電気代を下げたくて料金プランを調べ始めると、必ずと言っていいほど「新電力はやめとけ」という言葉に行き当たります。倒産した、請求が跳ね上がった、契約が打ち切られた——検索するほど不安になる情報ばかりが出てきて、結局そのままにしている方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えします。「新電力だから危ない」わけではありません。危ないのは自社で発電所を持たず市場から電気を仕入れている会社の、上限のない料金設計という組み合わせです。この組み合わせに当たると、燃料価格や市場価格が跳ねたときに請求額がそのまま自分に降ってきます。逆にこの構造さえ避ければ、新電力は選択肢として普通に成立します。
この記事では、なぜ「やめとけ」と言われるようになったのかを、市場シェアや倒産件数といった数字から順に分解します。そのうえで、契約先が倒産したときに実際に何が起きるのか、電気は止まるのか、乗り換えに何日かかるのかまで、仕組みの側から説明します。売り手の立場ではなく、あなたが自分で判断できる材料を渡すことがこの記事の目的です。
- 「やめとけ」と言われる理由が、実は4つに整理できること
- 登録734社のうち123社が倒産・撤退した背景と、その共通点
- 市場連動型プランで請求額が読めなくなる仕組み
- 契約先が倒産しても電気が止まらない理由と、乗り換えの手順
「新電力やめとけ」と言われる4つの理由を先に整理する

批判の中身はバラバラに語られがちですが、実際に読んでいくと理由は4つに収束します。この4つは性質がまったく違い、対処法も違います。まずここを分けておかないと、「危ないらしい」という漠然とした印象だけが残ってしまいます。
理由①:契約先が突然なくなるかもしれない
最も大きな理由が、事業者の倒産・撤退です。電力の小売事業に登録した会社は2024年9月末時点で734社ありますが、そのうち123社がすでに倒産または廃業しています。約6社に1社が市場から退場した計算です。
なぜこれが起きるかというと、電気を売る事業は「仕入れて売る」商売だからです。自社に発電所がない会社は、卸電力市場から電気を買って利用者に届けています。仕入れ値が売値を超えれば、売れば売るほど赤字になります。小売価格をすぐには変えられない契約になっていれば、その差はまるごと会社の負担です。
ただし、ここで押さえておきたいのは「倒産したら電気が止まる」わけではないという点です。電線と設備を管理しているのは各エリアの一般送配電事業者で、小売の会社とは別。そのため契約先が消えても送電は続きます(詳しくは後半で解説します)。困るのは電気そのものではなく、割高な料金への自動移行と、手続きの手間です。
理由②:市場連動型プランで請求額が読めなくなる
2つ目は料金設計の問題です。市場連動型と呼ばれるプランは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格に連動し、30分ごとに単価が動きます。安い時間帯は1kWhあたり10円/kWh未満になることもありますが、逆に需給が逼迫すれば同じ日のうちに何倍にもなります。
典型的な失敗は、「安いときの単価」だけを見て契約してしまうことです。市場連動型は、電気を使う時間を動かせる家庭にとっては武器になりますが、生活時間が固定されている家庭では単に変動リスクだけを引き受ける形になります。契約前に見るべきは平均単価ではなく、高騰したときにどこまで上がりうるかという上振れ側です。
理由③:燃料費調整額に上限がついていない
3つ目が、燃料費調整額の上限です。燃料費調整額は、燃料価格の変動を電気代に反映させる仕組みで、上限が設定されていれば燃料価格が上がっても消費者の負担が一定以上には増えません。いわばセーフティネットです。
ところが多くの新電力では、この上限が設定されていないか、途中で撤廃されています。上限が残っている会社はごく一部で、しかも同じ会社でもプランによって有無が違うことがあります。「新電力に変えたら請求が跳ねた」という話の多くは、この上限の有無を確認しないまま契約したケースです。
電気料金がどの部品でできているかを先に把握しておくと、この差がどこに効いてくるのかが見えやすくなります。

