夜、急に部屋の明かりが消えて、玄関の外をのぞくと廊下まで真っ暗。「自分の部屋だけ?それともマンション全体?」と迷ったことはありませんか。戸建てと違い、マンションの停電は照明や冷蔵庫だけの問題では終わりません。エレベーター、オートロック、機械式駐車場、そして水道まで、建物全体の設備が電気で動いているからです。
結論から言うと、マンション停電で生活への影響が大きく分かれるのは「給水方式」です。高架水槽方式なら屋上の水槽に残った水が重力で届きますが、新築に多い直結増圧方式は停電と同時に断水します。ですから備えの優先順位は、ポータブル電源を買うことより先に「自分の住んでいる建物がどういう仕組みか」を知ることから決まります。
この記事では、停電の原因と復旧の仕組み、自室だけの停電と全体停電の見分け方、止まる設備と止まらない設備、法律で義務づけられている非常用電源の範囲、復旧時に起きる通電火災の防ぎ方、ガス併用とオール電化の違いまでを、売り手の立場ではなく中立の視点で整理します。
・停電の原因と、すぐ戻る停電・長引く停電の違い
・自分の部屋だけか建物全体かを見分ける順番
・給水方式3種で「水が出るか」が決まる仕組み
・通電火災を防ぐ行動と、家庭でできる電源の備え
マンション停電の原因は建物の外にある?25%以上を占める意外な正体

停電原因の25%以上は動物、電柱の変圧器で起きている
停電の原因として多いのは、建物の中の故障ではなく、建物の外にある電柱や電線まわりのトラブルです。とくに意外なのが動物で、マンション管理の解説記事では停電原因の25%以上が動物による接触だと紹介されています。
理由は電柱の構造にあります。電柱の上には変圧器があり、ここで高い電圧を家庭で使える電圧に下げています。ネズミや蛇、鳥、リスなどが電柱に登って変圧器や電線に触れると、そこで電気がショートし、保護装置が働いて送電が止まります。動物以外にも、落雷、自動車の衝突による設備の損傷、地中に埋めたケーブルの損傷、工事中のクレーンの接触などが原因として挙げられています。
ありがちな勘違いは「マンションの設備が古いから停電した」と決めつけて、すぐ管理会社に苦情を入れてしまうケースです。実際には周辺一帯が同時に止まっていることも多く、その場合は建物側でできることはほとんどありません。
判断のコツは、停電の原因を「建物の外」「建物の共用設備」「自分の部屋」の3つに分けて考えることです。外が原因なら電力会社の復旧を待つしかなく、自分の部屋が原因なら自分で直せる可能性があります。この切り分け方は次の章で手順として整理します。
一瞬で戻る停電と何日も続く停電、分かれ目は「設備が壊れたか」
停電には、一瞬消えてすぐ戻る短時間停電と、何時間も何日も続く長時間停電があります。両者を分けるのは「設備が物理的に壊れたかどうか」です。
送電線への落雷や、木の枝が電線に一時的に触れたような場合、原因そのものはすぐに消えます。そのため電力会社の設備が自動で再送電し、1分程度で戻るケースが多いのです。落雷による停電では22分程度で復旧した事例も紹介されています。一方、電柱が倒れた、電線が切れたといった設備損傷の場合は、作業員が原因の場所を探して修理するまで電気は戻りません。被害が広範囲に及ぶと、復旧には日単位から週単位の時間がかかります。台風による停電では、被害の状況によって数日から10日以上かかる場合があり、最大280時間(12日以上)に及んだ事例もあります。
ただし、日常的な頻度で見ると停電そのものはまれです。日本の停電統計として、停電回数は年間0.13回、停電時間は24分という数値(2026年8月時点で公表されている値)があります。多くの家庭では「年に1回あるかないか、あっても短時間」が平常時の姿です。
注意したいのは、平均が短いから備えなくてよい、という結論にはならない点です。備えが必要になるのは平均的な停電ではなく、台風や地震で起きるまれな長時間停電です。「すぐ戻る停電」と「長く続く停電」は別物として考えておきましょう。
復旧は変電所に近い順、配電自動化システムが区間を切り分ける
停電が長引くかどうかは、電力会社がどうやって原因の場所を探すかを知ると見通しが立ちます。基本は「変電所に近いエリアから順番に電気を流し、停電原因のあるエリアを絞り込む」という方法です。
