「電気温水器が10年を過ぎて、そろそろ交換を考えている。同じ電気の給湯器なら、エコキュートにしたほうがいいのか」。オール電化の家でこう迷う人は少なくありません。どちらも夜にお湯をまとめて沸かしてタンクに貯める「貯湯式」なので、見た目は似ています。ところが中身の沸かし方はまったく別物で、この違いが電気代・工事内容・置き場所のすべてに効いてきます。
先に結論を言うと、メーカー公式の試算では給湯の電気代は電気温水器の約4分の1まで下がります。パナソニックの東京電力エリアの試算(2026年3月調べ)では、電気温水器が年間約157,200円、エコキュートが年間約36,000円です。一方で、ヒートポンプユニットという室外機の置き場所、夜間の運転音、電気料金プランの切り替えなど、電気温水器にはなかった検討項目が増えます。
この記事では、売り手の立場ではなく中立の立場から、電気温水器からエコキュートに替えたときに変わること・変わらないことを数字で整理します。給湯省エネ2026事業の撤去加算を含めた補助金の条件や、替えないほうがいい家の条件まで扱うので、見積もりを取る前の判断材料として使ってください。
・電気温水器とエコキュートで電気代が約4倍違う仕組み
・交換工事で新たに必要になる5つの項目(置き場所・基礎・配管・電源・契約)
・給湯省エネ2026事業で電気温水器から替えると最大12万円になる条件
・交換を急ぐべき家と、急がなくていい家の見分け方
電気温水器からエコキュートで何が変わる?沸かし方の違いが電気代を決める

同じ「夜に沸かして貯める」でも熱の作り方が正反対
電気温水器とエコキュートの最大の違いは、お湯を温める熱をどこから持ってくるかです。電気温水器はタンクの中のヒーター(電熱線)に電気を流し、その発熱でお湯を沸かします。電気ポットを大きくしたような仕組みで、使った電気がそのまま熱に変わります。
エコキュートは、エアコンと同じヒートポンプで空気中の熱を集めてお湯を作ります。日本冷凍空調工業会の据付けガイドブックによると、CO2冷媒を圧縮して高温にし、その熱を水に渡す構成で、電気は主に圧縮機と送風機を動かすために使われます。電気で「熱を作る」のではなく「熱を運ぶ」ので、使った電気より多くの熱を取り出せるわけです。
よくある誤解が「どちらも深夜電力で沸かすから電気代はそれほど変わらない」というものです。夜間単価が同じでも、同じ量のお湯を作るのに必要な電気の量(kWh)そのものが違うので、差は単価ではなく使用量の段階で生まれます。
自分の家の給湯器がどちらか分からない場合は、屋外にタンクだけがあり室外機がなければ電気温水器、タンクの横にエアコンの室外機に似た箱が並んでいればエコキュートです。
年間給湯保温効率4.1が意味すること
エコキュートの省エネ性能は「年間給湯保温効率(JIS)」という数字で表されます。パナソニックの2026年度モデルHE-JPU37NQSでは4.1です。これは、1年を通して使ったときに、消費した電気の約4倍の熱量を給湯と保温に回せるという意味です。
理由はヒートポンプの性質にあります。空気中の熱は外気温が低くてもゼロではなく、それを冷媒で集めて圧縮すると高温になります。一方、電気温水器のヒーターは投入した電気以上の熱を出すことができません。タンクからの放熱ぶんも含めると、実際の効率は1を下回ります。
この差がそのまま電気代に出ます。パナソニックの試算で電気温水器のランニングコストがエコキュートの約4倍とされているのは、ほぼこの効率差の裏返しです。ただし効率は外気温で変わり、冬は下がります。寒い地域ほどエコキュートの優位は小さくなり、北海道電力エリアの月平均は約4,800円と、東京電力エリアの約3,000円より高く試算されています。
カタログを比べるときは、容量が同じ機種どうしで年間給湯保温効率を見比べてください。数字が0.1違うだけでも、10年以上使う機器では積み重なります。
