後の機能バージョンアップはありません」と明記されています。後継のAiSEG3は2025年3月24日に発売され、2026年1月21日にはファームウェア更新で機能が追加されています。
AiSEG3の変更点として、パナソニックは太陽光の自家消費を高めるAIソーラーチャージの強化、電気自動車と家をつなぐV2Hとの連携強化、生活シーンの設定数を8シーンから48シーンへ拡大したことなどを挙げています。また同社は、東京電力のスマートライフプランのエリアで、太陽光7kW・エコキュート・延床120.08㎡の4LDK・4人世帯・容量40kWhの電気自動車(年間5,200km走行)という条件のもとで、再エネ活用率76%という試算を出しています。
この76%は、太陽光・エコキュート・電気自動車がそろった家での数字です。太陽光のない家や電気自動車のない家にそのまま当てはまるわけではありません。前提条件を読まずに数字だけを見ると、期待と現実がずれます。
見積書にAiSEG2が入っている場合は、生産終了予定であることと今後の機能追加がないことを踏まえて、AiSEG3との価格差を確認しておくと安心です。
本体68,640円から、後付けで15万〜20万円はどこにかかるのか

本体価格はモニターの有無で税込68,640円と101,420円に分かれる
HEMSの費用で最初に押さえたいのは本体価格です。AiSEG3の希望小売価格は、7型モニター付き(ACアダプタ同梱)のMKN7140が92,200円(税抜)、壁付電源同梱のMKN7141が102,000円(税抜)、モニターのないゲートウェイ型MKN706が62,400円(税抜)です。税込ではそれぞれ101,420円、112,200円、68,640円で、いずれも工事費は別です。
モニター付きとゲートウェイ型の違いは、壁に専用画面があるかどうかです。ゲートウェイ型でも、スマートフォンのアプリから見える化や操作ができるため、画面を壁に付ける必要がない家では機能面の差は小さくなります。
ありがちなのは、見積もりの段階でモニター付きが標準になっていて、ゲートウェイ型という選択肢を知らないまま契約するケースです。家族全員がスマートフォンで確認する生活なら、モニターは使われない可能性があります。
判断のコツは、「壁の画面を誰が見るのか」を具体的に考えることです。スマートフォンを持たない家族が電気の状況を確認したい、来客時に操作したいなどの理由があればモニター付き、なければゲートウェイ型で費用を抑える、という分け方が合理的です。
| 項目 | 電力会社の無料サイト(例:くらしTEPCO web) | 工事不要型(例:Nature Remo E2) | 分電盤型(例:AiSEG3) |
|---|---|---|---|
| 費用 | 無料(通信料は自己負担) | 49,940円(税込) | 本体68,640円〜112,200円(税込・工事費別) |
| わかること | 過去最大2年分、時間別の使用量 | スマートメーター経由のリアルタイムに近い家全体の使用量 | 回路ごとの使用量、発電量など |
| 工事 | 不要 | 不要(コンセントに設置、BルートID取得に1〜2週間程度) | 必要(計測ユニット・分電盤) |
| 機器の制御 | なし | ECHONET Lite対応機器(最大16台) | 対応機器一覧の機器 |
| 向く家 | 太陽光なし、使用量を知りたいだけ | 既存住宅で工事を避けたい、太陽光・蓄電池あり | 新築、補助金要件あり、回路別に見たい |
出典:東京電力エナジーパートナー、Nature公式ストア、パナソニック公式ページ(2026年9月時点)。価格は希望小売価格・公式ストア価格で、実売価格や工事費は販売店・設置条件で変わります。
後付けで費用がかさむのは分電盤まわりの工事
既存住宅にHEMSを後付けする場合、HEMS機器メーカーのNatureは、解説記事で総額15万〜20万円程度になるケースが多いとし、内訳の目安を本体機器10万〜15万円、分電盤2万〜3万円、施工費用約3万円と示しています(単一ソースの目安で、条件により変わります)。
費用が本体価格より膨らむのは、分電盤型のHEMSが回路ごとの電流を測るために、分電盤に計測用の機器を組み込む必要があるからです。古い分電盤では計測機器を取り付ける余裕がなく、分電盤ごと交換になることもあります。分電盤の作業は電気工事士の資格が必要な工事なので、自分で行うことはできません。
