マンションの窓際が冬になると冷える。朝起きるとサッシの下に水がたまっている。幹線道路の車の音が夜まで気になる。こうした悩みの対策として名前が挙がるのが二重窓(内窓)です。一方で、マンションは「窓は共用部分だから勝手に触れない」と聞いたことがあり、そこで検討が止まっている人も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。既存の窓の内側にもう1枚足す内窓は室内側の工事なので「専有部分」の工事にあたり、分譲マンションでも基本的に設置できます。窓から出入りする熱を約6割抑えるという目安があり、2026年度は国の「先進的窓リノベ2026事業」で、集合住宅の内窓に1窓あたり最大152,000円の補助枠が用意されています。ただし管理規約はマンションごとに違い、補助の対象もSS・Sグレードに絞られました。
この記事では、二重窓がなぜ効くのかという仕組みから、管理組合の許可の考え方、熱貫流率の数字、奥行きの浅い窓枠への対応、費用と補助金、主要2メーカーの違い、向く人・向かない人までを、売り手の立場に立たずに整理します。読み終えたときに「うちのマンションで付けるべきか」を自分で判断できる材料をそろえることが目的です。
・マンションで内窓が「ほぼ許可不要」とされる理由と、規約で止まるケース
・単板ガラスのアルミ窓6.51が二重窓で2.00まで下がる熱貫流率の仕組み
・1窓あたりの費用の目安と、先進的窓リノベ2026の集合住宅向け補助額
・開閉と掃除の手間が増えるなど、向かない人の条件
二重窓マンションの仕組み|窓の内側に1枚足すだけで熱の出入りが約6割減る理由

「内窓」と「二重窓」は同じもの?足す窓の正体
マンションで話題になる二重窓は、ほぼすべて「内窓」のことだと考えて差し支えありません。YKK AP公式のコラムでは、内窓(二重窓・二重サッシ)を「既存の窓の内側にもう1枚の窓を取り付けて、二重にしたもの」と定義しています。つまり今ある窓は外さず、室内側にもう1組のサッシを足す工事です。
なぜこの区別が大事かというと、マンションでは「外側の窓を触るかどうか」で工事の扱いが変わるからです。外窓そのものを交換する工事と、室内側に1枚足す工事は、同じ「窓リフォーム」でも管理組合との関係がまったく違います。業者のチラシに「二重窓」「二重サッシ」「インナーサッシ」と書かれていても、中身は室内側に窓を足す内窓であることがほとんどです。
ありがちな混乱は、「窓を二重にする=ペアガラス(複層ガラス)に交換する」と思い込むケースです。複層ガラスはガラス自体が2枚になっている部材の話で、窓が二重になるわけではありません。見積もりを取る前に「今の窓を残して内側に足すのか」「ガラスだけ替えるのか」を業者に確認しておくと、話がかみ合わない事態を避けられます。
内窓(二重窓)=既存の窓の室内側にもう1組の窓を取り付け、窓を二重にした構造。
複層ガラス=2枚の板ガラスの間に中空層を設けたガラス。窓が二重になるのではなく、ガラス1枚ぶんの部材が2層構造になっているもの。
Low-E複層ガラス=複層ガラスの表面に低放射性の金属膜(Low-E膜)をコーティングし、赤外線を反射して熱の移動を抑えるガラス。
熱の出入りを約6割抑えられるのは「空気層」と「樹脂フレーム」のおかげ
内窓を付けると、窓から出入りする熱を約6割抑えられるという目安がメーカーから示されています。この効果は2つの仕組みの組み合わせで生まれます。
1つ目は、既存の窓と内窓のあいだにできる空気層です。空気は動かなければ熱を伝えにくい性質があるため、外窓で冷やされた空気の影響が室内まで届きにくくなります。2つ目はフレームの素材です。内窓のフレームは樹脂製が主流で、アルミより熱を伝えにくい素材です。マンションの既存窓はアルミサッシが多く、サッシ枠そのものが冷たくなって熱を逃がす通り道になっていますが、その内側に樹脂の枠を立てることで、枠からの熱の出入りもふさげます。
ここでよくある誤解は「空気層は厚ければ厚いほどよい」という考えです。日本サッシ協会の資料をもとにした整理では、中空層は約70mm程度が断熱と防音のバランスがよいとされています。空気層が広すぎると層の中で空気が対流しはじめ、熱を運んでしまうからです。自宅の窓枠でどのくらいの間隔が取れるかは、後半の「窓枠の奥行き」の章で確認方法を説明します。
実は、窓ごと交換するより内窓のほうが断熱は高くなりやすい