電気は変電所から枝分かれしながら各地域に届いています。どこか1か所に原因があると、その先の区間ごと止まってしまいます。そこで変電所側から順に電気を送り直し、どこで再び止まるかを見ることで原因の区間を特定します。区間がわかったら社員が現場に出動し、電柱を一本一本調べて異常箇所を見つけ、修理します。送配電事業者の公式解説でも、この流れで復旧作業が進むことが説明されています。
さらに現在は「配電自動化システム」が導入されていて、原因の区間を自動的に検出し、原因区間以外へは短時間で自動的に電気を送ります。つまり同じ地域でも、原因区間の外側にある家は早く戻り、原因区間の中にある家だけが修理完了まで待つことになります。
ここからわかる判断のコツは、「近所の家は点いたのにうちのマンションだけまだ」という状況は珍しくないということです。原因区間に入っているか、あるいは建物側の設備に原因があるかのどちらかです。電力会社のホームページで停電エリアを確認し、建物側の問題か外側の問題かを見極めましょう。
配電自動化システム=停電が起きたとき、原因のある区間を自動的に検出し、その区間を切り離したうえで、原因区間以外へ短時間で自動的に電気を送り直す仕組み。同じ地域でも復旧のタイミングに差が出るのはこのためです。
「自分の部屋だけ?」を最初の数分で見分ける順番
まず分電盤を見る、ブレーカーが落ちていれば自室の問題
電気が消えたとき、最初に確認すべきは部屋の分電盤です。ブレーカーが「切」になっていれば、停電しているのは自分の部屋だけで、ブレーカーを「入」に戻せば直る可能性が高いからです。
理由は分電盤の役割にあります。分電盤には、契約した電流を超えると落ちるアンペアブレーカー、漏電を検知すると落ちる漏電遮断器、部屋ごと・コンセントごとの回路を守る配線用遮断器が並んでいます。どれかが落ちたということは、部屋の中で「使い過ぎ」か「漏電」か「特定回路の異常」が起きたというサインです。住宅情報サイトのマンション停電の解説でも、ブレーカーがOFFなら自分の部屋だけの停電で、ONにすれば改善すると説明されています。
ありがちなのが、真っ暗な中で分電盤の場所がわからず、スマートフォンのライトで家じゅうを探し回るパターンです。マンションの分電盤は玄関付近や洗面所の上部、収納の中など、住戸によって位置が違います。
判断のコツは、平常時に分電盤の場所と、どのブレーカーがどの部屋に対応しているかを一度確認しておくことです。懐中電灯を分電盤の近くに置いておくと、停電時の最初の一歩がすぐに踏み出せます。
共用廊下と街灯で「建物全体」か「地域全体」かを切り分ける
分電盤のブレーカーがすべて「入」のままなら、原因は部屋の外です。次は、共用部と周囲の建物を見て範囲を切り分けます。
見るポイントは2つです。1つ目は共用廊下やエントランスの照明。ここが消えていれば、マンション全体が停電しています。2つ目は周囲の住宅や街灯。周辺も消えていれば地域全体の停電で、原因は電力会社側の設備にあると考えられます。逆に、周囲は点いているのにマンション全体だけ消えている場合は、建物の受電設備など共用部側に原因がある可能性があります。
範囲によって連絡先が変わるのがポイントです。地域全体なら電力会社の停電情報を確認し、マンション全体だけなら管理会社や管理組合に連絡します。自分の部屋だけなら自分で対応します。ありがちな失敗は、地域全体の停電なのに管理会社へ電話が集中し、本当に建物側の対応が必要な連絡がつながりにくくなるケースです。
確認しておきたいのは、管理会社の緊急連絡先がどこに書いてあるかです。多くのマンションでは掲示板や管理規約、入居時の資料に記載されています。停電中はインターネットがつながりにくくなることもあるので、スマートフォンの連絡先に登録しておくと安心です。
漏電で落ちたときは回路を1つずつ戻す
分電盤を見て漏電遮断器が落ちていたら、ただ「入」に戻すだけでは不十分です。漏電している回路を特定するため、回路を1つずつ戻す手順を踏みます。
手順は次の順番です。まずアンペアブレーカーが「入」になっていることを確認します。次に、配線用遮断器(小さなブレーカー)をいったんすべて「切」にします。そのうえで漏電遮断器を「入」にし、配線用遮断器を1つずつ「入」にしていきます。ある回路を入れた瞬間に漏電遮断器が再び落ちれば、その回路に漏電の原因がある、とわかるわけです。電気の使い過ぎでアンペアブレーカーが落ちた場合は、使っていた電化製品の電源を切ってからアンペアブレーカーを「入」に戻します。