やりがちな失敗は、本体の価格だけを見て「この金額なら」と判断し、現地調査で分電盤交換を含む見積もりが出てから驚くパターンです。本体価格はあくまで入口で、総額は家の分電盤の状態で決まります。
後付けを考えるなら、見積もりの前に分電盤の設置年や空きスペースを写真に撮っておくと、業者との話が早く進みます。見積書では本体・計測機器・分電盤・工事費が分かれて書かれているかを確認してください。
HEMSの総額は「本体+計測機器+分電盤+工事費」で決まります。本体が税込68,640円のゲートウェイ型でも、分電盤の交換が必要な家では総額が大きく変わります。原因は、分電盤型HEMSが回路ごとの電流を測るために分電盤側の機器を必要とすることです。対策は、見積書で項目が分かれているかを確認し、分電盤交換の有無を現地調査で先に確定させることです。
新築なら追加費用の見え方が変わる
新築の場合、HEMSの費用は建物の見積もりの中に組み込まれるため、後付けほど目立ちません。分電盤は新築時に必ず設置するので、計測機能付きの分電盤を最初から選べば、後付けのように分電盤を交換する二度手間が起きないためです。
ただし、見積もりに組み込まれているからといって、費用が消えるわけではありません。ハウスメーカーの標準仕様にHEMSが含まれている場合、それは「付けないと値引きされる」のか「外しても価格が変わらない」のかで意味が違います。前者なら外すかどうかを選ぶ余地がありますが、後者なら外す理由は薄くなります。
さらに新築では、後の章で説明するとおり、GX志向型住宅やZEHの補助金を使う場合にHEMSが要件になります。補助金を前提に資金計画を組んでいるのに、HEMSを外したことで要件を満たさなくなると、差額以上の損になります。
新築で迷ったら、担当者に「HEMSを外すといくら下がるか」「外しても補助金の要件を満たすか」の2点を聞いてください。この2つの答えがそろえば、付けるか外すかは数字で判断できます。
電気代は本当に下がる?10%削減を前提にした年14,400円の試算
「10%程度」を当てはめると年間の差はこうなる
HEMSで電気代がどれくらい下がるかは、家族構成や行動の変化で大きく変わるため、公式に確定した数字はありません。ここでは、家電製品協会が「一般的には10%程度」と紹介している削減率を使い、前提を明示したうえで試算します。
月の電気代が12,000円の家で10%削減できた場合、月1,200円、年間14,400円です。削減率を控えめに5%とすると、年間7,200円になります。電気をあまり使わない家で月の電気代が8,000円なら、10%削減でも年間9,600円です。これは電気の使い方を見直した結果として生まれる数字で、HEMSを置いただけで自動的に生まれるものではありません。
この試算とAiSEG3の本体価格を並べると、税込101,420円のモニター付きは、10%削減・年14,400円のケースで本体代だけでも7年分に近く、5%削減なら14年分に近くなります。工事費を含めた総額では、さらに長い期間が必要です。
ここからわかるのは、電気代の削減だけでHEMSの費用を回収しようとすると、前提をいくつも楽観的に置かないと成り立たないということです。回収を目的にするより、補助金や機器連携という別の目的と組み合わせて判断するのが現実的です。
節約の源は「発見」で、発見は最初の数か月に集中する
見える化による節約は、ムダの発見から生まれます。たとえば、夜間に誰も使っていないはずなのに一定の電力が流れ続けている、古い冷蔵庫の消費が目立つ、エアコンの設定温度が家族でばらばらだった、といった気づきです。
この発見は、導入直後の数か月に集中します。家の電気の使い方はおおむね決まったパターンの繰り返しなので、一度パターンを把握すると、同じグラフを何度見ても新しい発見は出にくくなります。つまり、見える化の価値は「最初に家の電気の地図を作ること」にあり、その後は地図を時々見直す程度で十分です。
ここで失敗しやすいのは、節約の効果を「毎月続く割引」のように捉えることです。実際には、最初に見つけたムダを減らした分が効果の大部分で、その後は大きく伸びません。家電の買い替えや家族構成の変化があったときに、また地図を見直す、という使い方が現実に近い姿です。
だからこそ、最初の地図作りだけなら、高価な機器ではなく無料の手段で足りる家が多いのです。この点は次の章でくわしく説明します。

太陽光の家は「売るより使う」時代に効き目が出る