意外と知られていないのが、「古い窓を最新の窓に丸ごと交換するより、今の窓を残して内窓を足したほうが、窓全体の断熱性能は高くなる傾向がある」という点です。リフォーム情報サイトの解説でも、内窓は今ある窓がそのまま残って二重窓になるため、元の窓を交換するよりも総合的な断熱性能が高くなる傾向にあると説明されています。
理由は単純で、窓を交換すると窓は1枚のままですが、内窓なら「古い窓+空気層+新しい窓」という3層構造になるからです。古いアルミ窓でも、外気を1段階受け止める壁の役目は果たしてくれます。
加えてマンションの場合、外窓は多くの管理規約で共用部分として扱われ、個人の判断で交換しにくいという事情があります。「本当は窓ごと替えたいけれど、規約でできないから仕方なく内窓」と考える人もいますが、断熱の面だけで見ればむしろ内窓が有利になりやすいわけです。性能面の妥協だと思わず、マンションに合った合理的な選択肢として検討してよい方法です。
断熱以外に付いてくる効果は結露・防音・UVカット・侵入抑止
内窓の効果は断熱だけではありません。LIXIL公式のインプラス製品ページでは、「断熱効果」「結露軽減」「遮音効果」「UVカット」「侵入抑止効果」「経済性」の6つをメリットとして挙げています。
このうちマンションで実感されやすいのは結露と音です。結露は、室内の暖かく湿った空気が冷たいガラス面やサッシに触れて水滴になる現象なので、室内側に冷えにくい窓がもう1枚あれば発生しにくくなります。音については、窓が2重になることで外部の騒音が2回遮られる形になります。
一方で、すべての効果を同じ強さで期待するのは失敗のもとです。侵入抑止は、窓が2つになって開けるのに手間がかかるという性質によるもので、高層階の住戸では優先度が下がります。UVカットはガラスの仕様によって差が出ます。自分が一番解決したい悩みが「寒さ」「結露」「音」のどれなのかを先に決め、その悩みに効く仕様を選ぶと、見積もりの比較もしやすくなります。
管理組合の許可はいる?専有部分と共用部分の境目で決まる
室内側の工事は専有部分、だから許可が下りやすい
マンションの内窓は、基本的に管理組合の許可がなくても設置できるケースがほとんどです。根拠は「専有部分」と「共用部分」の区分にあります。
分譲マンションでは、住戸の室内は各所有者の専有部分、建物の外壁や廊下、そして多くの場合は外窓のサッシやガラスが共用部分として扱われます。外窓は建物の外観を形づくり、防火や防水の性能にも関わるため、個人で勝手に交換できない決まりになっていることが多いのです。これに対して内窓は、既存の窓枠の内側、つまり室内側に取り付ける工事です。断熱リフォームの専門サイトでも「内窓は室内側の工事となるため専有部分の工事となり、分譲マンションであっても設置することが基本的には可能」と説明されています。
ここで押さえておきたいのは、「専有部分の工事だから何をしてもよい」わけではないという点です。専有部分であっても、工事の騒音や資材の搬入、エレベーターの使用などについて届出を求めるマンションはあります。許可と届出は別物だと考えておくと、あとで管理会社とのやり取りで慌てずにすみます。
「ほとんど不要」でも規約で止まるケースがある
内窓は「ほとんどのマンションで許可不要」とされていますが、これは「すべてのマンションで自由」という意味ではありません。住宅リフォームの解説記事でも、ほとんどのマンションでは許可されるものの、管理組合の規約によっては許可されない場合もあるため確認が必要だと明記されています。
規約で引っかかりやすいのは、窓枠そのものの扱いです。内窓は既存の窓枠の内側にビスなどで固定するのが一般的ですが、窓枠の一部を共用部分と定めている規約もあります。その場合、窓枠に穴を開ける工事に承認が必要になることがあります。また、リフォーム工事全般について事前申請を求める細則を設けているマンションもあります。
よくある失敗は、業者との契約と工事日程を先に決めてしまい、あとから管理会社に「事前申請が必要です」と言われて工事日がずれるケースです。資材がすでに発注済みなら保管の問題も出てきます。規約の確認は見積もりを取る前、遅くとも契約の前に済ませておくのが安全な順番です。
外観に影響しないことが共用部分との決定的な違い
管理組合が外窓の交換に慎重なのは、建物全体の外観と性能をそろえておきたいからです。1戸だけ色や形の違うサッシになると外観の統一感が崩れ、大規模修繕のときにも扱いが複雑になります。
