冬になると窓際だけひんやりする、朝になるとガラスがびっしょり濡れている、暖房の設定温度を上げても足元が温まらない。こうした悩みの原因は、多くの場合「窓」にあります。壁や天井には断熱材が入っていますが、窓はガラスとサッシだけの薄い部材です。とくに昔ながらのアルミサッシに1枚ガラスを組み合わせた窓は、家の中で熱がもっとも出入りしやすい場所になっています。
結論から言うと、内窓断熱は「今ある窓を残したまま、室内側にもう1枚窓を足す」ことで、窓の熱の通しやすさを示す熱貫流率を大きく下げる方法です。日本サッシ協会の技術資料では、アルミ枠の単板ガラス窓が6.51、その内側に樹脂枠の複層ガラス内窓を足した二重窓が2.00と示されています。工事はメーカー公式で1窓あたり約60分が目安とされ、住みながら施工できます。
ただし、結露が完全になくなるわけではなく、費用の組み立て方や補助金の条件にも見落としやすい点があります。この記事では、内窓が効く仕組みを数字で確かめたうえで、結露・防音・費用・2026年度の補助金・製品選びとDIYまで、売り手の立場に立たずに整理します。
・内窓で断熱性能が上がる仕組みと、熱貫流率6.51→2.00という数字の意味
・結露が「減る場所」と「残る場所」、その理由と対策
・1窓あたりの費用相場と、外窓交換との使い分け
・2026年度の補助金(先進的窓リノベ2026事業)のグレードと申請の注意点
内窓断熱とは?「窓をもう1枚」で熱の通り道が変わる仕組み

既存の窓は外さない。室内側に「もう1枚」足すリフォーム
内窓とは、今ある窓の室内側に新しい窓をもう1枚取り付け、窓を二重構造にするリフォームです。既存の窓を撤去したり交換したりはせず、そのまま残した状態で内側に枠とガラスを追加します。外壁や外側のサッシには手を付けないため、工事は室内側だけで完結します。
なぜこれで断熱になるのかというと、外窓と内窓の間に「空気層」が生まれるからです。熱は温度の高い側から低い側へ移動しますが、間に動きにくい空気の層が挟まると、その移動にブレーキがかかります。冬なら室内の暖かさが外へ逃げにくくなり、夏なら外の熱が入りにくくなります。
よくある誤解は「内窓=防音用の特殊な窓」というイメージです。実際には断熱・結露軽減・遮音・紫外線カットをまとめて改善する工法で、目的が断熱であっても防音であっても、基本の構造は同じです。
自分の家に向くかどうかを見極める第一歩は、今の窓の構成を確認することです。アルミ枠で1枚ガラスの窓であれば、内窓を足したときの改善幅が大きくなります。すでに樹脂枠の複層ガラス窓が入っている家では、改善幅は小さくなると考えておきましょう。
効いているのは「空気層」と「樹脂の枠」の2つ
内窓の断熱効果は、大きく分けて2つの要素で決まります。1つは先ほどの空気層、もう1つは内窓の「枠の素材」です。市販の主要な内窓は枠が樹脂(塩ビなど)でできており、この樹脂がアルミに比べて熱をほとんど伝えません。
窓の熱の逃げ方を考えるとき、ガラスばかりに目が行きがちですが、枠も熱の通り道です。アルミ枠は熱を伝えやすいため、冬には枠そのものが冷やされ、そこに触れた室内の空気が冷えて結露が起きます。内窓の枠を樹脂にすると、室内側に露出する枠が冷えにくくなり、枠まわりの冷気や結露も抑えられます。
ありがちな失敗は、ガラスの性能だけを比べて枠の素材を気にしないことです。高性能なガラスを選んでも、枠が熱を通せば窓全体の数値は下がり切りません。窓全体の性能は、ガラスと枠を合わせた「熱貫流率」で見るのが基本です。
熱貫流率(Uw値・U値)=窓の内外に1℃の温度差があるとき、窓1㎡あたりを何ワットの熱が通り抜けるかを示す数値。単位はW/(㎡・K)。数字が小さいほど熱を通しにくく、断熱性能が高いことを表します。補助金のグレード判定にもこの値が使われます。
見積もりやカタログを比べるときは、「ガラスの種類」ではなく「窓全体の熱貫流率」が書かれているかを確認すると、製品同士を同じ物差しで比べられます。
実はペアガラス交換より内窓のほうが断熱で有利な理由
意外と知られていないのですが、「1枚ガラスをペアガラス(複層ガラス)に替える」よりも「内窓を足す」ほうが、断熱・防音ともに効果が高くなるとされています。真空ガラスメーカーの解説でも、内窓と外窓の間に空気層ができるため、ペアガラス1枚に交換するより断熱性能が上がると説明されています。