HEMSの制御機能が本領を発揮するのは、太陽光の電気を家の中で使い切りたい家です。昼間に発電した電気は、使わなければ電力会社に売ることになりますが、売る単価より買う単価の方が高いと、自分で使った方が家計にとって有利になります。
そこでHEMSは、発電量の予測にあわせてエコキュートの沸き上げを昼に移したり、蓄電池の充電を調整したりします。パナソニックがAiSEG3の特長として掲げているAIソーラーチャージは、まさにこの「発電した電気を家の中で使う割合」を高める機能です。
ただし、この効果は機器構成に強く依存します。太陽光はあるけれどエコキュートも蓄電池もない家では、動かせる機器がないため、HEMSは発電量を表示するだけになります。反対に、太陽光・エコキュート・蓄電池・電気自動車がそろった家では、手作業で時間を調整するのは現実的でなく、自動制御の価値が大きくなります。
自分の家がどちらかは、「昼間に動かせる大きな機器がいくつあるか」で判断できます。1つもなければ制御の価値は小さく、2つ以上あれば、HEMSを司令塔として使う意味が出てきます。

「蓄電池を入れると何がいいんですか」と聞かれたとき、多くの販売サイトは真っ先に「停電時に安心」と答えます。それは間違いではありません。ただ、停電対策だけを理由に…
hemsいらない家の条件は「太陽光なし・無料サイトで足りる・つながる機器がない」

実は、見える化の大部分は電力会社の無料サイトで代用できる
意外と知られていないのが、HEMSの見える化機能の多くは、すでに無料で手に入るという点です。たとえば東京電力エナジーパートナーの「くらしTEPCO web」は、無料で利用でき(通信料は自己負担)、最大で過去2年分の電気料金と使用量をグラフで確認でき、電気使用量は時間別でも表示されます(東京電力エナジーパートナー「くらしTEPCO web」)。料金・使用量の予測や、暮らし方が似た家庭との比較も用意されています。
これが可能なのは、スマートメーターが30分ごとの使用量を計測しているからです。HEMSが登場した頃と違い、今は電力会社側に細かいデータがあり、それを会員サイトで見られるようになっています。他の電力会社でも、会員サイトやアプリで使用量のグラフを提供しているケースが多いので、契約先の会員サービスを確認してみてください。
もちろん、無料サイトは回路ごとの内訳やリアルタイムの表示、機器の制御には対応していません。それでも、「何時ごろに電気を多く使っているか」「先月より増えたか」を知るという目的なら、無料サイトで十分に果たせます。
HEMSを検討する前に、まず無料サイトで1〜2か月、自宅の時間別の使用量を眺めてみてください。それで知りたいことがわかれば、見える化のためにHEMSを買う必要はありません。
太陽光も蓄電池もない家では制御の出番がほぼない
2つ目の条件は、太陽光・蓄電池・電気自動車のいずれもない家です。前の章で説明したとおり、HEMSの制御が効くのは電気を使う時間を動かせる機器があるときで、その中心は太陽光の電気の使い道の調整です。発電設備がなければ、時間を動かしても「電力会社から買う電気の時間が変わる」だけになります。
時間帯によって単価が変わる料金プランなら、エコキュートの沸き上げを安い時間に寄せる意味はあります。しかし、エコキュートはもともと単価の安い時間に沸き上げる設定ができる機器なので、HEMSがなくても本体の設定で対応できます。HEMSを追加して得られる差は小さくなります。
よくある失敗が、将来太陽光を載せるかもしれないからと先にHEMSを入れ、結局載せないまま見える化だけに使っているケースです。将来の予定のために先払いした費用が、使われないまま残ります。
太陽光を載せる予定が決まっていないなら、HEMSはその時に考えれば十分です。AiSEG2のように世代交代で生産が終わる機器もあるので、使う予定のない機器を先に買うのは、むしろ不利になりえます。
つながる家電がなければ「高い電力計」になる
3つ目の条件は、家の中にECHONET Lite対応の機器がほとんどない家です。対応機器がない状態のHEMSは、電力を測って表示するだけの機械、つまり高価な電力計になります。
ECHONET Liteの対応は、エアコン・エコキュート・蓄電池・照明など、機器ごと、さらに機種ごとに異なります。古い家電や、同じメーカーでも普及価格帯のモデルは非対応のことがあります。HEMSだけを新しくしても、つなぐ相手が対応していなければ制御はできません。