内窓はこの点で有利です。内装工事なので、マンションの外観に影響を与えません。外から見れば今までと同じ窓のままで、変わるのは室内側だけです。管理組合にとって懸念材料が少ないことが、許可が下りやすい大きな理由になっています。
ただし、外から見えにくいとはいえ、内窓の色やガラスの種類によっては夜間に室内の明かりの見え方が少し変わることもあります。気になる場合は、窓際のカーテンやブラインドとの位置関係を業者に確認しておきましょう。また、外窓の交換を検討していて規約上難しいと言われた人は、内窓なら可能かどうかを改めて管理会社に聞いてみる価値があります。
管理会社に相談するときに伝えるとよい3つの情報
管理会社への相談は、情報をそろえて伝えると一度で話が進みます。伝えたいのは「どの窓に付けるか」「どこに固定するか」「工事にどのくらいかかるか」の3点です。
固定場所は、規約上の扱いに直結するので最も重要です。内窓は既存の窓枠の内側に取り付けるのが基本なので、「窓枠の室内側に固定し、外窓とサッシには手を加えない」と説明できれば、共用部分に影響しない工事だと伝わります。工事時間については、メーカーが1窓あたり約60分という目安を示しています(サイズや納まりにより異なる)。数窓程度なら1日で終わることが多いため、騒音が出る時間帯も限られます。
やりがちな失敗は、口頭で「窓のリフォームをしたい」とだけ伝え、外窓交換と誤解されて慎重な回答をもらってしまうケースです。「内窓」「室内側」「外窓はそのまま」という3つの言葉を必ず入れて相談しましょう。業者が作る施工図や製品カタログのページを添えると、管理会社側の判断も早くなります。
単板6.51から二重窓2.00へ|熱貫流率で見る断熱・結露・防音の数字

熱貫流率Uwは「窓の熱の通しやすさ」を示す物差し
窓の断熱性能を比べるときに使う数字が熱貫流率です。記号はUw、単位はW/(m²·K)で、値が小さいほど熱を通しにくい=断熱性能が高いことを示します。室内と外の温度差があるとき、窓の面積あたりにどれだけの熱が通り抜けるかを表した値です。
なぜこの数字を覚えておくべきかというと、2026年度の補助金の対象がこのUwで線引きされているからです。先進的窓リノベ2026事業では、性能グレードがSS(Uw1.1以下)、S(Uw1.5以下)、A(Uw1.9以下)と定められており、2026年度の内窓はSとSSのみが補助対象、Aグレードは対象外になりました。
見積もりで「断熱性能が高い内窓です」とだけ言われても、判断材料にはなりません。どのグレードに該当する製品・ガラスの組み合わせなのかを、Uwの値とあわせて見積書に書いてもらうことが大切です。同じメーカーの同じ内窓でも、組み合わせるガラスによってグレードが変わることがあるので、商品名だけで判断しないようにしましょう。
6.51から2.00へ、熱の流れが約69%減る計算
日本サッシ協会の資料「わかりやすいサッシ・ドアの性能」には、窓の熱貫流率の代表値がまとめられています。単板ガラスのアルミサッシは6.51 W/(m²·K)。これに対し、外がアルミ単板、内が樹脂の複層ガラスという二重窓の代表例は2.00 W/(m²·K)です。
6.51から2.00になると、窓を通り抜ける熱の流れは約69%削減される計算になります。「内窓で熱の出入りを約6割抑える」というメーカーの目安とも、おおむね整合する数字です。
電気とエネルギーの教科書調べとして、公的資料と補助事業の基準を1枚の表に整理しました。
| 項目 | 単板アルミ窓 | 二重窓の代表例 | 補助グレード |
|---|---|---|---|
| 熱貫流率Uw | 6.51 | 2.00(外アルミ単板+内樹脂複層) | S:1.5以下/SS:1.1以下 |
| 構成 | アルミ枠+ガラス1枚 | 既存窓+空気層+樹脂内窓 | 登録製品の組み合わせで判定 |
| 2026年度の補助 | — | グレードの確認が必要 | SS・Sのみ対象(Aの1.9以下は対象外) |
出典:日本サッシ協会「わかりやすいサッシ・ドアの性能」表4-5、先進的窓リノベ2026事業(2026年度)
省エネ基準の観点でも、5〜7地域で窓の基準値4.7を2.3まで引き下げる目標の達成に内窓が有効とされています。アルミ窓の断熱がなぜ弱いのかをさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事で素材ごとの差を解説しています。