毎月届く電気の請求を見て、「先月より使っていないはずなのに、なぜか金額が上がっている」と首をかしげたことはありませんか。あるいは、紙の検針票が来なくなってから、…
理由④:プランと暮らし方が噛み合っていない
4つ目は、事業者ではなく選び方の問題です。新電力のプランは、基本料金ゼロで従量単価が一律のもの、夜間に安くなるもの、使用量が多いほど得になるものなど設計がばらばらです。単身者向けに設計されたプランを4人世帯で使えば、当然ながら想定より高くなります。
ここで効くのが「自分の家の使用量と使う時間帯」です。検針票やマイページで月間の使用量を確認せずにプランを選ぶと、シミュレーションの前提が現実とずれます。judgment のコツはシンプルで、直近12か月ぶんの使用量を並べ、最も多い月で試算すること。安い月ではなく高い月で成立するプランを選べば、噛み合わせの失敗はほぼ防げます。
4軒に1軒が使う市場で、123社が消えたという事実
「やめとけ」の声と、実際に使われている量は別の話です。まず市場の現在地を数字で確認しておきましょう。ここを飛ばすと、倒産件数だけを見て過剰に怖がることになります。
2016年4月の自由化から、どこまで来たのか
家庭向けの電力小売が全面自由化されたのは2016年4月です。それから8年あまりで、新電力のシェアは全販売電力量の約19.8%(2024年7月時点)まで伸びました。さらに家庭向けの低圧分野に限ると約26.8%で、およそ4人に1人が新電力を使っている計算になります。
この数字が意味するのは、新電力がすでに例外的な選択ではなくなっているということです。同時に、これだけ普及した後に倒産が相次いだからこそ、体験談としての「失敗した」という声も量として増えました。母数が増えれば失敗事例も増える——検索結果の印象が実態より厳しく見える理由の一つがこれです。
なお、どの会社と契約しても変わらない部分もあります。再生可能エネルギー発電促進賦課金は全国一律で単価が決まるため、乗り換えで削れるのは主に基本料金と従量料金の部分だけです。

電気代の明細を見て、「再エネ発電賦課金」という行に毎月1,000円を超える金額が乗っていることに気づいた——そんな方は多いはずです。契約プランを見直しても、電力…
登録734社・退場123社という比率をどう読むか
倒産・廃業した123社という数字は、登録734社に対しての数です。ここで注目したいのは絶対数より増え方で、2022年3月時点では17社だったものが、2024年3月には119社と、2年で約7倍に増えました。別の集計では2024年5月27日時点で706社中119社が倒産・新規契約停止・事業撤退の状態にあったとされています。
増加が2022年から2024年に集中していることが重要です。つまりこれは「新電力という業態が恒常的に危ない」のではなく、特定の期間に起きた市場価格の高騰が、耐えられない構造の会社をふるい落とした結果と読むのが正確です。ふるいにかけられたのがどんな会社だったのかは、次の見出しで詳しく見ていきます。
新規受付停止は「倒産予備軍」とは限らない
もう一つ、混同されやすいのが「新規契約停止」と「倒産」です。新規契約の受付を止めた会社は累計69社(2024年3月時点)ありましたが、そのうち47社はその後に業務を再開しています。
新規受付の停止は、仕入れ値が高い局面で契約者を増やすと赤字が拡大するため、意図的に販売を絞る経営判断でもあります。既存契約者への供給は続いているケースが大半です。停止のニュースを見て慌てて解約する前に、既存契約がどう扱われるのかを通知文で確認する——それだけで不要な手数料や手間を避けられます。
| 項目 | 2022年3月 | 2024年3月 | 2024年9月 |
|---|---|---|---|
| 倒産・撤退等の社数 | 17社 | 119社 | 123社 |
| 小売電気事業者の登録数 | — | 706社(2024年5月27日時点) | 734社(9月末時点) |
| 増加のペース | 基準 | 2年で約7倍 | 増勢は鈍化 |
なぜ倒産するのか|自社発電所を持たない会社の弱点

倒産した会社に共通していたのは、業態そのものより「電気の仕入れ方」でした。ここを理解すると、契約先を選ぶときにどこを見ればいいかが一気にはっきりします。