やりがちなのは、「HEMSがあれば家全体を自動で最適化してくれる」というイメージだけで導入し、実際にはエアコン1台もつながっていなかったというパターンです。導入後に対応機器へ買い替えると、HEMS以上の出費になります。
確認の方法は、家にある主要な機器の型番を控え、メーカーの対応一覧で調べることです。つながる機器が1つもないなら、制御機能を持つHEMSにお金をかける理由はほとんどありません。
「見なくなる人」はHEMSより先に明細を見る習慣を
4つ目の条件は、機器ではなく住む人の側にあります。電気の使用量や料金をふだん確認しない人は、HEMSを入れても画面を見なくなる可能性が高く、見える化の効果は生まれにくいです。
これは意志の問題というより、情報の置き場所の問題です。毎月届く明細を見ない人が、別の画面やアプリをわざわざ開く習慣を新しく作るのは難しいものです。見える化の効果が「見て行動を変えること」から生まれる以上、見ない人にとってHEMSの価値は小さくなります。
ここでの失敗パターンは、「HEMSを入れれば省エネ意識が高まるはず」と機器に習慣づくりを任せることです。実際には、導入直後にしばらく見て、その後は見なくなり、費用だけが残ります。
見極めのコツは、HEMSを買う前に無料サイトで試すことです。無料サイトを月に1回でも開けるなら、HEMSの画面も活用できる見込みがあります。無料サイトすら開かないなら、HEMSを入れても同じ結果になる可能性が高いので、先に明細を見る習慣から始めてください。
HEMSが事実上必須になる家|GX志向型住宅とZEHの補助要件
GX志向型住宅はHEMSの設置が補助の条件
国の「みらいエコ住宅2026事業」では、GX志向型住宅の補助額が1〜4地域で125万円/戸、5〜8地域で110万円/戸です(2026年度)。このGX志向型住宅の要件には、断熱等性能等級6以上、再エネを除く一次エネルギー消費量の削減率35%以上、再エネを含む削減率100%以上に加え、HEMSなどの高度エネルギーマネジメントの導入が含まれています。
事業の公式ページでは、HEMSについて「ECHONET Lite AIF仕様」に対応するコントローラで、エコーネットコンソーシアムのホームページに掲載されている製品を設置することが求められています。性能を満たしていても、掲載されていない製品は補助対象になりません(みらいエコ住宅2026事業【公式】高度エネルギーマネジメントの導入)。
ここで「HEMSはいらないから外そう」と判断すると、GX志向型住宅の要件を満たさなくなります。同じ事業の長期優良住宅は1〜4地域で80万円/戸、ZEH水準住宅は40万円/戸なので、GX志向型から外れると補助額の区分が下がることになります。
GX志向型住宅を目指している家では、HEMSは「付けるか外すか」ではなく「どの製品で要件を満たすか」を考える対象です。交付申請の期限は遅くとも2026年12月31日まで(予算上限に達した場合はその時点まで)とされています。
2026年度の国の新築支援では、HEMSは単体の設備として補助されるのではなく、住宅の補助要件や加算として組み込まれています。GX志向型住宅(みらいエコ住宅2026事業)では導入が要件、戸建ZEH支援事業ではエネルギー計測装置(HEMS)が交付要件です。補助金を使う家にとって、HEMSを外すことは補助の区分が変わることを意味します。
ZEH支援事業はHEMSが交付要件、高度エネマネなら2万円加算
環境省の令和8年度(2026年度)戸建ZEH支援事業では、補助額がZEHで1〜3地域定額55万円/戸・4〜8地域定額45万円/戸、ZEH+で1〜4地域定額90万円/戸・5〜8地域定額80万円/戸です(ZEH補助金 令和8年度 新築戸建ZEH)。
公募要領では、エネルギー計測装置(HEMS)について、ECHONET Lite規格の認証登録番号をコントローラで取得していること、住宅一棟の全エネルギーを計測できるよう設置することが要件とされています。一方で、HEMSは「導入のみでは補助対象ではありません」とも書かれており、選択要件の「高度エネルギーマネジメント」を選んだ場合に補助対象となり、定額2万円/戸が加算されます。
ZEH+では、「再生可能エネルギーの自家消費の拡大措置」(おひさまエコキュート、初期実効容量5kWh以上の蓄電池、EV充電設備など)と「高度エネルギーマネジメント」のうち1つ以上を選ぶ必要があります。高度エネルギーマネジメントは、HEMSで太陽光の発電量等を把握したうえで、暖冷房や給湯設備等を制御できることが条件です。