漏電の原因になった回路がわかったら、その回路は「切」のままにして、それ以外の回路だけを使います。原因の調査や配線の修理は、感電や火災の危険を伴うため、自分で分解せず電気工事の有資格者や管理会社に依頼してください。
判断のコツは、同じ回路で何度も漏電遮断器が落ちるなら、その回路につながった家電か配線に問題があるということです。水回りの家電や、古い延長コードをつないでいる回路が候補になりやすいので、依頼時に「どの回路で落ちるか」を伝えると調査がスムーズです。
漏電遮断器が落ちたとき、配線用遮断器をすべて「入」にしたまま漏電遮断器を戻すと、すぐにまた落ちるか、一時的に戻っても原因の回路がわからないままになります。原因は「どの回路で漏電しているかを切り分けていないこと」です。対策は、配線用遮断器をいったん全部「切」にしてから、1つずつ「入」にして落ちる回路を特定すること。特定できた回路は使わずに、有資格者へ点検を依頼しましょう。
停電で止まる設備、止まらない設備を整理する

エレベーター・オートロック・機械式駐車場が同時に止まる
マンション停電で戸建てと最も違うのは、共用部の設備がまとめて止まることです。エレベーター、オートロック、機械式駐車場、共用廊下の照明が、すべて電気で動いているからです。
エレベーターが止まると、高層階の住人は階段で上り下りするしかなくなります。オートロックや電気錠は作動を停止し、出入りできなくなるリスクがあると指摘されています。機械式駐車場は動作が止まり、車の出し入れができなくなります。車で避難しようと考えていた家庭にとっては、想定外の足止めになります。
ありがちな失敗は、停電中にエレベーターに乗ってしまい、途中で止まって閉じ込められるケースです。停電が起きた直後や、復旧したばかりで電気が不安定なときは、エレベーターの利用を避けて階段を使うのが基本です。万一閉じ込められたら、扉を無理にこじ開けようとせず、かごの中の非常呼び出しボタンやインターホンで外部に連絡してください。
判断のコツは、共用部の停止を「自分の生活動線」に当てはめて考えることです。何階に住んでいるか、車を機械式駐車場に停めているか、オートロックの解除に電気錠を使っているか。これらを確認すると、自分の家にとって停電で困ることの順番が見えてきます。
室内は給湯・冷蔵庫・Wi-Fiまで、通電後の再起動も必要
部屋の中では、照明以外にも多くの設備が止まります。給湯(電気式の場合)、冷蔵庫、テレビ、コードレス電話、Wi-Fiなどです。さらに、給水方式によっては水そのものが出なくなり、トイレも流せなくなります。
見落としやすいのがインターネットです。停電中は当然使えませんが、解説記事では、通電後も再起動が必要な場合があると指摘されています。ルーターやマンションの共用通信設備が再起動しないと、電気が戻ってもネットにつながらないことがあるのです。
固定電話も要注意です。コードレス電話は親機が電気で動いているため、停電すると使えなくなります。「家に固定電話があるから連絡手段は大丈夫」と考えていると、いざというときに通話できません。連絡手段はスマートフォンと、その充電手段を確保しておくのが現実的です。
確認しておきたいのは、家の中で「電気がないと使えないもの」のリストです。給湯器が電気式かガス式か、固定電話がコードレスか、冷蔵庫に長期保存の食品がどれくらいあるか。これを把握しておくと、停電時に何から手をつけるかを迷わずに済みます。
非常用照明が点くのは約30分、その後の明かりは自前で
停電すると、共用廊下や階段の非常用照明が自動で点灯します。ただし点灯が維持されるのは約30分間です。長時間停電では、30分を過ぎると廊下も階段も暗くなります。
これは建築基準法施行令で、非常用照明の最小点灯時間が「連続30分以上」と定められていることに由来します。非常用照明は、火災などで停電したときに住人が安全に避難するためのもので、何時間も生活を支える照明として設計されているわけではありません。避難に必要な時間を確保するのが目的なのです。
ありがちな失敗は、「共用部の非常灯が点いているから、懐中電灯は後で探せばいい」と後回しにしてしまうことです。30分後に廊下が暗くなってから探し始めると、自分の部屋の中も真っ暗で見つけにくくなります。とくに高層階から階段で降りる必要がある場合、手元の明かりがないと転倒のリスクが上がります。
判断のコツは、非常用照明を「避難のための時間稼ぎ」と考え、生活の明かりは各家庭で用意することです。懐中電灯やランタンを玄関と寝室の手の届く場所に置き、電池の残量を年に一度は確認しておきましょう。