年間給湯保温効率=JIS C 9220で定められた条件で1年間運転したとき、給湯と保温に使われた熱量を消費電力量で割った値。数字が大きいほど、同じお湯を少ない電気で作れます。電気温水器はヒーター加熱のため、この値が1を超えることはありません。
電気温水器が今も売られている理由
「そんなに差があるなら電気温水器はもう売っていないのでは」と思うかもしれませんが、現行品はあります。コロナの公式サイトには2026年時点で高圧力型のUWH-37X1N2U(2〜4人用)などが掲載され、メーカー希望小売価格(税込)は611,600円です。
残っている理由は、エコキュートを置けない家があるからです。エコキュートは貯湯タンクに加えてヒートポンプユニットを屋外に置く必要があり、マンションの屋内収納や、敷地にまったく余裕のない家では物理的に設置できないことがあります。電気温水器ならタンク1台で済み、屋内設置型もあります。
見落としやすいのは価格です。電気温水器は構造が単純な割に希望小売価格が安いわけではなく、コロナの460Lクラス(UWH-46SX1N2U)は675,400円です。「安いから電気温水器にする」という選び方は成り立ちにくく、選ぶ理由は「エコキュートが置けない」が中心になります。
自宅でどちらを選ぶか迷ったら、まずヒートポンプユニットを置ける場所があるかを業者に現地で確認してもらうのが出発点です。置けるならエコキュート、置けないなら電気温水器の継続、という順番で考えると迷いが減ります。
電気代はどれだけ下がる?メーカー2社の公式試算を読み比べる
パナソニック試算:年間約157,200円が約36,000円に
パナソニックが公開しているランニングコスト比較では、東京電力エリアで電気温水器DH-37G6QUの年間約157,200円に対し、エコキュートHE-JPU37NQSは年間約36,000円です。差額は年間約121,200円と示されています。
前提条件を読むと、運転モードは「おまかせ節約」、電気料金は東京電力エナジーパートナーの「スマートライフL」、燃料費調整額を除き基本料金を含まない計算です(2026年3月調べ)。つまり、給湯に使う電力量料金だけを取り出した比較で、家全体の電気代の差ではありません。
ここでよくある読み違いが、「年間約121,200円安くなる」をそのまま家計の節約額と受け取ることです。実際には基本料金、燃料費調整額、再エネ賦課金、そしてお湯の使用量によって金額は動きます。試算はあくまで同じ条件で2つの機器を並べたときの差で、機器の性能差を見るための物差しです。
この試算を自分の家に当てはめるなら、今の検針票で電気温水器の契約分(深夜電力などの別契約がある場合はその金額)を確認し、その金額が試算に近いかどうかを見ると現実的な目安になります。
三菱電機試算:年間約170,000円と約40,000円
三菱電機も買い替え提案ページで比較を示しています。2016年度発売の電気温水器SRT-J37WD5が年間電気料金約170,000円、2025年度発売のエコキュートSRT-P377UBが年間約40,000円です。
こちらは2025年1月時点の中部電力ミライズ「スマートライフプラン」の数値を使い、契約電力10kVA以下を想定しています。電力会社も年も機種もパナソニックの試算とは違いますが、どちらも「電気温水器はエコキュートのおよそ4倍」という関係は共通しています。
2社の数字が一致しない点を「どちらかが盛っている」と受け取る必要はありません。料金単価が違えば金額は変わりますが、倍率は機器の効率差でほぼ決まるので、2社の試算で倍率がそろっていることのほうが大事な情報です。
判断に使うなら、金額よりも倍率を見てください。今の給湯の電気代がいくらであれば、その4分の1前後になる可能性がある、という読み方をすると、地域や料金プランが違っても応用がききます。
| 項目 | パナソニック試算 | 三菱電機試算 |
|---|---|---|
| 電気温水器(年間) | 約157,200円(DH-37G6QU) | 約170,000円(SRT-J37WD5) |