さらに、事業完了後2年間は半期ごとにエネルギー使用量などを報告する定期報告があり、HEMSや検針票・WEB明細のデータを使って回答します。ZEHの補助を使う家では、HEMSは要件であると同時に、報告の道具にもなります。単年度事業の公募締切は2026年12月11日17:00です。

2026年7月以降はセキュリティのラベルにも注意
2026年度の補助要件で見落としやすいのが、JC-STARというセキュリティのラベルです。みらいエコ住宅2026事業では、建築確認申請が2026年6月30日以前ならJC-STAR★1以上は推奨、2026年7月1日以降の建築確認申請では、IP通信を使う場合にJC-STAR★1以上が必須要件になりました。
この変更は、HEMSだけでなく、太陽光のパワーコンディショナーのアダプターやゲートウェイなどIP通信機能を持つ構成機器、戸建住宅の蓄電システムにも及びます。家の機器がインターネットにつながる以上、機器のセキュリティを一定水準以上にそろえる狙いがあります。ZEH支援事業の公募要領でも、IP通信機能を持つ制御システムにJC-STAR★1の取得が求められています。
ありがちな失敗は、以前に検討していたHEMSや関連機器の型番をそのまま使い、申請の段階でラベル未取得に気づくケースです。前年度の要件を前提にした見積もりは、今年度の要件を満たさないことがあります。
確認のコツは、見積もりに書かれたHEMSと関連機器の型番が、エコーネットコンソーシアムの掲載製品であり、JC-STARの適合ラベル取得製品リストにも載っているかを施工会社に確認してもらうことです。申請のタイミングで要件が変わっていないかも、あわせて確認しておくと安心です。
補助金を使わない新築なら判断は「外しても損しないか」
一方で、新築でも補助金を使わない、あるいはGX志向型住宅やZEHの基準を目指さない家では、HEMSは要件ではありません。この場合は、前の章で説明した「いらない家の条件」に当てはまるかどうかで判断できます。
ただし、補助金を使わない家でも、太陽光と蓄電池を載せる予定があるなら話は別です。HEMSなしでも太陽光や蓄電池は動きますが、エコキュートの沸き上げ時間や蓄電池の充放電を発電にあわせて調整する作業は、手動か各機器の単独の設定に頼ることになります。
よくある誤解が「ZEHではない家にHEMSを付けても意味がない」という考え方です。補助金の有無と、HEMSが家の中で役立つかどうかは別の話です。逆に、補助金を使う家でも、HEMSが要件を満たすための形式的な設置になり、実際には使われていないこともあります。
補助金を使わない新築では、担当者に「HEMSを外した場合の減額」を確認し、太陽光・蓄電池の予定と照らし合わせて決めるのが合理的です。予定がないなら外してもよく、予定があるなら制御できる製品を選ぶ、という分け方になります。

つけるなら後悔しない選び方|無料サイト・工事不要型・分電盤型の3段階
第1段階は電力会社の無料サイトで地図を作る
HEMSを検討するとき、いきなり分電盤型の製品を選ぶ必要はありません。最初の一歩は、契約している電力会社の会員サイトで、時間別の使用量を確認することです。くらしTEPCO webのように、無料で過去2年分の使用量や時間別の使用量を見られるサービスがあります。
この段階でわかるのは、家全体でいつ電気を多く使っているかです。朝と夜にピークがあるのか、夜間にも一定の使用量が続いているのか、季節でどれだけ変わるのかといった大まかな地図が描けます。この地図があれば、次にどこを知りたいかがはっきりします。
失敗しやすいのは、この段階を飛ばして高価なHEMSを買い、結局わかったことが無料サイトと同じだったというケースです。無料サイトで答えが出る疑問に、税込68,640円からの機器を買う必要はありません。
見極めのコツは、無料サイトを見て「もっと知りたい」と思うことが出てきたかどうかです。「リアルタイムで今の使用量を知りたい」「太陽光の発電と一緒に見たい」と感じたら、次の段階に進む理由があります。
第2段階は工事不要型で太陽光・蓄電池とつなぐ
既存住宅で、工事を避けながらリアルタイムに近い見える化や機器の連携をしたい場合は、スマートメーターから情報を受け取る工事不要型のHEMSがあります。例としてNature Remo E2は、公式ストアで49,940円(税込)、コンセントに設置するだけで工事は不要とされています(Nature公式ストア Nature Remo E2)。