冬の朝、リビングのアルミサッシの枠を触ると氷のように冷たく、下枠には水がたまっている。エアコンの設定温度を上げても窓際だけ寒い。築20年前後の家に住んでいれば、…
「樹脂サッシにすれば断熱できる」は半分しか正しくない
内窓選びでいちばん多い失敗パターンが、「フレームが樹脂なら断熱は十分」と考えて、ガラスを単板のまま選んでしまうことです。日本サッシ協会の資料では、樹脂製の建具でも単板ガラスなら熱貫流率は6.51で、アルミの単板窓と同じ値になっています。
なぜそうなるのかというと、窓の面積の大部分はガラスが占めているからです。フレームを熱を通しにくい樹脂にしても、ガラスが1枚のままではそこから熱が逃げていきます。樹脂フレームは「枠からの熱の逃げ」を止める部品であって、ガラス面の性能を補うものではありません。
この失敗が痛いのは、効果が思ったほど出ないうえに、2026年度の補助金の対象グレードにも届かない可能性がある点です。対策は、見積もりの段階でガラスの仕様を必ず確認することです。「複層ガラス」「Low-E複層ガラス」のどれなのか、その組み合わせがどのグレードに該当するのかを書面で確認しましょう。価格を下げるために単板ガラスを提案された場合は、断熱と補助の両面で不利になることを理解したうえで判断してください。
結露と騒音はどこまで減るのか
結露が減る理由は、室内側のガラス表面温度が外気温の影響を受けにくくなるからです。Low-E複層ガラスは金属膜が赤外線を反射して熱の移動を抑えるため、室内外の温度差による結露を抑制します。そこに熱を伝えにくい樹脂フレームを組み合わせると、サッシ枠まわりの結露も起きにくくなります。
ただし、結露がゼロになるとは限りません。内窓と外窓のあいだのスペースに結露が出る場合があります。室内の湿気が内窓のすき間から入り込み、冷たい外窓で冷やされるためです。「内窓を付けたのに結露した」と感じる人の多くはこのケースで、室内側の結露が減っていれば内窓は機能しています。加湿器を強く使う家庭では、換気とセットで考えましょう。
防音については、外部騒音80dBを約40dB低減し、室内を40dB程度にできるという目安が示されています。幹線道路や線路沿いの住戸では体感しやすい効果です。ただし換気口など窓以外から入る音は減らないので、窓だけで静かになるとは期待しすぎないことが大切です。
奥行きが浅い窓枠でも付くか|マンション特有の「納まり」を確かめる
内窓は既存窓枠の「奥行き」に収めるのが基本
マンションで内窓を検討するとき、性能より先に確認したいのが「そもそも自宅の窓枠に収まるか」です。内窓は既存窓の室内側の窓枠に取り付けるため、窓枠にある程度の奥行き(見込み)が必要になります。マンションは戸建てに比べて窓枠の奥行きが浅いことが多く、ここが最初の関門になります。
メーカーもこの点を意識して薄型化を進めています。YKK APのウチリモ(旧プラマードU)は、枠の見込寸法が引違い窓で58mm、プロジェクト窓で50mmという薄型設計です。さらに枠持ち出し納まりを利用した場合の最小取付寸法は、引違い窓で47mm、プロジェクト窓で39mmとされています。
判断のコツは、自分で窓枠の奥行きを測ってみることです。外窓のクレセント(鍵)やハンドルが室内側に出っ張っていると、その部分と内窓がぶつかる場合があるため、出っ張りを除いた有効寸法を見ます。正確な判断は現地調査で業者が行いますが、事前に目安を把握しておくと、提案された納め方が妥当かどうかを自分で確かめられます。
奥行きが足りないときは「持ち出し枠」で室内側へ出す
窓枠の奥行きが足りない場合でも、多くは「持ち出し枠(ふかし枠)」という部材で対応できます。窓枠の室内側に枠を継ぎ足して取付面を手前に出し、内窓を置くスペースを確保する方法です。
LIXILのインプラスでは、見込みの薄い窓枠向けに新開発の「マンション用枠」を用意しており、従来品の2倍の持ち出し幅を実現したと公式に案内しています。マンションの「壁の奥行が小さい」環境への対応を強化した部材です。
持ち出し枠を使うと、内窓が室内側に張り出す形になります。そのぶん窓際のスペースが少し狭くなり、カーテンレールやブラインドの位置と干渉することがあります。出窓風の棚として使っていた窓台が使えなくなるケースもあります。見積もりでは「持ち出し枠を使うかどうか」「使うなら室内側にどれだけ出るか」を図面や写真で確認し、家具の配置やカーテンの付け替えまで含めて考えておきましょう。