電気は30分ごとに市場で売買されている
自社で発電所を持たない新電力の多くは、日本卸電力取引所(JEPX)から電気を仕入れています。取引の中心になるのは翌日に受け渡す電気を売買する一日前市場(スポット市場)で、一日を30分単位に区切った48商品について取引が行われます。ほかに当日市場、先渡市場、ベースロード市場、間接送電権市場があります。
価格の決まり方はブラインド・シングルプライスオークションです。入札者は他社の入札内容を見られない状態で入札し、成立した取引はすべて同じ精算価格になります。つまり需要が供給を上回れば、全員が高い価格で買うことになります。仕入れ値が会社の努力ではコントロールできない、という点がこの業態の急所です。
取引の仕組みそのものは、日本卸電力取引所(JEPX)の公式サイトで市場区分ごとに公開されています。契約先が市場からどう調達しているかを読むときの前提になる情報です。
2021年冬に起きたこと:月平均63.07円/kWh
この弱点が現実化したのが2021年1月です。国内のLNG(液化天然ガス)不足で火力発電の発電量が落ち、卸電力市場のスポット価格が急騰しました。1月のスポット市場の月平均は63.07円/kWh、1月15日には30分のコマで最高値251円/kWhを記録しています。
通常時の水準が20〜30円/kWh程度であることを考えると、仕入れ値が一時的に一桁違う水準まで跳ねたことになります。小売価格を据え置いたまま供給を続けた会社は、売れば売るほど損失が膨らみました。ここで体力を失った会社が、その後の撤退・倒産の第一波になります。
2022年の燃料高が追い打ちになった
続く2022年は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに国際的なLNG価格が高騰し、そこに円安が重なりました。輸入燃料に依存する日本の電源構成では、この2つが同時に効くと調達コストは押し上げられます。
2021年の高騰を「一度きりの異常事態」と考えて先物やヘッジ取引の備えを増やさなかった会社は、2年続けて同じ打撃を受けました。倒産・撤退が2022年3月の17社から2024年3月の119社へと約7倍に増えたのは、この二段構えの高騰が背景にあります。逆に言えば、調達を市場一本に依存せず相対契約や自社電源を持っていた会社は、同じ環境でも生き残っています。
失敗パターン①:親会社ごと傾いて契約先が消えた
実際の事例を一つ。2024年2月2日、太陽光発電システムや蓄電池の販売を手がける会社(2005年設立)と、その子会社である電力小売会社(2015年設立)が、そろって民事再生法の適用を申請しました。負債額は親会社が約45億円(債権者約8000人)、子会社が約4億8000万円(債権者10人)で、合計は約49億8000万円です。
この親会社は2022年9月期に2億5,354万円の赤字を計上しており、機器の販売不振に加え、高圧電力サービスの調達コスト高騰が重なった形でした。その後、小売の事業は別会社へ承継され、親会社は2024年10月に民事再生手続の廃止決定を受けて破産手続へ移行する見通しとなっています。
ここでの教訓は、電力小売の会社を単体で見ても足りないということです。グループ本体の主力事業が別にある場合、そちらの不振が電力事業を巻き込みます。契約前にグループ全体で何を収益源にしているのかを見ておくと、こうしたリスクの見落としを減らせます。
「設立からの年数が長い会社なら安心」とは限りません。上の事例では親会社は2005年設立、子会社も2015年設立と、実績のある会社でした。見るべきは社歴ではなく、電気の調達方法(自社電源の有無・市場依存度)と、グループ本体の事業構造です。
市場連動型プランは「安いときだけ安い」|30分ごとに単価が動く
倒産と並んで「やめとけ」の根拠にされるのが、市場連動型プランです。この仕組みは損得がはっきり分かれるので、向き不向きを冷静に見極める価値があります。
市場連動型プラン=日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格と連動し、30分ごとに電力量料金の単価が変わる料金プラン。市場価格がそのまま利用者に伝わるため、安い局面の恩恵も、高騰局面の負担も、どちらも利用者側が受け取る設計になっています。