| 場所 | 止まる設備 | 起きやすい困りごと |
|---|---|---|
| 共用部 | エレベーター、オートロック・電気錠、機械式駐車場、共用廊下の照明 | 階段での昇降、出入りができない、車が出せない |
| 室内 | 給湯(電気式)、冷蔵庫、テレビ、コードレス電話、Wi-Fi | お湯が出ない、食品の保存、連絡・情報収集ができない |
| 給水 | ポンプを使う方式では給水が停止 | 水が出ない、トイレが流せない |
| 非常用照明 | 約30分間は点灯を維持 | 長時間停電では廊下・階段が暗くなる |
マンション停電で水が出るかは給水方式3種で決まる
高架水槽方式は重力で水が届く、ただし水槽の残量まで
マンションの給水方式は大きく分けて、高架水槽方式、受水槽方式(加圧ポンプ式)、直結増圧方式の3種類です。このうち停電に最も強いのが、屋上などに水槽を置く高架水槽方式です。
仕組みはシンプルで、ポンプで屋上の高架水槽に水を汲み上げておき、そこから各住戸へは重力で水を送ります。停電でポンプが止まっても、高架水槽に水が残っていれば、重力の力でそのまま給水できます。マンション管理会社の解説でも、ポンプが停止しても重力で給水が可能だと説明されています。
ただし、水が出続けるのは水槽の残量が尽きるまでです。停電中はポンプが動かないので補充されません。停電直後に住人全員がお風呂にお湯をためたり、洗濯をしたりすると、水槽の水はあっという間に減ってしまいます。また高架水槽方式は、上下階で水圧差が生じやすい、メンテナンス費用が高いといった欠点もあり、新しい建物では採用が減っています。
判断のコツは、高架水槽方式でも「水が出るうちに飲み水と生活用水を確保し、節水する」ことです。水が出る時間は建物全体の使い方で決まるので、自分だけ備えていても、共用の水槽が空になれば同じように断水します。
受水槽方式はポンプが止まり、直汲みか1階散水栓が頼り
受水槽方式(加圧ポンプ式)は、地上や地下に置いた受水槽に水をため、加圧ポンプで各住戸へ送る方式です。停電するとポンプが止まるため、各住戸の蛇口からは水が出なくなります。
ただし、受水槽の中には水がたまっています。そのため停電時は、受水槽から直接汲み出すか、管理室や1階の散水栓などから給水する方法が取れます。受水槽の周辺に非常用水栓が設けられている建物もあります。つまり「部屋では出ないが、建物の下まで行けば水が手に入る」状態になるわけです。
ポンプについては、通常2基が交互に運転していて、1つが故障してももう1つが自動で運転する冗長性があります。ただしこれは故障への備えで、停電への備えではありません。電気が止まれば2基とも止まります。
ありがちな失敗は、受水槽から水を汲めることを知っていても、水を運ぶ容器がないケースです。エレベーターも止まっているので、高層階の住人はポリタンクやバケツで階段を上り下りすることになります。判断のコツは、運びやすい容量の給水袋や、キャスター付きの容器を用意しておくことです。
実は新しいマンションほど停電で断水しやすい
意外と知られていないのですが、新しいマンションほど停電で水が止まりやすい傾向があります。新築物件に多い直結増圧方式が、停電と同時に断水するからです。
直結増圧方式は、水道本管の水圧を増圧ポンプで上げて、各住戸へ直接送る方式です。受水槽や高架水槽を持たないので、水槽の清掃が不要で、衛生的で省スペースという利点があります。その一方で、途中に水をためておく場所がないため、ポンプが止まった瞬間に上層階への給水が止まります。高架水槽方式のように「水槽の残りで数時間しのぐ」ことができません。
ただし、まったく水が手に入らないわけではありません。直結増圧方式の建物では、敷地内の非常用水栓から給水でき、2〜3階程度までは停電時でも対応可能な場合があるとされています。水道本管の圧力だけで届く範囲がある、ということです。
「新しいから設備も万全だろう」と考えて水の備蓄をしていない家庭ほど、停電時に困る構図になります。築年数が浅いマンションに住んでいる人ほど、自分の建物の給水方式を管理会社に確認し、飲み水とトイレ用の水を備えておく価値があります。
非常用水栓は管の中の水の勢いで出る仕組み
停電時の給水で頼りになるのが非常用水栓です。電気がなくても水が出る理由は、水道管の中を流れる水の勢い、つまり水道本管の圧力をそのまま利用しているからです。