「このメーカーの内窓が評判がいい」と製品名だけで決め、現地調査を省いて採寸だけで発注すると、窓枠の奥行きが足りず持ち出し枠の追加で費用が増えたり、カーテンレールと干渉して付け替えが必要になったりします。原因は、マンションの窓枠の浅さとクレセントなどの出っ張りを事前に確認していないことです。対策は、現地調査のうえで「納め方」「室内側への張り出し」「カーテンまわりの処理」を見積書に明記してもらうことです。
空気層の厚みは約70mmがひとつの目安
外窓と内窓の間隔、つまり空気層の厚みも性能に関わります。日本サッシ協会の資料をもとにした整理では、中空層は約70mm程度が断熱と防音の性能のバランスがよいとされています。
空気層が狭すぎると、空気の断熱層としての働きが弱くなります。反対に広すぎると層の中で空気が対流を起こし、外窓側で冷やされた空気と内窓側の空気が入れ替わって熱を運んでしまいます。防音の面でも、ある程度の間隔があったほうが音が伝わりにくくなります。
ただしマンションでは、窓枠の奥行きの制約から理想の間隔を取れないことが珍しくありません。その場合でも、内窓がないよりは断熱と結露の改善効果は期待できます。大切なのは「理想の間隔が取れないから意味がない」と早合点しないことです。どの程度の空気層になるかを業者に聞き、そのうえで防音を重視するならガラス仕様で補う、といった組み合わせで考えるのが現実的です。
浴室・FIX窓・内開き窓も対象になるか
マンションには、リビングの引違い窓のほかに、開かないFIX窓、浴室の小窓、内開きの窓など、形の違う窓がいくつもあります。内窓の検討では、どの窓まで対応できるかも確認が必要です。
YKK APのウチリモは、引違い窓2枚建・FIX窓・内開き窓・開き窓テラス・浴室仕様などに対応しています。LIXILのインプラスも、基本シリーズ・for Renovation・浴室仕様というシリーズ構成です。浴室は湿気が多く、結露やカビに悩みやすい場所なので、浴室仕様の内窓が用意されていることには意味があります。
見落としやすいのは、浴室の窓は湿気の逃げ道にもなっているという点です。内窓を付けると窓を開けて換気する手間が増えるため、換気扇だけで湿気が抜けるかを確認しておく必要があります。また、窓の形状によっては対応する製品が限られ、費用が上がることもあります。すべての窓に付けるか、寒さや結露がひどい窓から優先するかは、次の章で説明する費用と補助の条件とあわせて判断しましょう。
1窓あたり5〜15万円程度の中身|費用の内訳と2026年度の補助条件
費用の目安と、内訳に含まれるもの
マンションの内窓の費用は、1窓あたり5〜15万円程度が平均的な工事費とされています。このうち施工費の相場は1窓あたり約3〜7万円です。幅が大きいのは、窓のサイズ、ガラスの種類、持ち出し枠の有無、窓の形状によって金額が変わるからです(設置条件・時期により変動)。
製品価格の参考として、YKK APのウチリモはLow-E複層ガラス付きで工事費を除いて50,000〜220,000円/窓程度という参考価格が示されています。いずれもメーカーの参考価格であり、実際の見積もりは販売店や施工店によって異なります。
見積書を読むときは、「製品代」「ガラスのグレード」「取付費」「持ち出し枠などの部材」「廃材処分・運搬費」に分かれているかを確認しましょう。一式表記だけの見積書では、他社と比べたときにどこで差が出ているのかがわかりません。また、一度に複数箇所を設置すると施工価格が安くなりやすい傾向があります。職人の移動や段取りの手間が1回ですむためで、同じ日に工事する窓が多いほど1窓あたりの単価は下がりやすくなります。
費用の内訳や回収年数の考え方は、こちらの記事でさらに詳しく整理しています。

「内窓を1枚入れるだけなのに、なぜ見積もりが10万円を超えるのか」——二重窓の費用を調べ始めた人が最初にぶつかるのが、この金額の違和感です。カーテンやシートなら…
先進的窓リノベ2026の集合住宅向け補助額
2026年度の国の窓の補助金は、環境省の先進的窓リノベ2026事業です。予算総額は1,125億円(令和7年度補正)、補助上限は1戸あたり100万円です。内窓の補助額は性能グレードと窓の大きさで決まり、中高層の集合住宅向けの額は次のとおりです(2026年度時点)。
| 窓の大きさ | SSグレード(Uw1.1以下) | Sグレード(Uw1.5以下) |
|---|---|---|
| 特大(4.0㎡以上) | 152,000円 | 83,000円 |
| 大(2.8〜4.0㎡) | 98,000円 | 57,000円 |