| エコキュート(年間) | 約36,000円(HE-JPU37NQS) | 約40,000円(SRT-P377UB) |
| 料金プラン | 東京電力EP スマートライフL | 中部電力ミライズ スマートライフプラン |
| 調べた時期 | 2026年3月 | 2025年1月 |
| 倍率 | 電気温水器は約4倍 | 電気温水器はおよそ4倍 |
試算どおりに下がらない家の3つの条件
公式試算の4分の1という数字は、条件がそろったときの値です。実際の家庭で差が縮む原因は、主に3つあります。
1つ目は寒冷地であることです。ヒートポンプは外気の熱を集めるので、気温が低いほど効率が落ちます。パナソニックの試算でも北海道電力エリアは月平均約4,800円で、東京電力エリアの約3,000円、関西電力エリアの約1,700円、九州電力エリアの約1,600円より高く出ています。
2つ目は昼間の沸き増しが多い家です。エコキュートは夜間に沸かした湯を使う前提で設計されていますが、湯切れしそうになると昼間に沸き増しします。家族の人数に対してタンク容量が小さいと、単価の高い時間帯の運転が増えて試算から離れます。
3つ目はお湯をあまり使わない家です。これは差が縮むというより、差額の絶対値が小さくなるパターンで、一人暮らしや二人暮らしでは節約額そのものが試算より小さくなります。この3条件のどれかに当てはまるなら、試算の金額より控えめに見積もっておくのが安全です。
見落としやすいのは料金プラン|深夜電力の契約はどうなる?

電気温水器の「深夜電力」は家の電気とは別契約だった
古い電気温水器の家では、給湯器だけが「深夜電力」という別の契約になっていることがあります。東京電力エナジーパートナーの深夜電力のページによると、深夜電力Bは契約電力が1kW以上となる電気温水器などに使える契約で、毎日午後11時から翌朝午前7時までの8時間だけ電気が使えます。
この深夜電力は2016年3月31日をもって新規加入の受付を終了しています。今契約している家は継続して使えますが、エコキュートに替えるときに契約をどうするかは、電力会社や工事業者と決める必要があります。
見落とされがちなのは、深夜電力の基本料金が2025年4月1日に見直されている点です。深夜電力Bの基本料金は1kWにつき355.75円から649.12円に上がりました。電力量料金は1kWhあたり28.85円で据え置かれていますが、基本料金の負担は以前より重くなっています。
自分の家が該当するかは、検針票が2枚届いているか、または1枚の中に契約種別が2つ書かれているかで分かります。「深夜電力」の文字があれば、給湯器の交換と同時に契約の見直しも検討対象になります。
スマートライフへの一本化で昼間の単価はどう変わるか
エコキュートに替えると、多くの場合は家全体の契約を夜間が安いプランに一本化します。東京電力エナジーパートナーのスマートライフでは、午前1時〜午前6時が1kWhあたり27.86円、午前6時〜翌午前1時が35.76円です(税込、燃料費調整額を除く単価)。加入条件は、総容量(入力)1kVA以上の夜間蓄熱式機器またはオフピーク蓄熱式電気温水器を使っていることです。
ここに落とし穴があります。一本化すると、給湯だけでなく冷蔵庫・照明・エアコンなど家全体の昼間の電気がすべて35.76円で計算されます。これまで従量電灯などの一般的な契約で昼間の電気を使っていた家は、昼の単価が上がるぶんだけ家全体の電気代が増える可能性があります。
もう1つ、夜間の時間帯が短くなる点も押さえておきましょう。深夜電力は午後11時から8時間でしたが、スマートライフの夜間は午前1時〜午前6時の5時間です。エコキュートはこの時間帯に合わせて沸き上げるので問題になりにくいのですが、夜間に食洗機や洗濯乾燥機を回す習慣がある家は時間の調整が必要です。
プランを決める前に、電力会社の料金シミュレーションに今の使用量を入れて、一本化前後の合計額を比べるのが確実です。