理由は空気層の「厚み」にあります。ペアガラスは1つのサッシの中に2枚のガラスを組み込んだもので、ガラスとガラスの間の空気層は薄く作られています。一方、内窓は窓と窓の間に大きな空気の層ができます。さらに、ペアガラス交換では既存のアルミ枠が残るのに対し、内窓なら室内側に樹脂枠が加わる点も効いてきます。
ここで注意したいのは、「二重窓」「内窓」「二重サッシ」は同じ意味で使われる言葉だという点です。一方「ペアガラス」はまったく別物です。広告やチラシでこれらが混在していると、比較しているつもりで別の工事を比べてしまうことがあります。
見積もりを依頼するときは、「窓を2重にする工事か」「ガラスだけを替える工事か」をはっきり確認しましょう。同じ「断熱リフォーム」でも、工事の中身で得られる性能は変わります。
1窓約60分。住みながら工事できるのが現実的なメリット
内窓の工事時間は、LIXILの公式サイトで1窓あたり約60分と案内されています。情報サイトでも1窓あたり半日~1日程度で完了するケースが多いとされ、家具を大きく動かしたり、長期間仮住まいしたりする必要はありません。
工事が短く済むのは、既存の窓枠の内側に新しい枠を固定し、障子(ガラスの入った可動部分)をはめ込むだけの構造だからです。外壁を壊さないので防水処理も不要で、雨の日でも作業できます。対応する窓も引違い窓・FIX窓(はめ殺し窓)・掃き出し窓と幅広くなっています。
失敗しやすいのは、窓枠の奥行きが足りない家です。内窓の枠を取り付けるには一定の奥行きが必要で、足りない場合はふかし枠(枠を室内側に延長する部材)が必要になり、仕上がりの見た目や費用が変わります。
マンションの場合、内窓は室内側の工事なので専有部分の工事として認められやすいとされています。とはいえ管理規約の確認は必要です。工事を決める前に、管理組合への届け出が要るかどうかを確認しておきましょう。
熱貫流率6.51→2.00は何を意味する?窓の数字を読み解く
窓は家の中で熱が出入りしやすい「穴」
アルミ枠に1枚ガラスを組み合わせた窓の熱貫流率は、日本サッシ協会の技術資料で6.51 W/(㎡・K)とされています。窓の内外に1℃の温度差があると、1㎡あたり6.51ワットの熱が通り抜ける計算です。
この数字が大きな意味を持つのは、冬の室内と屋外の温度差が1℃では済まないからです。温度差が大きくなるほど、通り抜ける熱も比例して増えます。暖房で温めた熱が窓からどんどん逃げていけば、暖房機器は設定温度を保つために運転を続け、その分だけ電気代やガス代がかさみます。
よくある失敗は、「部屋が寒いのは暖房機器の能力不足だ」と考えて、より大きな暖房機器に買い替えてしまうことです。熱の逃げ道がそのままなら、大きな機器を入れても逃げる熱が増えるだけで、窓際の冷えや足元の寒さは残ります。
自分の家の窓がどれくらい熱を逃がしているかの目安は、冬の朝に窓ガラスやサッシに触れてみることです。枠やガラスが冷たく、結露が出ているなら、その窓は熱の出入口になっていると考えてよいでしょう。
構成別の熱貫流率を並べると見える差
窓の断熱性能は、枠の素材とガラスの種類の組み合わせで決まります。日本サッシ協会の資料に掲載された代表値と、2026年度の補助金基準を並べると、内窓の位置づけがはっきりします。
| 窓の構成 | 熱貫流率 W/(㎡・K) | 位置づけ |
|---|---|---|
| 金属製建具+単板ガラス | 6.51 | 築年数の古い家に多い構成 |
| 金属製建具+一般複層ガラス | 4.07 | ガラスだけ複層にした状態 |
| 金属製建具+Low-E複層ガラス(ガス入) | 2.91 | 枠がアルミのままの上限に近い |
| 樹脂製建具+Low-E複層ガラス | 2.15 | 窓ごと交換した場合の一例 |
| 二重窓(外アルミ単板+内樹脂複層) | 2.00 | 既存窓に内窓を足した代表例 |
| 樹脂製建具+Low-E三層ガラス | 1.60 | 高断熱窓の一例 |
| 補助金Sグレード基準 | 1.5以下 | 先進的窓リノベ2026事業 |
| 補助金P(SS)グレード基準 | 1.1以下 | 先進的窓リノベ2026事業 |
出典:日本サッシ協会 技術資料(表4-2-1a・表4-5)、環境省 先進的窓リノベ2026事業
この表から読み取れるのは、アルミ枠のままではガラスをどれだけ良くしても2.91あたりで頭打ちになる一方、単板窓を残したまま樹脂の複層内窓を足すだけで2.00まで下がるということです。既存窓を活かす内窓が「費用に対して効きやすい」と言われる根拠はここにあります。