| 中(1.6〜2.8㎡) | 64,000円 | 37,000円 |
| 小(0.2〜1.6㎡) | 40,000円 | 24,000円 |
出典:先進的窓リノベ2026事業「内窓設置」。Aグレード(Uw1.9以下)は2026年度は対象外。
表を見るとわかるとおり、同じ特大サイズでもSSとSでは補助額に差があり、152,000円と83,000円の差は69,000円です。SSグレードの製品は本体価格も上がる傾向があるため、「補助額が大きいからSS」と決めるのではなく、SSとSそれぞれの見積額から補助額を差し引いた実質負担で比べるのが正しい見方です。
申請は登録事業者経由、期限と「5万円以上」の条件
先進的窓リノベ2026は、施主が自分で申請する制度ではありません。申請は登録された「窓リノベ事業者」が行い、施主は直接申請できません。補助の対象になるのは、登録申請を経て基準を満たすと確認された製品を使った工事だけです。
スケジュールは、工事着手が2025年11月28日から2026年12月31日まで、交付申請は2026年3月31日から遅くとも2026年12月31日まで、交付申請の予約は2026年11月30日までとされています。いずれも予算の上限に達すると早期に終了します(2026年度時点)。
判断のコツは、業者を選ぶ段階で「窓リノベ事業者として登録しているか」「申請手続きを代行してくれるか」を最初に確認することです。登録していない業者で工事をすると、性能が基準を満たしていても補助は受けられません。また、秋以降は予算の消化が進むため、補助を前提にするなら早めに見積もりと予約を進めたほうが安心です。制度の詳細は事業概要ページで確認できます。
先進的窓リノベ2026は「1申請あたり5万円以上の補助」が条件です。たとえば寒さが気になる小窓1枚だけにSグレードの内窓を付けると補助額は24,000円、SSグレードでも40,000円で、5万円に届かず申請できません。原因は、1窓単位で考えて申請条件を確認していないことです。対策は、リビングなど大きな窓と同時に工事するなど、1回の申請で5万円以上になる組み合わせを業者と相談することです。
光熱費の削減額は「前提つきの目安」として読む
内窓を付けると光熱費がどれくらい下がるのか。メーカーのコラムでは、年間2〜3万円下がるという目安が示されています。窓から出入りする熱を約6割抑えられれば、暖冷房にかかるエネルギーが減るという理屈です。
ただし、この数字はあくまで一定の条件を前提にした目安です。住戸の広さ、窓の数と大きさ、方角、中部屋か角部屋か、暖房の使い方によって削減額は大きく変わります。マンションの中部屋は上下左右を他の住戸に囲まれていて、もともと熱が逃げにくいため、戸建てほど大きな差が出ないこともあります。
やりがちな失敗は、業者から聞いた削減額を「必ず安くなる金額」と受け取り、工事費を削減額で割って「何年で元が取れる」と計算してしまうことです。光熱費の削減は電気料金の単価にも左右されます。内窓の価値は、光熱費だけでなく結露の掃除が減る、窓際の寒さや騒音がやわらぐといった暮らしの変化も含めて判断するのが現実的です。
YKK APのウチリモとLIXILのインプラス、違いはどこに出るか
共通点:樹脂フレームと1窓約60分の施工
内窓の主要メーカーは、YKK APとLIXILの2社です。YKK APの「ウチリモ(旧プラマードU)」とLIXILの「インプラス」が、2大内窓製品として並んでいます。
まず押さえたいのは、両者の基本構造がほぼ同じだという点です。どちらもフレームは樹脂製で、施工時間はウチリモが1窓最短60分、インプラスが1窓あたり約60分とされています。YKK APは壁を壊さない独自工法をうたっており、窓ごとの交換でも半日〜1日で完了するとしています。
つまり、「どちらのメーカーのほうが断熱性能が圧倒的に高い」という構図ではありません。断熱性能を左右するのは、メーカーよりもガラスの仕様と補助グレードの組み合わせです。メーカーで迷ったら、両社のカタログを見比べるよりも、「自宅の窓枠に無理なく納まるほう」「希望する補助グレードの組み合わせを用意できるほう」「施工する業者が扱い慣れているほう」を基準にするのが実用的です。
| 項目 | YKK AP ウチリモ | LIXIL インプラス |
|---|---|---|
| フレーム/補強材 | 樹脂製/アルミ製補強材 | 樹脂製/スチール製補強材 |