給湯器だけ替えて料金プランを確認しないと、試算ほど電気代が下がらないことがあります。原因は、①エコキュートの沸き上げ時間帯と契約の安い時間帯がずれている、②昼間の使用が多い家なのに夜間型プランに一本化して昼の単価が上がった、の2つが中心です。対策は、工事前に電力会社のシミュレーションで一本化前後の合計額を比べ、工事後はリモコンの沸き上げ時間帯が契約の夜間時間と合っているかを確認することです。
深夜電力をやめると戻れない、という事実
深夜電力は新規受付を終了しているため、一度解約すると再び契約することはできません。東京電力エナジーパートナーの案内でも、転居先では新しい契約となるため利用できないと明記されています。
これが問題になるのは、エコキュートへの交換後に「やっぱり以前の契約のほうが安かった」と気づいた場合です。元の契約には戻れないので、比較は解約前に済ませておく必要があります。
ただし、深夜電力を残すことが得とは限りません。基本料金が上がった今、電気温水器をやめれば深夜電力の基本料金もなくなります。エコキュートは電気温水器より消費電力量が少なく、契約電力も小さくなりやすいので、別契約を維持する理由は以前より薄れています。
大切なのは順番です。①今の契約の内訳を検針票で把握する、②電力会社に「エコキュートに替えた場合のおすすめプラン」を試算してもらう、③その数字を見てから解約を判断する。この順で進めれば、戻れない契約を勢いで手放す失敗は避けられます。電力会社によって深夜電力の名称や扱いは異なるので、東京電力以外のエリアでは契約先の電力会社に確認してください。
交換工事で電気温水器と違う5つのポイント
ヒートポンプユニットの置き場所が新たに要る
電気温水器からの交換で最初に確認すべきなのは、ヒートポンプユニットの置き場所です。パナソニックの370LモデルHE-S37LQSでは、公式仕様によるとヒートポンプユニットの外形寸法は高さ672×幅799×奥行299mm、質量41kgです。エアコンの室外機に近い大きさの箱が、タンクとは別に必要になります。
さらに、本体寸法だけ置ければいいわけではありません。パナソニックの置き替えの注意点には、性能と工事・メンテナンス性を確保するための設置制約条件があると書かれています。吸い込み口・吹き出し口の前をふさぐと空気が回らず、効率が落ちるためです。
よくあるのは、電気温水器のタンクがあった場所にエコキュートの貯湯タンクは収まるのに、横にヒートポンプユニットを置く余地がないケースです。ヒートポンプユニットは据付説明書の範囲内で貯湯タンクから離して置けるので、配管を延ばして別の面に置く解決策もあります。
現地調査では「タンクの場所」だけでなく「ヒートポンプユニットの候補地」を2か所以上見てもらい、それぞれの配管の長さと音の影響を比べると判断しやすくなります。
満水434kgを支える基礎と、屋内設置の家の注意
貯湯タンクは満水にすると重くなります。HE-S37LQSの貯湯ユニットは質量64kg、満水時は434kgです。パナソニックは、ほとんどの貯湯タンクは満水時重量が400kg以上になるため、地震時に転倒しないよう基礎工事が必要だとしています。
電気温水器もタンクに水を貯める点は同じなので、既存の基礎が使えることもあります。ただし寸法が変わるとアンカーの位置が合わず、基礎の作り直しや補強が必要になります。HE-S37LQSの貯湯ユニットは高さ1810×幅600×奥行680mmで、既存の電気温水器と幅・奥行が一致するとは限りません。
屋内に電気温水器を置いている家は、さらに確認が必要です。エコキュートにも屋内設置用はあり、パナソニックの案内では屋内設置用は給水遮断弁と漏水センサーを内蔵しています。とはいえヒートポンプユニットは屋外に置くことになるため、屋内のタンクと屋外のユニットを結ぶ配管ルートが確保できるかが工事の可否を分けます。
見積もりを比べるときは、基礎を「既存利用」とするか「新設」とするかで金額が変わるので、各社の見積書でこの項目が同じ前提になっているかをそろえて見てください。