福岡市水道局の解説では、非常用直結給水栓は管の中を流れる水の勢いを利用して水が出る蛇口なので、停電時でも使用できると説明されています。福岡市では平成3年12月以降に申請された、受水槽や直結増圧ポンプを使用する建物に原則として設置されています。ポンプを経由しない専用の蛇口を用意しておくことで、停電でも最低限の水を確保できる設計です。
問題は、この蛇口がどこにあるかを住人が知らないことです。受水槽の周辺や敷地の片隅など、普段は目にしない場所に設置されていることが多く、停電が起きてから探しても見つかりにくいのです。
福岡市の同じページでも、非常用水栓の有無や設置場所を事前に建物の管理会社・管理組合に確認しておくよう呼びかけています。設置基準は自治体によって異なるため、「うちの建物にあるかどうか」は管理会社に聞くのが確実です。次の表で、3つの給水方式の違いを整理します。
| 項目 | 高架水槽方式 | 受水槽方式 | 直結増圧方式 |
|---|---|---|---|
| 停電時の室内給水 | 水槽に水があれば重力で出る | ポンプ停止で出ない | 即座に断水 |
| 停電時の水の入手先 | 室内の蛇口(残量まで) | 受水槽の直汲み、管理室・1階散水栓 | 敷地内の非常用水栓(2〜3階程度までは対応できる場合あり) |
| 平常時の注意点 | 上下階の水圧差、メンテナンス費用が高い | ポンプは通常2基が交互運転 | 新築物件に多い |
エレベーターの非常用電源は法律でどこまで決まっている?
高さ31mを超える建物には非常用エレベーターが必要
「高層マンションなら停電でもエレベーターは動くはず」と考える人は多いのですが、法律で義務づけられている範囲は限られています。建築基準法では、高さ31mを超える建築物に、原則として非常用エレベーターを設ける規定があります。
非常用エレベーターは、火災のときに消防隊が消火・救助活動に使うためのものです。そのため予備電源の設置も義務化されています。ただし、ここで押さえたいのは目的です。住人が普段どおりに使うためではなく、災害時に消防活動を支えるための設備だということです。マンション管理の専門解説でも、この31mの基準が紹介されています。
ありがちな勘違いは、非常用エレベーターがあるから停電中も自由に上り下りできる、と思い込むことです。予備電源の容量や運用ルールは建物ごとに異なり、長時間の停電で住人の日常利用をまかなえるとは限りません。
判断のコツは、自分の建物の高さが31mを超えているか、非常用エレベーターがあるかを確認したうえで、「停電時に住人が使えるか」を管理会社に聞いておくことです。使えない前提で、階段での移動と荷物の運搬を想定しておくほうが安全です。
非常用照明は30分以上、2時間以上を求められる建物も
非常用電源の対象になる設備は、非常用照明装置、昇降機、排煙設備などです。このうち非常用照明の最小点灯時間は、建築基準法施行令で連続30分以上と定められています。
30分という時間は、火災などで停電したときに建物の外まで避難するのに必要な時間を想定したものです。一方、超高層建築物などでは、2時間以上の運転が義務づけられる場合もあります。建物が高くなるほど避難や消防活動に時間がかかるため、非常用電源にも長い運転時間が求められるわけです。また、消防法によって、防火対象物には消防用設備等の設置が義務づけられています。
ここから読み取れるのは、法律が想定しているのは「避難と消防活動のための電源」であって、「停電中の生活を支える電源」ではないということです。非常用電源があっても、各住戸の冷蔵庫や照明、給湯に電気が届くわけではありません。
判断のコツは、共用部の非常用電源と、自分の部屋の電源を切り離して考えることです。法律で守られているのは共用部の避難設備まで。部屋の中の備えは、各家庭が自分で用意する必要があります。
給水設備の停電対策は法律上の義務ではない
意外に思われるかもしれませんが、停電時に給水設備を動かし続けることは、建築基準法では義務化されていません。エレベーターや照明には非常用電源のルールがあるのに、水についてはないのです。
理由は、建築基準法の非常用電源の考え方が、火災時の避難と消防活動を中心に組み立てられているからです。給水ポンプは日常生活に欠かせない設備ですが、避難や消火に直接必要なものとは位置づけられていません。そのため、給水ポンプに非常用電源をつなぐかどうかは、建物ごとの判断に委ねられています。