ただし2.00は代表例であり、補助金のSグレード基準(1.5以下)には届きません。補助金を使うなら、内窓側のガラスをより高性能なものにする必要がある点は押さえておきましょう。
樹脂枠はアルミの約1,000分の1しか熱を伝えない
内窓の枠に樹脂が使われる理由は、熱伝導率の差にあります。樹脂の熱伝導率はアルミの約1,000分の1とされ、この差がそのまま断熱性能の差につながります。
熱伝導率は「素材そのものがどれだけ熱を伝えやすいか」を示す値です。アルミは加工しやすく丈夫で、コストも樹脂サッシのおよそ半分とされるため、かつての日本の住宅で広く使われてきました。しかし熱を伝えやすいため、冬は外の冷たさが枠を通って室内側まで届き、枠の表面で結露が起きやすくなります。現在は新築・リフォームともに、樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシが主流です。
ありがちな失敗は、内窓を選ぶときに「アルミ製の内窓のほうが丈夫で長持ちしそう」と考えることです。寿命の目安ではアルミ製のほうが長いとされますが、断熱を目的にするなら樹脂製を選ぶのが筋です。目的と素材がずれると、費用をかけても期待した効果が出ません。
なお、木製サッシは熱伝導率が樹脂よりもさらに低く、断熱性は高いものの価格も高くなります。一般的な住宅の内窓では、性能と価格のバランスから樹脂製が選ばれることが大半です。

冬の朝、リビングのアルミサッシの枠を触ると氷のように冷たく、下枠には水がたまっている。エアコンの設定温度を上げても窓際だけ寒い。築20年前後の家に住んでいれば、…
「数字が低い内窓」を選ぶ前に考えたいこと
熱貫流率は低ければ低いほど断熱性能が高くなりますが、すべての窓に最高水準を求める必要はありません。優先すべきは、家全体で熱が多く逃げている窓から手を付けることです。
理由は、熱の逃げる量が「熱貫流率×窓の面積×温度差」で決まるからです。同じ性能の窓でも、面積の大きい掃き出し窓は小さな腰高窓より多くの熱を逃がします。小さな窓を高性能にするより、大きな窓を一段階改善するほうが、家全体の熱の損失を減らす効果は大きくなります。
よくある失敗は、見積もりの段階で全部の窓に一番高いガラスを提案され、予算オーバーになって工事自体をあきらめてしまうケースです。逆に、予算を気にしすぎて小さな窓だけに付け、肝心のリビングの大窓を後回しにすると、体感の変化はほとんどありません。
判断のコツは、①リビングや寝室など長時間過ごす部屋、②面積の大きい窓、③結露がひどい窓、の順で優先順位をつけることです。そのうえで補助金の対象グレードに合わせてガラスを選ぶと、費用と効果のバランスが取りやすくなります。
結露はどこまで減る?内窓でも「窓と窓の間」が濡れる理由

結露は「表面温度が露点を下回る」と起きる
結露とは、空気中の水蒸気が冷やされて水に変わる現象です。空気が含むことのできる水蒸気の量は温度によって決まっていて、温度が下がるほど少なくなります。水蒸気を含みきれなくなる温度を「露点」と呼び、窓ガラスやサッシの表面温度が周囲の空気の露点より低くなると結露が発生します。
冬の窓で結露が起きるのは、室内の暖かく湿った空気が、外気で冷やされたガラスに触れるからです。空気の温度が下がった分だけ含める水蒸気量が減り、含めなくなった水分がガラス表面に水滴として付きます。温度が低いほど空気が含める水蒸気量は少なくなるため、同じ湿度でも冷たい窓ほど結露しやすくなります。
この仕組みから、結露対策の方向は3つに絞られます。窓の表面温度を上げる、室内の空気の露点を下げる(湿度を下げる)、湿った空気が冷たい部分に届かないようにする、のいずれかです。
内窓はこのうち「室内側の窓の表面温度を上げる」役割を担います。内側のガラスと樹脂枠が室温に近い温度を保つため、室内側で結露が起きにくくなるわけです。
室内側の結露は減るが、窓間の結露は残る
内窓を付けると、室内側のガラスの結露は大幅に軽減されます。一方で、外窓と内窓の間、つまり外側の単板ガラスの室内側には結露が残ることがあります。内窓は結露を「完全に防ぐ」ものではなく「軽減する」ものだと理解しておくことが大切です。
窓間で結露が起きる理由は、外窓の単板ガラスが外気でしっかり冷えたままだからです。内窓を付けても、外窓は外気にさらされたままで表面温度は低いままです。内窓の隙間からわずかに湿った空気が入り込めば、冷たい外窓に触れて水滴になります。内窓を付けたことで室内側に水滴が見えなくなり、窓間の結露に気付きにくくなる点にも注意が必要です。