給湯配管20mmと排水配管
配管も見直しの対象です。パナソニックは、既設の給湯配管の径が小さい場合は出湯量が低下するため、管径20mmの新規配管を推奨しています。
理由は、エコキュートの多くが電気温水器より高い圧力でお湯を送れる設計になっているからです。古い電気温水器の家では細い配管がそのまま使われていることがあり、せっかく機器を替えても配管がボトルネックになってシャワーの勢いが思ったほど上がりません。「エコキュートにしたのに水圧が弱い」という不満は、機器より配管が原因のことがあります。
排水配管も必要です。貯湯タンクの沸き上げ時にはタンク下部の排水口から膨張水が出るため、その水を流す経路が要ります。タンクの水抜きをするときにも排水口を使います。
配管工事はどこまでやるかで費用が大きく変わる項目です。見積書に「既設配管利用」と書かれている場合は、配管径がいくつかを業者に質問し、20mmより細いなら交換した場合の追加費用も出してもらいましょう。

単相200Vの専用回路とD種接地
電源工事も確認しておきましょう。HE-S37LQSの電源は単相200Vで、パナソニックは単相200Vの電源工事とエコキュート専用ブレーカーが必要としています。電気温水器も200Vで動いていることが多いので既存の回路を活かせる場合がありますが、ブレーカーの容量や配線の状態は現地で見なければ判断できません。
感電事故を防ぐための接地(アース)も必須です。パナソニックの案内では、内線規程に基づいて必ず「D種接地工事」を実施する必要があるとされています。
電気の面で有利になる点もあります。HE-S37LQSのヒートポンプユニットの消費電力は中間期0.93kW、冬期高温1.5kWで、定格加熱能力は4.5kWです。少ない電力で大きな加熱能力を出すので、家全体の同時使用電力のピークを抑えやすくなります。
電源工事と接地工事は電気工事士の資格が必要な作業です。分電盤の中を自分で触ったり、配線を延長したりはせず、見積もりの段階で「専用回路の新設が必要か」「既存回路を流用するか」を業者に確認してください。
夜の運転音は大丈夫?ヒートポンプの音と置き場所の考え方
電気温水器にはなかった「音」が生まれる
電気温水器はヒーターで温めるだけなので、運転中にほとんど音が出ません。エコキュートは圧縮機と送風機が回るため、運転音が生まれます。日本冷凍空調工業会の据付けガイドブックによると、運転音は主にヒートポンプユニットの圧縮機と送風機から発生し、騒音レベルはユニット近傍で40dB程度です(JIS C 9220に基づき、無響室でユニットから1m離れた距離で測定)。
40dB程度は数字だけ見ると小さく感じますが、ガイドブックは、深夜は周りの音が静かなため運転音自身が小さくても認識されやすい傾向があると説明しています。昼間なら気にならない音でも、寝静まった時間帯には聞こえやすくなるわけです。
電気温水器から替える家は、これまで給湯器の音を意識したことがないので、この変化に戸惑いやすい点に注意が必要です。特に寝室が給湯器の近くにある間取りでは影響が出やすくなります。
カタログで比べるときは運転音のdB値を確認しましょう。ただし実際の聞こえ方は据付け場所で変わるので、数値だけで判断せず置き場所とセットで考えるのが基本です。
冬に55dBまで上がる理由
エコキュートの運転音は一年中同じではありません。HE-S37LQSの公式仕様では、運転音は中間期50dB、冬期55dBです。ガイドブックも、冬場は圧縮機や送風機の回転数が上昇するため運転音が大きくなる傾向があると説明しています。
理由は、寒い時期ほど外気から熱を集めにくくなり、同じ量のお湯を作るのに機械を強く回す必要があるからです。しかも冬は給水温度も下がり、お湯の使用量も増えるので、沸き上げにかかる時間が長くなります。
このため、秋に工事をして「静かだ」と感じた家が、真冬になって音が気になり始めるというケースがあります。工事直後の印象で判断せず、冬の運転を想定して置き場所を決めることが大切です。