この結果、同じ高層マンションでも「停電中も給水ポンプが非常用発電機で動く建物」と「停電と同時に断水する建物」が混在しています。見た目や築年数だけでは判断できません。
判断のコツは、管理会社に「停電時に給水ポンプは非常用電源で動くか」を具体的に聞くことです。答えが「動かない」なら、前の章で整理した給水方式と非常用水栓の情報がそのまま停電時の水の見通しになります。
東京都は非常用電源の設置に補助事業を用意している
給水やエレベーターの停電対策は義務ではないため、自治体が補助で後押しする動きがあります。代表例が東京都のマンション非常用電源設置補助事業です。
東京都の公式発表によると、この事業は停電時に水の供給と1基以上のエレベーターの運転を、同時または交互に行える電力供給能力をもつ発電機設備・蓄電池設備の設置に補助するものです。対象は「東京とどまるマンション」に登録済みの既存マンションで、新築は除外されます。補助率は発電機が2分の1、蓄電池が4分の3、浸水対策が2分の1で、2024年8月30日に申請受付が始まりました(2024年度時点の情報)。窓口は住宅政策本部民間住宅部マンション課です。
注意したいのは、これは個人ではなく管理組合が申請する性質の事業だということです。各住戸が自分の部屋に置く蓄電池の補助とは別物です。
判断のコツは、住んでいる自治体に同様の制度があるかを、自治体の公式サイトで「マンション 非常用電源 補助」と検索して探すことです。制度は年度ごとに内容が変わるので、管理組合で検討する際は最新の要綱を確認してください。
法律で非常用電源が義務づけられているのは、非常用照明(連続30分以上)や、高さ31mを超える建物の非常用エレベーターなど「避難と消防活動のための設備」です。給水設備の停電対策は建築基準法では義務化されていません。停電中の生活を支える電源は、管理組合の判断か各家庭の備えに委ねられています。
停電より怖いのは復旧の瞬間、通電火災の仕組み
通電火災は「電気が戻ったとき」に起きる
通電火災とは、停電後に電気が復旧したときに発生する火災です。地震などの災害で停電し、その後の復旧時に起きるケースが知られていて、感震ブレーカーの解説でも、阪神・淡路大震災や東日本大震災で多発したと紹介されています。
なぜ電気が戻ると火災が起きるのか。地震の揺れで電気ストーブが倒れていたり、家具の下敷きになった電気コードが傷ついていたりすると、停電中は問題が表面化しません。ところが電気が戻った瞬間、倒れた暖房器具に通電したり、傷んだコードがショートしたりして発火につながります。とくに危ないのは、住人が避難して家を不在にしている状態で電気が復旧した場合です。誰も気づかないまま火が広がりやすくなります。
マンションでは、一室の火災がビル全体に及ぶ可能性は低いとされています。ただし、共用設備であるエレベーターや給排水設備に被害を与えるリスクはあります。自分の部屋だけの問題では済まない可能性があるわけです。
判断のコツは、「停電中より復旧の瞬間のほうが注意が必要」と覚えておくことです。停電が長引くほど、家の中の状態を確認しないまま電気が戻るリスクが高まります。
感震ブレーカーは震度5強以上で約3分後に主幹を落とす
通電火災を防ぐ設備が感震ブレーカーです。地震発生時に設定値以上の揺れを感知したときに、電気を自動で止める器具です。
一般的な仕組みでは、震度5強以上の揺れを感知すると、約3分後に分電盤の主幹ブレーカーを強制的に落とします。すぐに切らずに少し時間を置くのは、夜間の地震で照明が即座に消えると避難の妨げになるからです。避難するための時間を確保したうえで電気を遮断し、その後の通電火災を防ぐ、という考え方です。
感震ブレーカーには、分電盤に組み込むタイプや後付けタイプなどがあります。分電盤に関わる工事は電気工事の資格が必要なので、設置を検討する場合は有資格者や管理会社に相談してください。マンションでは、分電盤は各住戸の専有部分にあることが多いものの、工事の可否や手順は管理規約で確認が必要です。
判断のコツは、まず自分の部屋の分電盤に感震機能がついているかを確認することです。ついていない場合でも、次に紹介する「避難時に自分でブレーカーを落とす」行動で、同じ効果を得ることができます。
避難前と復旧前にやっておくべき3つの行動
感震ブレーカーがなくても、通電火災のリスクは自分の行動で下げられます。ポイントは「電気が戻ったときに、危ないものに電気が流れない状態を作っておく」ことです。