| マンション対応 | 引違い窓58mmの薄型枠、最小取付47mm(枠持ち出し納まり時) | マンション用枠で従来品の2倍の持ち出し幅 |
| ガラス | Low-E複層ガラス(断熱タイプ)対応 | 複層ガラス標準 |
| 特徴 | 7色のカラーバリエーション | ダストバリア加工、for Renovationはグッドデザイン賞受賞 |
| 施工時間 | 1窓最短60分 | 1窓あたり約60分 |
ウチリモは薄型枠とLow-Eガラス、7色の選択肢
YKK APのウチリモの特徴は、枠の薄さとガラス仕様です。枠の見込寸法は引違い窓で58mm、プロジェクト窓で50mmの薄型設計で、見込みが薄い窓枠でも対応しやすいとされています。ガラスはLow-E複層ガラス(断熱タイプ)に対応しています。
Low-E複層ガラスには、冬の保温を重視する断熱タイプと、夏の日差しを遮る日射遮蔽型の2タイプがあります。北向きで冬の寒さが課題の部屋なら断熱タイプ、西日が強く夏に暑くなる部屋なら日射遮蔽型、というように部屋ごとに選び分けると効果を引き出しやすくなります。
カラーはホワイト・グレイジュ・カームブラック・クリア・ナチュラル・ミディアムオーク・ダークブラウンの7色です。マンションの内装は木目調の建具が多いため、窓枠の色を室内のドアや床に合わせられるのは見た目の違和感を減らすうえで役立ちます。注意点として、色や窓タイプによって価格が変わることがあるので、見積もりの段階で希望色を伝えておきましょう。
インプラスはマンション用枠とホコリ対策
LIXILのインプラスでマンションに関係が深いのは、新開発の「マンション用枠」です。従来品の2倍の持ち出し幅を実現し、マンションの「壁の奥行が小さい」環境への対応を強化したと公式に案内されています。窓枠の奥行きが浅くて内窓を諦めかけていた住戸でも、選択肢になりうる部材です。
もう1つの特徴がダストバリア加工です。樹脂製の部材にホコリがつきにくい特殊な加工が施されており、内窓で増える掃除の手間を少しでも減らしたい人には意味のある仕様です。
シリーズは基本シリーズ・for Renovation・浴室仕様の3つがあり、for Renovationはグッドデザイン賞を受賞したデザイン重視のシリーズです。for Renovationはマドサイズで109,000円程度、テラスサイズで188,000円程度という参考価格があります(消費税・取付費・運賃除く、1ソースのみの情報)。デザインにこだわるか、コストを優先するかで選ぶシリーズが変わるので、見積もりでは同じ窓でシリーズ違いの金額を並べてもらうと判断しやすくなります。
補強材の違いはどこまで気にするべきか
両社の細かな違いとして、フレームの補強材があります。ウチリモはアルミ製、インプラスはスチール製の補強材を使っています。樹脂フレームは熱を伝えにくい一方で、長い枠では強度を補う部材が必要になるため、内部に金属の補強材が入っています。
ただ、一般の家庭がこの違いを理由にメーカーを選ぶ必要はあまりありません。補強材はフレームの内部に収まっていて、断熱性能への影響は製品全体のUwにすでに反映されているからです。気にするべきなのは部材単体ではなく、「その製品とガラスの組み合わせがSSかSか」という完成品としての性能です。
メーカー選びで起きやすい失敗は、口コミやランキングで「こちらが上」と決めてしまい、施工業者が扱い慣れていないほうを無理に指定するケースです。内窓は現場での採寸と取付の精度が性能を左右します。業者が普段扱っているメーカーを軸にしつつ、「自宅の窓枠に合う納め方」「希望の補助グレード」「希望色」の3つが満たせるかで最終判断するのが、失敗の少ない選び方です。
二重窓マンションで後悔しやすい人・向いている人の分かれ目
向いているのは「結露・寒さ・騒音」のどれかに毎日困っている人
内窓の効果を実感しやすいのは、窓に起因する悩みがはっきりしている住戸です。冬に窓際が冷えて暖房が効きにくい、毎朝サッシの結露を拭いている、幹線道路や線路の音が気になる。このどれかに毎日困っているなら、内窓は投資に見合う効果を感じやすい対策です。
理由は、これらの悩みの多くが窓という「弱点」に集中しているからです。外壁やコンクリートの部分に比べ、単板ガラスのアルミ窓は熱を通しやすく、結露も窓に集中します。弱点に集中した対策なので、変化を感じやすいのです。