ありがちなのは、内窓を付けたのに「結露が消えない」と施工不良を疑うケースです。窓間の結露はある程度発生しうるもので、それ自体は異常とは限りません。
見極めの目安は、室内側のガラスや枠に結露が出ているかどうかです。室内側がほとんど乾いていて窓間だけが濡れるなら、内窓は想定どおりに働いています。室内側にも結露が目立つ場合は、湿度が高すぎるか、内窓のガラス性能や取り付けに問題がないかを施工店に相談しましょう。

断熱リフォームを調べていると、内窓(二重窓)はほぼ必ず「まずここから」とすすめられます。工事は1窓あたり1時間ほどで終わり、壁を壊さず、補助金の対象にもなる。た…
窓間結露を放置してカビを招く失敗
内窓で起きやすい失敗が、窓間の結露に気付かず、または放置して、外窓のサッシやゴムパッキンにカビを生やしてしまうパターンです。
原因:外窓(単板ガラス)は冷えたまま。内窓を閉め切ったまま開ける機会が減り、窓間の水滴とホコリがたまってカビの養分になる。
対策:冬場は内窓を時々開けて外窓の水滴を拭き取る。窓間にホコリをためないよう清掃する。室内の湿度を上げすぎないことが根本対策になります。
窓のカビは、結露と湿度に、窓周辺のホコリやカーテンの繊維が組み合わさって発生します。カビは暖かく湿度の高い環境を好むため、湿った窓間にホコリがたまると発育条件がそろってしまいます。
とくに注意したいのは、内窓を付けたことで「窓は安心」と思い込み、室内の加湿を強めてしまうケースです。室内の湿度が高いほど窓間に入り込む水蒸気も増えるため、窓間結露は悪化します。内窓は結露を減らす道具ですが、湿度管理とセットで初めて効果を発揮すると考えましょう。
換気・湿度・カーテンで仕上げる
内窓の効果を引き出すには、室内の湿気を減らす工夫を組み合わせることが近道です。基本は換気で、湿気がこもらないよう1回10分程度を目安に、窓を2ヶ所開けて空気の通り道を作る方法が紹介されています。
湿気の発生源にも目を向けましょう。料理中や部屋干しのときは、窓を開けたり換気扇を回したりして湿気を外へ逃がします。暖房器具は、燃焼時に水蒸気を出すタイプより、水蒸気を発生させないタイプのほうが結露対策には有利です。
見落としやすいのが窓まわりの物の置き方です。結露の多い窓の前に観葉植物や洗濯物を置くと、植物の蒸散や洗濯物の水分が湿気を増やし、カビのリスクを高めます。厚手のカーテンで窓を覆い切ると、窓とカーテンの間に湿った空気がこもりやすくなるため、通気性のよい素材を選ぶかレースカーテンを組み合わせるのが無難です。
判断のコツは、「内窓で表面温度を上げる」「換気と発生源の管理で湿度を下げる」の両輪で考えることです。どちらか片方だけでは結露は残りやすく、両方がそろって初めて窓まわりが乾いた状態を保ちやすくなります。
防音・冷暖房費・紫外線…断熱以外に変わること
外窓のみ約-25dBが、内窓で約-40dBに
内窓には断熱と同時に防音効果があります。窓の防音専門店の解説では、一般的な外窓のみの場合は-25dB程度、外窓に内窓を加えると-40dB程度の防音効果が見込まれるとされています。差はおよそ15dBです。
防音効果が上がるのも、断熱と同じく空気層のおかげです。音は空気の振動として伝わりますが、窓と窓の間に空気層があると、外窓を通過した振動がもう1枚の窓で再び遮られます。2枚の窓がそれぞれ独立して振動を受け止めるため、1枚の窓より音が伝わりにくくなります。
快適な室内の音環境の目安は、寝室で40dB、リビングで50dBとされています。幹線道路沿いや線路の近くなど、夜間の騒音で眠りが浅くなっている家では、内窓で体感が変わる可能性があります。
注意したいのは、防音性能は窓だけで決まるわけではない点です。換気口や壁の薄い部分から音が入っている場合、窓だけ対策しても期待ほど静かになりません。防音を主目的にするなら、音がどこから入っているかを施工店と一緒に確認し、遮音性能を示すT等級(T-1〜T-4)やdB表示で製品を比べると判断しやすくなります。
冷暖房費15~30%減の目安はどう読むべきか
内窓による電気代の変化については、リフォーム情報サイトで「冷暖房費が15~30%下がり、主要4窓を施工した場合、年間約2~3万円の削減が目安」と紹介されています。ただしこれは一つの試算例で、どの家にも当てはまる数字ではありません。