1つ目は、停電中にアイロンやドライヤーなど熱を出す家電のプラグをコンセントから抜いておくことです。停電前に使っていた家電は、スイッチが入ったままになっていることがあります。電気が戻った瞬間に動き出すと、周囲に燃えやすいものがあった場合に発火の原因になります。復旧を確認してから、改めてプラグを差し込みましょう。
2つ目は、地震などで家を離れて避難するとき、分電盤の主幹ブレーカーを「切」にしてから出ることです。不在中に電気が戻っても、家の中には通電しません。3つ目は、電気が戻ったら、ブレーカーを入れる前に家電の転倒やコードの損傷がないかを目で確認することです。
判断のコツは、これらを「停電時の決まった動作」として家族で共有しておくことです。電力会社のホームページで停電の原因とエリアを確認しながら、焦らずに順番どおり進めましょう。
地震で停電したあと、慌てて避難所へ向かい、ブレーカーを入れたまま家を空けてしまうケースです。原因は「停電中は電気が流れていないから安全」と思い込むこと。実際には、不在中に電気が復旧すると、倒れた暖房器具や傷んだコードに通電して火災につながるおそれがあります。対策は、避難前に主幹ブレーカーを「切」にすること、帰宅後は家電の状態を確認してからブレーカーを戻すことです。
分電盤そのものの古さもリスクになる
停電や通電火災の対策を考えるとき、見落とされがちなのが分電盤そのものの劣化です。業界団体である日本電機工業会は、分電盤の推奨交換年数を13年としています。一方で、50年以上使われているケースも存在すると指摘されています。
分電盤の中のブレーカーは、異常な電流を検知して電気を止める安全装置です。劣化すると、本来落ちるべきときに落ちなかったり、逆に正常なのに落ちたりする可能性が出てきます。停電からの復旧時には一度に多くの家電に電気が流れるため、分電盤に負荷がかかる場面でもあります。
築年数の古いマンションでは、分電盤が建築当時のまま使われていることも珍しくありません。漏電遮断器が組み込まれていない古いタイプだと、漏電しても自動で電気が止まりません。
判断のコツは、分電盤の扉の内側や本体に記載された製造年を確認することです。13年を大きく超えている場合は、感震ブレーカーの導入とあわせて、有資格者に点検や交換を相談するタイミングと考えられます。コンセントまわりの火災リスクについては、次の記事でも詳しく整理しています。

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家庭でできる備え、ガス併用・オール電化・ポータブル電源の選び分け
オール電化は蓄電池がなければ全部止まる
停電時の生活に大きく影響するのが、住戸のエネルギーの種類です。オール電化は照明・家電・調理・給湯のすべてに電気を使うため、蓄電池がない場合は停電ですべてが止まります。
IHクッキングヒーターは電気で加熱するので、停電すると調理ができません。エコキュートや電気温水器などの電気式給湯器も停止します。ただし電気式の給湯器はタンクにお湯をためているため、機種によってはタンクの残り湯を非常用水として取り出せる場合があります。取り出し方は機種ごとに違うので、取扱説明書で確認しておきましょう。
マンションの場合、オール電化にはもう一つの弱点があります。戸建てのように屋根に太陽光パネルを載せられないため、太陽光と組み合わせて停電時に発電するという選択肢がほとんどありません。オール電化のメリットが薄れる条件と言えます。停電時にすべて機能しないこと、電気代高騰の影響を直接受けること、湯切れのリスクがあることもデメリットとして挙げられています。
判断のコツは、オール電化のマンションに住んでいる場合、停電時の「調理」と「明かり」を電気以外で確保する手段を持っておくことです。カセットコンロや電池式の照明など、電気に頼らない道具が停電時の生活を支えます。
ガス併用でも給湯器は止まる、コンロは換気扇が止まる
ガス併用の住戸は、照明や家電に電気、給湯とコンロにガスを使います。エネルギーの比較記事では、ガス併用システムは停電時でも給湯やコンロが機能すると説明されています。ただし、ここには2つの落とし穴があります。
1つ目は給湯器です。ガス給湯器は、ガスで水を温めますが、点火や制御、給排気のファンに電気を使っています。そのため、ほとんどの機種は停電時に使用できません。「ガスだからお湯は出る」と思っていると、停電時にお湯が使えずに困ることになります。