単価が動く幅は想像より大きい
市場連動型の単価は、通常であれば20〜30円/kWh程度の水準で動きます。需給が緩んで発電が余っている時間帯には10円/kWh未満になることもあり、この安さがプランの売りです。
問題は上振れ側です。2021年1月にスポット市場の月平均が63.07円/kWhまで上がり、コマの最高値が251円/kWhに達したという実績がある以上、同じことが再び起こらない保証はありません。価格に影響するのは燃料費(石油・液化天然ガス)、自然災害や極端な天候、発電所の故障、そして夕方や冬季のピーク需要です。いずれも利用者にはコントロールできない要因です。
固定型・市場連動型・規制料金の違いを並べる
判断の材料として、料金設計の型ごとに性格を整理しておきます。どれが優れているかではなく、どのリスクを自分で持つかの違いです。
| 項目 | 市場連動型 | 固定単価型(新電力) | 最終保障供給 |
|---|---|---|---|
| 単価の動き方 | 30分ごとに変動 | 単価は固定、燃料費調整額で変動 | 制度で決められた水準 |
| 高騰時の負担 | 利用者が全部受ける | 上限の有無で分かれる | 標準メニューより約2割高 |
| 予算の立てやすさ | 立てにくい | 比較的立てやすい | 読めるが割高 |
| 向いている使い方 | 使う時間を動かせる家庭 | 生活時間が固定の家庭 | 乗り換えまでの一時利用 |
失敗パターン②:冬に予算が崩れて生活が回らなくなる
市場連動型で起きやすい失敗は、月々の電気代が予測できないことによる家計側の破綻です。夏や春先の請求は安く収まっていたのに、冬のピーク需要期に単価が上がり、想定していた予算を大きく超える——という順番で起こります。
厄介なのは、この上振れが「使いすぎたから」ではなく「市場価格が上がったから」起きる点です。節電をしても単価そのものが動くため、努力と結果が結びつきにくい。教育費や住宅ローンで支出が固定されている世帯ほど、この読めなさは重くのしかかります。
対策は契約前に決まります。毎月の支出を一定に保ちたいなら市場連動型は選ばない。それでも選ぶなら、冬の高騰局面を1シーズン乗り切れる余裕を見ておく。この2択をはっきりさせておくことが、後悔を防ぐ一番の方法です。
シミュレーションの多くは、直近の平均的な市場価格を前提に計算されています。過去に月平均63.07円/kWhという局面があった以上、平均値の試算だけで判断するのは片側しか見ていないことになります。「高騰した月ならいくらか」を必ず併せて確認してください。
リスクを下げる4つの手段
市場連動型を選ぶ場合、変動をやわらげる手段は主に4つあります。第一に時間シフト利用で、単価が安い時間帯に洗濯や食洗機を回すこと。第二にスケジュール機能やリモート操作に対応した家電を使い、シフトを自動化すること。
第三が太陽光パネルと蓄電池の組み合わせです。単価が高い時間帯に自家発電・自家消費でしのげれば、市場価格の影響そのものを減らせます。第四がV2H(ビークル・トゥー・ホーム)で、電気自動車のバッテリーを家庭の電力として使う方法です。
ただし、これらは初期費用のかかる設備投資です。電気代の変動対策だけを目的に導入すると、費用の回収期間が長くなりすぎることがあります。設備側の損得は別途しっかり検討してください。

「蓄電池 やめたほうがいい」と検索すると、否定的な見出しがずらりと並びます。ところが同じ検索結果のなかに「卒FIT対策には蓄電池が有効」という記事も混ざっていて…
燃料費調整額の上限、あなたの契約に残っていますか
市場連動型でなくても、電気代には燃料価格の変動が入ってきます。それが燃料費調整額です。この項目に上限があるかないかが、固定単価型プランの安全性を実質的に決めています。
上限は消費者側のセーフティネット
燃料費調整額は、燃料価格の変動を電気代に反映させるための仕組みです。ここに上限が設定されていれば、燃料価格が想定を超えて上がっても、消費者が負担する調整額は一定の水準で止まります。超えた分は電力会社側の負担になります。