削減額が家ごとに大きく変わるのは、前提条件が違うからです。住んでいる地域の寒さ、暖房の使用時間、施工前の窓の構成、施工する窓の数と面積によって、窓から逃げていた熱の量そのものが変わります。もともと冷暖房をあまり使わない家では、削減できる金額にも限りがあります。
ありがちな失敗は、この目安を「確実に安くなる金額」と受け取り、工事費を何年で回収できるかを単純に割り算してしまうことです。実際には光熱費の単価も年ごとに変わるため、回収年数は前提の置き方でいくらでも変わります。
判断のコツは、電気代の削減だけで元を取ろうと考えないことです。窓際の寒さ・結露・騒音といった「毎日の不快感が減ること」を含めて価値を判断すると、後悔しにくくなります。暖房の設定温度を上げずに済むようになる、という間接的な効果もあります。
UVカットと防犯は「おまけ」と考える
内窓には紫外線カットと侵入抑止の効果もあるとされています。ガラスが1枚増えることで、家具や床の日焼け(褪色)を防ぐ効果や、窓が2層になることで侵入に時間がかかる防犯上の効果が期待できます。
紫外線カットの効果は、選ぶガラスの種類によって差が出ます。Low-E複層ガラスなどは紫外線を抑える性能を持つものが多く、日当たりのよい南向きの部屋で家具やフローリングの色あせが気になる場合には、副次的なメリットになります。
防犯面では、窓を破って侵入するには外窓と内窓の2枚を突破する必要があるため、侵入に手間取らせる効果があります。ただし、内窓はあくまで断熱・防音のための製品で、防犯専用のガラスや補助錠と同等の性能を持つわけではありません。
こうした効果は「あればうれしいおまけ」と位置づけ、内窓を選ぶ主な理由は断熱・結露・防音に置くのが現実的です。防犯を重視するなら、防犯合わせガラスの選択肢があるか、錠の仕様はどうかを別途確認しておきましょう。
内窓が向かない家・効果が出にくい家
内窓は多くの家で効果を発揮しますが、向かない家や効果が出にくいケースもあります。導入前にデメリットも把握しておくことで、後悔を防げます。
このほか、窓枠の奥行きが足りない家や、窓の前に造作家具があって内窓の枠を付けられない家では、追加の部材や工事が必要になります。現地調査で取り付けの可否と追加費用を確認してから判断しましょう。
内窓断熱の費用はいくら?1窓の相場と外窓交換との分かれ目
1窓5~15万円程度。費用は本体と工賃の足し算
内窓の費用は、1窓だけの施工であれば5~15万円程度で工事できるケースが一般的とされています。この金額には、内窓の本体価格(材料費)と施工費(工賃)の両方が含まれています。
費用の内訳を分けて見ると、施工費の相場は1窓あたり約3~7万円といわれています。残りが窓本体とガラスの価格です。見積書を見るときは、本体価格と施工費が分けて書かれているかを確認すると、他社の見積もりと比べやすくなります。
複数の窓をまとめて施工すると、1窓あたりの費用が下がる傾向があります。情報サイトでは3窓あわせて約15~25万円程度という目安も紹介されていますが、これは施工店の割引の考え方によって変わるため、あくまで参考値として見てください。
ありがちな失敗は、1社の見積もりだけで相場を判断してしまうことです。同じ窓・同じ製品でも、施工店によって本体の仕入れ値や施工費の設定は異なります。少なくとも2〜3社から見積もりを取り、本体と工賃を分けて比較すると、極端に高い・安い見積もりを見抜きやすくなります。
腰高窓と掃き出し窓で数倍違う理由
内窓の費用にもっとも大きく影響するのは窓のサイズです。情報サイトの目安では、小サイズ(腰高窓)で3~5万円、中サイズで6~10万円、大サイズ(掃き出し窓)では複層ガラスを選ぶと12~20万円以上になるとされています。小さな腰高窓と大きな掃き出し窓では、価格が数倍異なります。
サイズで価格が大きく変わるのは、ガラスの面積と枠の長さがそのまま材料費に反映されるからです。さらに大きな窓ほどガラスが重くなり、枠にも強度が求められます。掃き出し窓は床まである大きな窓なので、開け閉めの使い勝手も含めた部材が必要になります。
ここで押さえておきたいのは、費用がかさむ大きな窓ほど、熱の逃げる量も多いということです。予算を抑えようとして掃き出し窓を後回しにすると、費用の割に体感の変化が小さくなる失敗につながります。