シーン別に見ると、小さな子どもや高齢の家族がいて冬の寒さを減らしたい世帯、在宅勤務で日中も窓際で過ごす人、寝室が道路に面していて夜の騒音で眠りが浅い人は、優先度の高い層です。逆に、日当たりのよい中部屋で結露も寒さもほとんど感じていない住戸は、費用に対して変化を感じにくい可能性があります。「なんとなく省エネになりそう」ではなく、自宅の具体的な困りごとから考えるのが判断のコツです。
後悔の原因になりやすいのは開閉と掃除が2倍になること
内窓を付けて後悔する声で多いのが、日常の手間の増加です。外窓と内窓の両方を開け閉めする必要があるため、換気や布団を干すたびに窓を2回開けることになります。掃除も内窓と外窓の両方が必要になり、窓と窓のあいだのスペースにはホコリがたまります。
この失敗パターンの原因は、断熱や防音の効果ばかりに目が向き、毎日の動作を想像しないまま全窓に付けてしまうことです。とくにベランダへの出入りに使う掃き出し窓は開閉の回数が多く、手間を強く感じやすい場所です。
対策は、窓ごとに「どれくらい開け閉めするか」を考えて優先順位をつけることです。ほとんど開けない窓や、寒さと結露がひどい北側の窓は内窓に向いています。一方、毎日何度も出入りする窓は、手間を許容できるかを家族で話し合ってから決めましょう。掃除の手間を減らしたい場合は、ホコリがつきにくい加工のある製品を選ぶのも1つの方法です。内窓の欠点をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事で7つのデメリットを整理しています。

断熱リフォームを調べていると、内窓(二重窓)はほぼ必ず「まずここから」とすすめられます。工事は1窓あたり1時間ほどで終わり、壁を壊さず、補助金の対象にもなる。た…
角部屋と中部屋で必要な窓の数が変わる
マンションでは、同じ間取りでも住戸の位置によって窓の数が大きく変わります。公開されている施工事例を見ると、東京都北区の3LDK中部屋では全窓で4窓、東京都江東区の3DK角部屋では全5窓のうち4窓、東京都文京区の1LDK角部屋では全窓で6窓に内窓が設置されています。1LDKでも角部屋なら窓が6窓あり、3LDKの中部屋より多いのです。
角部屋は外気に面する壁と窓が多いぶん熱が逃げやすく、内窓の効果を感じやすい一方、全窓に付けると窓の数だけ費用がかさみます。江東区の事例のように、すべてではなく必要な窓を選んで施工する判断もあります。
注意したいのは、「寒い部屋の窓だけ」に絞りすぎると、同じ部屋に残った窓から熱が逃げて効果が薄く感じられることです。部屋単位で考え、その部屋の窓はすべて対象にするのが基本です。そのうえで、部屋ごとの優先順位をつけて予算内に収める。補助金の「1申請5万円以上」の条件も考えながら、窓の組み合わせを業者と相談しましょう。
見積もりを比べるときに確認したい5つの項目
内窓で失敗しないためには、見積もりの比べ方が重要です。確認したいのは「製品名とシリーズ」「ガラスの仕様」「補助グレード(SSかSか)」「納め方(持ち出し枠の有無)」「補助申請の代行の有無」の5つです。
この5項目がそろっていない見積もりは、金額だけ比べても意味がありません。たとえばA社が安く見えても、ガラスが複層ガラスでB社がLow-E複層ガラスなら性能も補助額も違います。持ち出し枠が含まれていない見積もりは、現地調査のあとで追加費用が出る可能性があります。
やりがちな失敗は、1社だけの見積もりで決めてしまうことです。内窓の費用は業者によって幅があり、平均的な相場が1窓あたり5〜15万円程度と幅広いのもそのためです。最低でも2社以上から、同じ窓・同じ条件で見積もりを取り、5項目を横並びにして比べましょう。そのうえで、窓リノベ事業者として登録しているか、施工実績を写真で見せてくれるかも確認すると、業者の信頼度を判断する材料になります。
まとめ
最初の一歩は、管理規約とリフォーム細則を開いて「窓枠・サッシの扱い」と「工事の届出」の項目を確認することです。そのうえで、窓リノベ事業者として登録している業者2社以上に現地調査を依頼し、ガラスの仕様・補助グレード・納め方がそろった見積もりで比べれば、自宅に合う内窓が判断できます。補助金は予算に達すると早期に終了するため、検討するなら秋のうちに動き出すのがおすすめです。
※補助額・期限・製品仕様は2026年度時点の情報です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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