大手電力会社の規制料金には従来この上限が設けられてきました。一方、新電力の自由料金プランでは上限を設けるかどうかが各社の判断に委ねられています。同じ「固定単価」をうたうプランでも、上限の有無で高騰時の負担がまったく変わる——ここが見落とされやすいポイントです。
なぜ多くの会社が上限を外したのか
かつては上限を設定していた新電力も少なくありませんでした。しかし2022年、ロシア・ウクライナ情勢の影響で燃料価格が急騰した際、上限を超えた分を自社で負担し続けることが経営的に難しくなった会社が続出し、上限の撤廃が相次ぎました。
つまり上限の撤廃は、会社が不誠実だからというより、負担しきれなくなった結果です。裏を返せば、上限を維持している会社は、その分のリスクを引き受ける体力か調達手段を持っているとも読めます。現在も上限が残っているのは一部の会社に限られ、しかも同じ会社でもプランごとに扱いが異なることがあります。オール電化向けプランだけ上限がない、といったケースも実際にあります。
上限の有無や設定状況は変わりうるため、契約前には必ず各社の料金ページで最新の条件を確認してください。制度の考え方については燃料費調整額の上限に関する解説のような比較情報も参考になります。
実は「新電力だから危ない」のではない
意外と知られていませんが、ここまで見てきたリスクはどれも「新電力かどうか」では決まっていません。決めているのは、①電気をどこから調達しているか、②料金に上限があるか、③単価が市場に連動するか、の3点です。
自社電源や相対契約を持ち、上限つきの固定単価で売っている新電力は、市場高騰の影響を受けにくい設計になっています。逆に言えば、この3点を確認せずに「大手だから安心・新電力だから危険」と分けてしまうと、判断を間違えます。契約書と料金ページで確認すべきは会社の知名度ではなく、この3つです。
確認するのは「調達方法」「燃料費調整額の上限の有無」「市場連動型かどうか」の3点。この3点が揃って把握できないプランは、安さの根拠が読めないプランということです。
契約先が倒産しても電気は止まらない|最終保障供給の中身
ここまで倒産リスクを見てきましたが、多くの人が最も恐れている「ある日突然電気が消える」という事態は、制度上起きにくくなっています。仕組みを知っておけば、通知が届いても落ち着いて対処できます。
最終保障供給とは何か
最終保障供給とは、小売電気事業者のいずれとも供給契約を結べなかった場合に、次の契約先が見つかるまで一般送配電事業者が電力を供給する制度です。提供するのは全国10エリアの一般送配電事業者で、事業撤退や倒産で契約切替を余儀なくされた需要家などが対象になります。
契約期間は基本として1年以内で、延長も可能です。料金は標準メニューより約2割高く設定されています。これは意地悪な設定ではなく、利用者にできるだけ早く新しい契約先へ移ってもらうための設計です。あくまで橋渡しの制度であって、長く使う前提ではありません。
家庭(低圧)と高圧では扱いが違う
ここは混同されやすい部分です。高圧で受電している事業所などは、契約先が消えると最終保障供給に移り、標準より2割高い料金が適用されます。一方、家庭向けの低圧については、地域の大手電力会社の規制料金へ自動的に移る形になり、最終保障供給とは別枠で供給が続きます。
つまり一般家庭の場合、手続きをしなくても電気は使い続けられます。ただし移行先の料金が今より高くなる可能性は十分にあるため、放置してよいという意味ではありません。通知が届いたら、次の契約先を早めに決めるのが基本方針です。
倒産通知が届いたときの3ステップ
やることは多くありません。順番だけ決めておけば迷わずに済みます。
申し込みに必要なのは、契約中の電力会社の情報(会社名・お客様番号)、供給地点特定番号、本人確認書類、希望の切り替え日の4点です。供給地点特定番号は検針票かマイページで確認できます。
切り替えには2週間から1ヶ月かかる
手続き自体は難しくありませんが、時間はかかります。申し込みから切り替え完了まで、だいたい2週間から1ヶ月ほどを見ておく必要があります。スマートメーターが未設置の場合は交換工事の日程も加わります。
この所要時間を知らずに、供給停止日の直前になって動き始めると、間に合わずに割高な料金へ移行する期間が発生します。通知を受け取ったその週のうちに次の契約先を決める——これだけで余計な出費を避けられます。逆に言えば、慌てて条件を確認せずに契約するのも失敗のもとです。最終保障供給や規制料金へ一時的に移ることは想定内の選択肢として、腰を据えて次を選ぶ余裕を持ちましょう。