判断のコツは、見積もりを窓ごとに出してもらい、「サイズ×ガラスの種類」の組み合わせで比べることです。リビングの掃き出し窓は性能の高いガラス、使用頻度の低い部屋の小窓は標準的なガラス、というように窓ごとに配分すると、全体の予算を調整しやすくなります。

「内窓を1枚入れるだけなのに、なぜ見積もりが10万円を超えるのか」——二重窓の費用を調べ始めた人が最初にぶつかるのが、この金額の違和感です。カーテンやシートなら…
内窓と外窓交換、どちらを選ぶべきか
窓の断熱リフォームには、内窓のほかに外窓交換(既存の窓を撤去して新しい窓に替える工事)があります。既存の枠を活かして新しい窓を被せるカバー工法もこちらに含まれます。両者の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 内窓 | 外窓交換(カバー工法) |
|---|---|---|
| 工事の範囲 | 既存窓を残し、室内側のみ | 既存窓を撤去(枠は活用) |
| 工期の目安 | 1窓あたり半日~1日 | 1日~数日 |
| 費用の差 | 相対的に安い | 5~6万円高く、トリプルガラスなら10万円以上高くなる場合も |
| 補助額の差 | 相対的に低い | 4万~10万円ほど高い |
| マンション | 専有部分扱いで認められやすい | 管理規約で制限される場合がある |
| 開け閉め・掃除 | 2回・2枚分に増える | 1回・1枚分のまま |
出典:リフォーム情報サイト各種の解説をもとに整理。費用差は窓の条件で変動します
費用・工期・マンションでの通りやすさでは内窓が有利で、開け閉めの手間や補助額では外窓交換が有利です。情報サイトでは、大きな掃き出し窓だけをカバー工法にして、その他の窓は内窓にする「ミックス施工」も効率的な選択肢として紹介されています。出入りの多い窓は外窓交換、それ以外は内窓、と窓ごとに使い分けるのが現実的です。
ガラスの種類で価格も性能も階段状に上がる
内窓のガラスは、単層<複層<Low-E複層<真空ガラスの順で価格が上がります。性能もおおむね同じ順で上がるため、ガラス選びは「どこまでの性能に、いくら払うか」の判断になります。
ガラスの選び方が費用を左右するのは、補助金の対象グレードと直結するからです。後で詳しく触れますが、2026年度の補助金では窓全体の熱貫流率がSグレード(1.5以下)かP(SS)グレード(1.1以下)に届かないと対象になりません。単層ガラスの内窓は安く付けられますが、補助金の対象からは外れやすくなります。
ありがちな失敗は、「安い単層ガラスの内窓でも二重になれば十分」と考えて全窓を単層で揃え、結果として補助金をまったく使えなかったというケースです。補助金を前提にすれば、ガラスを1段階上げた分の差額が補助で相殺される可能性もあります。
判断のコツは、見積もりの段階で「このガラス構成で、補助金のどのグレードに該当するか」を施工店に確認することです。同じ窓でガラス違いの見積もりを2パターン出してもらい、補助金を差し引いた実質負担で比べると、選びやすくなります。
2026年度の補助金は「S」か「P/SS」の2択になった
先進的窓リノベ2026事業で内窓はAグレード対象外
2026年度、内窓の設置に使える国の主な補助金は、環境省の先進的窓リノベ2026事業です。対象となる工事は内窓の新設と既存内窓の交換で、窓全体の熱貫流率によって補助額のグレードが決まります。
2026年度の内窓で押さえておきたいのは、グレードが2段階になっている点です。熱貫流率1.1以下がP(SS)グレード、1.5以下がSグレードで、それより下のAグレードは内窓では対象外になりました。Aグレードが残っているのは外窓交換のみです。
この変更が意味するのは、「そこそこの性能の内窓で補助金をもらう」ことが難しくなったということです。前の章で見たとおり、アルミ単板の外窓に樹脂複層の内窓を足した代表例は2.00で、Sグレードの基準に届きません。補助金を使うには、Low-E複層ガラスなど一定以上の性能を持つ内窓を選ぶ必要があります。
判断のコツは、製品カタログや見積書に「どのグレードに該当するか」が明記されているかを確認することです。グレードの判定は窓とガラスの組み合わせで決まるため、同じ製品名でもガラスが違えば対象外になることがあります。
補助額はサイズとグレードで決まる
補助額は、窓のサイズ区分とグレードの組み合わせで決まります。事業公式サイトの内窓設置ページによると、戸建て住宅の場合、大サイズの窓でP(SS)グレードが89,000円、Sグレードが52,000円、特大サイズではP(SS)グレードが140,000円、Sグレードが76,000円です(2026年度時点)。