夜の音が心配な家は、沸き上げの時間帯と寝る時間の関係も見ておきましょう。エコキュートは契約の夜間時間帯に合わせて沸き上げるため、寝室の近くにユニットがあると、ちょうど就寝中に運転することになります。
電気温水器は音がほぼ出ないため、隣家の寝室の窓のすぐそばに置かれていることがあります。その場所にエコキュートのヒートポンプユニットを置くと、深夜の運転音が隣家に届きやすくなります。原因は「今まで問題がなかった場所だから」という判断です。対策は、ヒートポンプユニットだけ貯湯タンクから離して、隣家の寝室や窓から距離をとれる位置に置くことを工事前に検討することです。
据付けガイドブックの3つのチェックポイント
日本冷凍空調工業会の据付けガイドブックは、ヒートポンプユニットの据付け場所の選定ポイントとして3つを挙げています。①自宅と隣家の寝室の傍は避ける、②ユニットの近く(上方向を含む)に窓や床下通風口などの音の侵入口があれば極力距離をとる、③ユニットの周囲に極力スペースを設け、壁や塀で音が反射しないように工夫する、の3点です。
据付け方法についても、強固な台に据え付ける、振動による音が出ないよう防振ゴムを敷く、水平に据え付ける、といった要領が示されています。壁や塀に囲まれた狭い場所は、音が反射して大きく聞こえることがあります。
運転音の問題は、国の機関でも取り上げられました。消費者安全調査委員会は2014年12月19日に、家庭用ヒートポンプ給湯機の運転音・振動に関する申出事案の報告書を公表しています。こうした経緯もあり、据付け場所の選定は機器選びと同じくらい重要な工程と考えておくべきです。
業者との打ち合わせでは、ガイドブックの3つのポイントを使って候補地を一緒に確認してください。隣家との位置関係は業者より住んでいる人のほうが把握しているので、寝室の位置など分かる範囲で伝えると置き場所の精度が上がります。
補助金はいくら出る?給湯省エネ2026で電気温水器からの交換が有利な理由
基本額7万円と性能加算3万円の違い
2026年度は、経済産業省の給湯省エネ2026事業でエコキュートの導入に補助が出ます。エコキュートの基本額は1台あたり7万円、性能加算の要件を満たす機種は3万円が上乗せされ、合計10万円です(令和7年度補正予算、予算は570億円)。
基本額の対象になるには、省エネ法のトップランナー制度で2025年度目標基準値以上の性能があり、インターネットに接続でき、翌日の天気予報や日射量予報に連動して昼間に沸き上げをシフトする機能を持つ機種であること(またはおひさまエコキュート)が求められます。
性能加算は、対象機器の詳細によると、基本要件の機種より5%以上CO2排出量が少ないものとして、2025年度目標基準値+0.2以上の性能値を持つ機種が対象です。
同じメーカーの同じ容量でも、基本額だけの機種と性能加算がつく機種があります。見積もりを取るときは、提示された機種がどちらに当たるのかを業者に確認し、補助額の差を本体価格の差と並べて比べると選びやすくなります。
電気温水器の撤去加算2万円の条件
電気温水器からエコキュートに替える家には、撤去加算があります。電気温水器を撤去すると1台あたり2万円が加算され、上限はエコキュート等で補助を受ける台数までです。つまり、性能加算のある機種なら7万円+3万円+2万円で12万円、基本額の機種なら7万円+2万円で9万円になります。
条件は、リフォーム工事で、高効率給湯器の設置に伴い2025年11月28日以降に撤去するものに限られます。新築は対象外で、エコキュートを入れずに電気温水器だけ撤去しても加算はつきません。
同じ事業には電気蓄熱暖房機の撤去加算もあり、こちらは1台4万円(上限2台)です。古いオール電化住宅で電気温水器と蓄熱暖房機の両方が残っている家は、給湯器の交換と合わせて暖房の見直しを検討する余地があります。