新電力が向く家庭・向かない家庭の分かれ目
ここまでの内容をふまえて、実際に自分の家がどちらなのかを判定します。判断軸は「電気を使う時間を動かせるか」と「請求額の変動を受け止められるか」の2つです。
向いているのはこういう家庭
新電力に向くのは、電気の使用時間を柔軟に調整できる人、電気の使用量が比較的少ない人、電気の使い方を工夫できる人です。時間帯を意識した節約に取り組みたい人や、基本料金のような固定費を極力ゼロにしたい単身者も相性がよい層に入ります。
たとえば在宅勤務で日中に家にいる世帯なら、洗濯や調理の時間を単価の安い時間帯に寄せることができます。単身で使用量が少ない世帯なら、基本料金ゼロのプランに変えるだけで固定費が減ります。共通しているのは、自分の生活パターンを料金プランに合わせて動かす余地があることです。
判断のコツは、「今週やったことのうち、時間を2時間ずらせる家事はいくつあったか」を数えてみることです。3つ以上あるなら、時間帯で単価が変わるプランを検討する価値があります。
向かないのはこういう家庭
逆に向かないのは、毎月の電気代が安定していてほしい人、電気の使用時間を調整するのが難しい人です。乳幼児や高齢の家族がいて室温管理を優先する必要がある家庭、夜勤や交代勤務で生活時間が固定されている家庭も、変動型のプランは扱いにくくなります。
もう一つの典型が、プラン選びを間違えるパターンです。単身者向けに設計されたプランを家族世帯で使う、あるいは日中に電気を使わない世帯が昼間割引のプランを選ぶ——設計と実態がずれると、乗り換えたのに高くなります。
向かないと判断した場合でも、選択肢がないわけではありません。市場連動型を避け、燃料費調整額に上限があり、自社電源や相対契約で調達している会社の固定単価プランであれば、変動リスクは抑えられます。「新電力を全部やめる」ではなく「変動型を避ける」と考えるほうが、選択肢は広く残ります。
契約前に確認する5項目
実際に申し込む前のチェックリストです。順に見ていけば、大きな失敗はほぼ防げます。
①新規申し込みの受付状況(受付を停止している会社も少なくありません)、②対応エリア、③燃料費調整額の上限の有無、④契約期間と解約条件(解約金や最低利用期間の有無)、⑤市場連動型か固定単価型か。この5つです。
加えて、安定して事業を続けている会社にはいくつか共通点があります。大手のエネルギー系・通信系グループの傘下にあること、自社で発電所を保有していること、経営が安定しており撤退・倒産のリスクが低いこと。これらは公式サイトの会社概要や事業内容の記載から確認できます。安さの数字だけでなく、その安さがどこから来ているのかを見る習慣が、結果的に一番のリスク対策になります。
よくある疑問に答えます
まとめ|やめるべきかは「調達構造」と「暮らし方」で決まる
「新電力やめとけ」という言葉の中身を分解すると、倒産・撤退のリスク、市場連動型の変動、燃料費調整額の上限撤廃、そしてプランと暮らし方のミスマッチという4つに整理できました。このうち前の3つは、契約前に料金ページと契約条件を読めば判別できます。最後の1つは、自分の家の使用量と生活時間を把握すれば防げます。つまり、避けようのないリスクは意外と少ないということです。
今日の最初の一歩としておすすめしたいのは、検針票かマイページを開いて、直近12か月ぶんの使用量を並べてみることです。最も使用量が多かった月の数字が、プランを比較するときの現実的な前提になります。そのうえで契約中のプランが市場連動型かどうか、燃料費調整額に上限があるかどうかを確認してみてください。ここまで分かれば、乗り換えるべきか、今のままでよいかは自分で判断できます。
※本記事の数値は各時点で公表されたものです。料金プランの条件、燃料費調整額の上限の有無、事業者の受付状況は変更されることがあるため、契約前に各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。

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