2つ目はコンロの換気です。ガスコンロ自体は電池で点火するタイプなら使える場合がありますが、換気扇は電気で動いているので停止します。マンション向けの注意喚起でも、ガスコンロを使う場合は窓を開けるなど換気に十分注意するよう呼びかけられています。マンションは気密性が高いため、換気扇が止まった状態で長時間コンロを使うのは避けてください。
判断のコツは、ガス併用でも「お湯は出ない前提」で考えることです。コンロを使うときは窓を開け、短時間で済む調理にとどめるのが安全です。
ポータブル電源は燃料不要で室内向き、容量で使える家電が決まる
マンションで停電に備える電源として現実的なのがポータブル電源です。燃料が不要で静音性に優れ、室内でも使用できる点が、発電機との大きな違いです。発電機は排気ガスが出るため、マンションのベランダや室内での使用は現実的ではありません。
容量の目安として、ポータブル電源の一例を公式情報をもとに整理します。Jackery 1000 Newは容量約1,070Wh、定格出力1,500Wで、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用し、約4,000回の充放電サイクルに対応しています。重量は約10.8kgです。このクラスになると、スマートフォンなどのUSB機器の同時充電に加え、扇風機や電気毛布のような消費電力が低めの家電も動かせます。
ただし、ポータブル電源は万能ではありません。エアコンや電子レンジのような消費電力の大きい家電を長時間動かすと、容量はすぐに尽きます。また、冷蔵庫を丸一日動かし続けるような使い方は、容量によっては難しくなります。
判断のコツは、「停電時に何を動かしたいか」を先に決めてから容量を選ぶことです。スマートフォンの充電と照明だけなら小さい容量で足り、扇風機や電気毛布まで使いたいなら大きめの容量が必要です。
| 分類・方式 | ポータブル電源(リン酸鉄リチウムイオン電池) |
| 容量・出力の目安 | 容量約1,070Wh/定格出力1,500W |
| 寿命・重量 | 充放電約4,000回/重量約10.8kg |
| 向いている用途 | USB機器の同時充電、扇風機・電気毛布など消費電力低めの家電、アウトドア |

「蓄電池はマンションでは無理」と言われて、そこで話が終わってしまうケースをよく見かけます。ただ、この言い方は正確ではありません。無理なのは「戸建てと同じやり方」…
住まいのタイプ別、停電への備えの優先順位
停電への備えは、住まいの条件によって優先順位が変わります。すべてを一度にそろえる必要はなく、自分の家で困ることの大きい順に備えるのが合理的です。
直結増圧方式のマンションに住んでいる人は、水の確保が最優先です。停電と同時に断水するので、飲み水とトイレ用の水の備蓄、非常用水栓の場所の確認から始めましょう。高層階に住んでいる人は、エレベーターが止まる前提で、水や食料を階段で運ばずに済むよう部屋に備蓄しておくことが大切です。オール電化の住戸なら、カセットコンロと電池式の照明を優先します。
在宅で医療機器を使っている家庭や、小さな子どもがいる家庭は、スマートフォンの充電と照明を確実にまかなえる電源の確保を早めに検討する価値があります。反対に、低層階でガス併用、給水方式が高架水槽方式という条件なら、まずは懐中電灯とモバイルバッテリーで十分なこともあります。
判断のコツは、管理会社に「給水方式」「非常用水栓の場所」「停電時にエレベーターや給水ポンプが非常用電源で動くか」の3点を確認し、その答えから優先順位を決めることです。電源を買う前の順番の考え方は、次の記事でも整理しています。

まとめ
マンションの停電対策は、何かを買うことより先に、自分の建物の仕組みを知ることから始まります。最初の一歩として、今週中に管理会社へ「給水方式」「非常用水栓の場所」「停電時に給水ポンプとエレベーターが非常用電源で動くか」の3点を問い合わせてみてください。その答えがわかれば、水・明かり・電源のどれから備えるべきかが自然に決まり、無駄な出費をせずに済みます。あわせて、部屋の分電盤の場所と製造年も一度確認しておくと、停電したときの最初の数分で迷わなくなります。
※補助金・制度の内容は年度によって変わるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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