この種の機器を使うには、電力会社が発行するBルートサービスのIDとパスワードが必要です。Natureは取得に1〜2週間程度かかると案内しています。東京電力パワーグリッドのBルートサービスは、データの送信に費用はかからないとされていますが、HEMS機器は利用者が用意するものです。また、ベストエフォート型のため、設置場所の通信環境によってはデータの遅延や欠損が生じる場合があります。
Nature Remo E2はスマートメーターのほか、太陽光発電、蓄電池、V2H、エコキュートなどのECHONET Lite規格対応機器とつながり、登録できる家電は最大16台です。回路ごとの内訳は見られませんが、家全体の使用量と発電の関係をつかむには十分な場合があります。
判断のポイントは、分電盤の工事を避けたいかどうかと、補助金の要件が関係するかどうかです。補助金の要件を満たす必要がある場合は、製品がエコーネットコンソーシアムに掲載されているかを別途確認してください。
第3段階が分電盤型、新築と補助金の家に向く
回路ごとの内訳まで見たい、太陽光・蓄電池・エコキュート・電気自動車をまとめて制御したい、補助金の要件を満たしたい、という家に向くのが分電盤型のHEMSです。AiSEG3のように、計測ユニットや分電盤と組み合わせて家全体を管理します。
分電盤型が新築と相性がよいのは、分電盤を最初から計測に対応したものにできるからです。後付けでは分電盤の交換が必要になる場合がありますが、新築なら建物の工事の一部として組み込めます。また、GX志向型住宅やZEHの補助金では、住宅一棟の全エネルギーを計測できるよう設置することが要件になっており、分電盤型はこの要件と合わせやすい構成です。
ありがちな失敗は、分電盤型を選んだものの、つなぐ予定だった機器が対応一覧に入っていなかったというケースです。制御の司令塔を入れても、指示を受ける側が非対応では動きません。
分電盤型を選ぶなら、HEMSの型番より先に、太陽光・蓄電池・エコキュート・エアコンの候補が対応一覧に入っているかを確認してください。司令塔と部下の組み合わせで考えるのが、後悔しない選び方です。
GX志向型住宅では、性能を満たしていても、エコーネットコンソーシアムのホームページに掲載されていない製品は補助対象になりません。さらに2026年7月1日以降の建築確認申請では、IP通信を使うHEMSにJC-STAR★1以上が必須です。原因は「HEMSならどれでも同じ」という思い込みです。対策は、型番を決める前に掲載製品とJC-STARの両方を施工会社に確認してもらうことです。
読者タイプ別:あなたの家はどの段階で止めるべきか
ここまでの内容を、家のタイプ別に整理します。まず、賃貸や太陽光のない戸建てで「電気代が気になる」という家は、第1段階の無料サイトで止めて問題ありません。時間別の使用量で大きなムダを見つけ、家電の使い方を見直すのが最短ルートです。
次に、既存の戸建てで太陽光があり、卒FITを迎えて自家消費を増やしたい家は、第2段階の工事不要型が候補になります。発電と消費を並べて見ることで、エコキュートの沸き上げを昼に移すなどの判断材料が得られます。蓄電池の導入を検討している場合は、蓄電池とあわせて考えると効率的です。
そして、新築でGX志向型住宅やZEHの補助金を使う家、太陽光・蓄電池・電気自動車をまとめて持つ家は、第3段階の分電盤型が現実的な選択です。この場合は「HEMSがいるかどうか」より、「どの製品で要件を満たし、どの機器とつなぐか」が論点になります。
最後に、どのタイプにも共通する注意点があります。HEMSの価値は、つなぐ機器と使う人の習慣で決まるということです。機器だけを入れて効果を待つのではなく、段階を踏んで、必要になった分だけ投資する考え方が、後悔を避けるいちばん確実な方法です。
まとめ
最初の一歩は、契約中の電力会社の会員サイトにログインして、先月の時間別の使用量を開いてみることです。そこで「もっと知りたい」ことが見つかったときが、HEMSを検討するタイミングです。
※補助金の金額・要件・価格は2026年9月時点の公式情報に基づきます。制度や価格は変わることがあるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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