サイズとグレードで額が大きく変わるのは、この事業が「熱の損失を減らす効果」に応じて補助する設計になっているからです。面積の大きい窓ほど熱の損失も大きく、性能の高い窓ほど損失を減らす効果が大きいため、補助額もそれに比例して設定されています。
補助の上限は1戸あたり100万円、1回の申請は合計5万円以上が条件です。小サイズ・中サイズの窓や集合住宅向けの補助額は区分ごとに異なるため、事業公式サイトの補助額表で確認してください。
ここからわかるのは、大きな窓ほど補助の恩恵も大きいということです。前の章で「大きな窓から優先する」と書いたのは、断熱効果だけでなく補助額の面でも理にかなっているからです。見積もりの際は、窓ごとのサイズ区分と補助額を一覧で出してもらうと、実質負担が把握しやすくなります。
申請は登録事業者経由。着手日と期限を先に確認する
先進的窓リノベ2026事業の申請は、事業に登録した「窓リノベ事業者」を通じて行います。施主が自分で直接申請することはできません。対象となるのは2025年11月28日以降に着手した工事で、申請は遅くとも2026年12月31日までとされています。
事業者経由の仕組みになっているのは、工事内容や使用した製品がグレード基準を満たしているかを、事業者が確認・証明する必要があるからです。施主にとっては手続きの手間が減る反面、登録事業者でない施工店に依頼すると補助金を使えなくなります。
このほか、内窓の設置位置は既存窓から50cm以内、並列に設置する枚数は1窓あたり3枚以内といった取り付け条件もあります。既存窓に対して平行でない設置や、奥行きの深すぎる設置は対象外になるため、出窓などで内窓を付ける場合は事前に確認しておきましょう。
小さな窓1つで申請できない・予算終了で間に合わない失敗
補助金で起きやすい失敗は、制度の条件を知らずに工事の計画を立ててしまうことです。代表的なのは次の2つです。
失敗1:小さな窓だけで申請しようとする
原因は「1申請5万円以上」の条件。トイレや洗面所の小窓1つだけでは補助額の合計が届かず、申請自体ができないことがあります。対策は、居室の窓と組み合わせて合計額を満たすこと。
失敗2:予算終了に間に合わない
原因は、年度の予算上限に達すると受付が早期に終了する仕組み。対策は、契約前に事業公式サイトで予算の消化状況を確認し、余裕を持って計画すること。
予算の消化状況は、2026年8月30日時点で約20%と公表されていました。この時点では余裕があるように見えますが、窓の断熱需要は寒くなる秋から冬にかけて増える傾向があり、消化のペースが変わる可能性があります。
また、補助金は「必ずもらえる」ものではありません。グレード基準を満たさない製品を選んだ場合や、登録事業者以外に依頼した場合は対象外になります。補助金を前提に予算を組むなら、見積もりの段階で「補助金が使えなかった場合の自己負担額」も確認しておくと安心です。
国の補助金とは別に、自治体が独自の断熱リフォーム補助を設けている場合もあります。お住まいの市区町村の公式サイトで「断熱」「省エネ」「住宅リフォーム」といった言葉で検索し、国の補助金と併用できるかどうかを確認してみてください。
メーカー品かDIYか——製品の選び方と寿命
主要3製品の立ち位置と、確認しておきたい点
施工店が扱う内窓は、大手サッシメーカーの製品が中心です。代表的なものに、LIXILの「インプラス」、三協アルミの「プラメイクEII」、YKK APの「プラマードU」があります。いずれも枠は樹脂製で、ガラスの種類を選べる仕組みです。
インプラスは、複層ガラスやLow-E複層ガラスに対応し、デザインを重視したインプラス for Renovationや、ユニットバス・在来浴室の両方に対応した浴室仕様などのバリエーションがあります。取付時間は1窓あたり約60分と公式で案内されています。
プラメイクEIIは、Sグレードの1.5以下に対応するほか、真空ガラス「スペーシアクール」を組み合わせるとP(SS)グレードの1.1以下に届くとされています。2026年1月に価格改定版のカタログが発行されています。
プラマードUは、真空ガラスを組み込んだ仕様で熱貫流率1.1とされていますが、YKK APの公式サイトでは生産最終期限が2026年6月30日と案内されていました。すでにその期限を過ぎているため、検討する場合は現行の後継製品や仕様をメーカー・施工店に必ず確認してください。