ここで大事なのは「電気温水器からの交換は、ガス給湯器からの交換より補助額が2万円多い」という構造です。国の制度として電気温水器からの置き替えを後押ししているので、交換を考えているなら、制度がある年度に動くほうが条件はよくなります。
個人では申請できない:登録事業者と契約する
給湯省エネ2026事業は、補助を受ける人が自分で申請する仕組みではありません。登録事業者が手続きを行い、補助金は補助対象者と合意した方法で還元されます。つまり、工事を頼む業者がこの事業の登録事業者でなければ、補助は受けられません。
よくある失敗は、補助金のことを後から思い出すケースです。工事を終えたあとに「補助金を使いたい」と伝えても、業者が未登録だったり、必要な写真を撮っていなかったりすると申請できません。着工前の段階で、登録事業者かどうか、補助金の申請を代行してもらえるかを確認しておく必要があります。
もう1つの注意点は、還元方法です。契約代金に充てるのか、工事後に現金で受け取るのかは業者との合意で決まります。見積書が補助金を差し引いた金額なのか、差し引く前の金額なのかを確認しないと、業者どうしの比較を誤ります。
契約の前に、①登録事業者か、②補助額はいくらの想定か(基本額か性能加算込みか、撤去加算を含むか)、③還元方法はどうするか、の3点を書面で確認しておくと安心です。

給湯器の調子が悪くなってエコキュートへの買い替えを調べ始めると、「補助金が最大14万円出る」という情報にはすぐ行き当たります。ところが次に「では、その申請書はど…
期限と予算の進み具合:2026年11月16日の予約期限
給湯省エネ2026事業の対象は、2025年11月28日以降に着工したものです。交付申請は予算上限に達するまで、遅くとも2026年12月31日まで、予約は遅くとも2026年11月16日までとされています。
公式サイトの表示では、予算に対する補助金申請額の割合は2026年9月23日午前0時時点で45%(概算値)です。まだ半分に達していませんが、予算上限に達した時点で受付は終わるので、期限まで必ず使えるとは限りません。
電気温水器の交換は、故障してから急いで決めると、在庫のある機種を優先して補助金の条件を確認しきれないことがあります。壊れる前に動けば、機種・業者・補助額を比べる時間がとれます。
年度をまたぐと制度の内容は変わる可能性があります。2027年度に同じ補助が続くかどうかは現時点では分からないため、「来年また同じ条件で出るだろう」と決めつけず、今年度の条件で判断するのが現実的です。
| 補助額 | 基本額7万円/台、性能加算3万円/台 |
| 撤去加算 | 電気温水器2万円/台、電気蓄熱暖房機4万円/台(2台まで) |
| 期限 | 予約は遅くとも2026年11月16日、交付申請は遅くとも2026年12月31日(予算上限で早期終了あり) |
| 申請する人 | 登録事業者(個人は直接申請しない) |
交換を急ぐべき家・急がなくていい家の見分け方
使用10年超・故障前に替えたい家は今年度が動きどき
交換を急ぐ理由があるのは、電気温水器を10年以上使っている家です。給湯器が壊れると、その日からお湯が使えなくなります。故障してから探すと、すぐ手配できる機種や業者に選択肢が絞られ、補助金の対象機種かどうか、登録事業者かどうかを確かめる余裕がなくなります。
もう1つの理由は電気代の差です。メーカー試算では電気温水器の給湯の電気代はエコキュートの約4倍で、パナソニックの東京電力エリアの試算では年間約121,200円の差があります。前提条件つきの試算ではありますが、交換を先延ばしにするあいだも、この差は毎年発生し続けます。
とはいえ、試算の差額だけで「何年で元が取れる」と決めつけるのは危険です。工事費は置き場所や配管の状況で変わり、電気代の差はお湯の使用量で変わります。交換の判断は、見積もり総額から補助額を引いた実負担と、自分の家の給湯の電気代を並べて考えてください。
10年を超えていて、お湯の温度が安定しない、エラーが出る、タンクまわりから水がにじむといった変化があるなら、故障前に見積もりを取り始めるタイミングです。

お風呂のお湯がぬるい日がある、給湯機の下がいつも濡れている、リモコンにエラーが出て消えるを繰り返している。設置してから10年前後の電気温水器で、こうした症状が出…
ヒートポンプを置けない家は電気温水器の継続も選択肢
エコキュートが向かない家もあります。代表は、ヒートポンプユニットを置く場所がない家です。マンションの屋内収納に電気温水器がある場合や、隣家との距離が近く運転音の問題を避けられない場合は、エコキュートにこだわる必要はありません。
この場合、電気温水器から電気温水器への交換が現実的な選択になります。コロナの公式サイトでは、UWH-30X1N2U(1〜3人用)が547,800円、UWH-37X1N2U(2〜4人用)が611,600円(メーカー希望小売価格・税込)で掲載されています。ただし電気温水器は給湯省エネ2026事業の補助対象機器ではないので、補助は使えません。
注意したいのは、コロナの標準圧力型の一部が受注生産品で納期3ヶ月とされている点です。故障してから電気温水器を選ぶと、お湯が使えない期間が長引くおそれがあります。
「エコキュートを置けるかどうか」の判断は、業者によって答えが分かれることがあります。1社に「置けない」と言われても、ヒートポンプユニットを離して置く方法で解決できる場合があるので、2社以上に現地を見てもらうことをおすすめします。
昼間に家にいる・太陽光がある家は「おひさまエコキュート」も比較
在宅勤務などで昼間の在宅時間が長い家や、太陽光発電を載せている家は、夜に沸かす従来型だけでなく、昼間に沸き上げる考え方も比較対象になります。給湯省エネ2026事業でも、基本要件に「おひさまエコキュート」が明記されています。
理由は、補助の要件そのものが「昼間に沸き上げをシフトする機能」を重視している点にあります。天気予報や日射量予報と連動して昼に沸き上げる機能が基本要件に含まれているのは、太陽光の電気を給湯に使う流れを国が後押ししているからです。
太陽光のある家で夜間沸き上げだけに設定していると、昼の余った電気を安く売り、夜に電気を買ってお湯を沸かす形になります。売電単価が下がった今は、昼の電気を自宅の給湯に回したほうが有利になる場面があります。
ただし、どちらが得かは太陽光の容量、売電単価、昼間の天候によって変わります。業者に試算を頼むときは、夜間沸き上げと昼間沸き上げの両方のパターンを出してもらい、自分の家の条件で比べてください。
実は「お湯をあまり使わない家」ほど急ぐ理由は小さい
意外と知られていないのが、エコキュートへの交換で得をしやすいのは「お湯をたくさん使う家」だという点です。電気代の差は効率の差から生まれるので、使う湯量が多いほど差額も大きくなり、少ないほど差額も小さくなります。
メーカーの試算は、JIS C 9220で定められた年間給湯負荷を前提にしています。一人暮らしや、シャワー中心で湯船にほとんどつからない家では、実際の給湯負荷がこの前提より小さく、差額も試算より小さくなると考えられます。
こうした家で、まだ使える電気温水器を早めに交換する理由は、電気代よりも「故障時に慌てないこと」のほうが中心になります。逆に、家族が多く毎日湯船を張る家では差額が大きくなりやすく、交換を前倒しする意味が強くなります。
判断のコツは、今の給湯の電気代を把握することです。深夜電力の別契約がある家なら、その検針票の金額がほぼ給湯の電気代です。この金額が大きいほど、交換で縮む金額も大きいと考えてよいでしょう。
まとめ
最初の一歩は、検針票を出して今の契約に「深夜電力」があるかを確かめ、家の外でヒートポンプユニットを置けそうな場所を2か所探してみることです。この2つが分かれば、業者の見積もりを比べる準備が整います。
※補助金・電気料金の数値は2026年9月時点の公式情報にもとづくもので、変更される場合があります。最新情報は公式サイトでご確認ください。

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