製品選びでは、メーカー名よりも「その窓に付けたときのグレード」「浴室など設置場所への対応」「窓枠の奥行きに収まるか」を基準に比べると、失敗しにくくなります。
DIY簡易内窓は5,000~1万円程度から
費用を抑えたい場合は、DIYで取り付ける簡易内窓という選択肢もあります。ポリカーボネートやプラダン(プラスチック段ボール)を使った簡易型は、価格が5,000~1万円程度、樹脂サッシと複層ガラスを使った本格型は3万円~の価格帯とされています。
DIYの最大の利点は、自分で取り付けるため施工費がかからないことです。簡易型は軽くて加工しやすく、DIY初心者でも1窓あたり1~2時間で取り付けられるとされています。賃貸住宅で大がかりな工事ができない場合や、まず1部屋で試してみたい場合には手軽な選択肢です。
ただし、簡易型は製品寿命・断熱性能ともに本格型より劣ります。ガラスではなく樹脂板を使うため、透明度が下がったり、経年で変形したりすることもあります。また、DIYで取り付けた内窓は、国の補助金の対象にはなりません。補助金は登録事業者が施工した工事が条件だからです。
判断のコツは、「どのくらいの期間、どの程度の性能を求めるか」で選ぶことです。数年しのげればよい、賃貸で原状回復が必要、という場合は簡易型。長く住む持ち家で、結露や寒さを根本から改善したい場合は、補助金を使ったメーカー品の施工が向いています。

冬の朝、暖房を入れているのに窓際だけ足元が冷える。夏は西日が入る部屋のエアコンがいつまでも効かない。その原因の多くは壁でも屋根でもなく、窓です。だから「内窓を自…
寿命は枠15~20年、ガラス10~15年が目安
内窓の寿命は素材によって異なり、樹脂製内窓は約15~20年、アルミ製内窓は約20~30年、木製内窓は約10~20年が目安とされています。複層ガラス(ペアガラス)の寿命は約10~15年です。
枠とガラスで寿命が違うのは、劣化の仕組みが異なるからです。枠は紫外線や温度変化で少しずつ劣化しますが、複層ガラスは2枚のガラスの間の密閉が長い年月で弱まり、中の空気層のガスが抜けると断熱性能が下がります。ガス抜けが起きると、ガラスとガラスの間(複層ガラスの内部)に結露が発生するのが一つのサインです。
交換を検討すべき兆候としては、複層ガラスの内部が曇る・結露する、建付けが悪くなって開け閉めが重い、パッキン(ゴムの部品)が硬くなって隙間ができる、といった点が挙げられます。
寿命を延ばすには、定期的な清掃と数年ごとのパッキン交換が有効です。パッキン交換は比較的簡単な作業で、プロに依頼しても数千円程度とされています。施工店によっては保証期間内に無料でメンテナンスしてくれる場合もあるため、契約時に保証の範囲と期間を確認しておきましょう。
家庭のタイプ別:どこから手を付けるか
内窓の選び方は、住まいの状況や目的によって変わります。ここまでの内容を踏まえ、家庭のタイプ別に優先順位を整理しました。
築年数が古い戸建て(アルミ単板窓):改善幅が大きいタイプ。リビングの掃き出し窓から、補助金のSグレード以上で検討する価値があります。
マンション住まい:内窓は専有部分の工事として認められやすい選択肢。管理規約を確認したうえで、結露のひどい北側の部屋から始めるのが現実的です。
賃貸住まい:原状回復が必要なら、DIYの簡易型で窓際の冷えと結露を和らげる方法が向いています。
騒音に悩む家:寝室の窓を優先。防音性能を示すT等級やdB表示を比べて製品を選びましょう。
出入りの多い窓がある家:その窓だけ外窓交換、他は内窓というミックス施工も選択肢です。
どのタイプでも共通するのは、一度に全部の窓を完璧にしようとしないことです。長く過ごす部屋・大きな窓・結露のひどい窓から優先し、補助金の条件(1申請5万円以上)を満たすように組み合わせていくと、費用と効果のバランスが取りやすくなります。
まとめ|内窓断熱は「大きな窓」から始めるのが近道
最初の一歩は、家の中でいちばん寒い部屋の窓がアルミ枠の1枚ガラスかどうかを確かめることです。そのうえで登録事業者2〜3社に、窓ごとのグレードと補助額が入った見積もりを依頼してみてください。
※補助金の額・条件・受付状況は2026年度時点の情報です。最新情報は事業公式サイトでご確認ください。

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