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蓄電池は災害時に何時間もつ?10kWhで約42時間の計算式と72時間の備え方

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台風や地震で電気が止まった夜、「家に蓄電池があれば冷蔵庫も照明も朝まで大丈夫なのか」と気になりますよね。業者の広告では「停電でも安心」と書かれていますが、実際に何時間もつのか、どの部屋のコンセントが使えるのかまで説明しているものは多くありません。

先に結論をお伝えすると、蓄電池が災害時に何時間もつかは「実効容量÷使う家電の消費電力」という割り算ひとつで決まります。照明・テレビ・冷蔵庫・スマホ充電に絞れば10kWhで約42時間。一方、夏にエアコンまで動かすと7,000Whでも約7.7時間で尽きます。つまり「容量」と「停電中に何を動かすか」の組み合わせで、同じ蓄電池でも半日から3日以上まで結果が変わるのです。

この記事では、停電時に蓄電池の中で何が起きているかという仕組みから、72時間を乗り切るための容量の逆算、全負荷型と特定負荷型の違い、ポータブル電源やV2H、エコキュートのタンクの水まで含めた備え方を、売り手の立場に立たずに数字で整理します。

💡 この記事でわかること

・停電時に蓄電池が何時間もつかを自分で計算する方法
・72時間(3日間)を乗り切るための容量の目安と節電の組み立て方
・全負荷型と特定負荷型、ポータブル電源、V2Hの向き不向き
・2026年度の国の補助金の状況と、災害対策として費用をどう考えるか

目次

停電した瞬間、家のバッテリーは何をしているのか

停電した瞬間、家のバッテリーは何をしているのかの解説画像

停電を検知して「自立運転」に切り替わるまでの流れ

家庭用蓄電池は、停電を検知すると電力会社の電線から切り離され、蓄電池だけで家の中に電気を送る「自立運転」に切り替わります。普段は電力会社の電気と並んで動いていますが、停電中に家から電線側へ電気が逆流すると、復旧作業をしている人が感電するおそれがあります。だから切り離してから給電する、という順番になっているわけです。

ここで差が出るのが、切り替え後にどの範囲へ電気を送れるかです。分電盤全体に送れる「全負荷型」なら、停電に気づかないくらいいつもどおりに過ごせます。あらかじめ指定した回路にだけ送る「特定負荷型」なら、使えるコンセントは限られます。

やりがちな失敗は、「蓄電池があるから家じゅう使える」と思い込んだまま停電を迎えることです。特定負荷型の場合、使える部屋を家族が知らなければ、真っ暗な中で使えるコンセントを探すことになります。導入済みの家は、自宅の機種がどちらのタイプか、切り替えは自動か手動かを、取扱説明書で一度確認しておいてください。

単機能型とハイブリッド型で「2日目以降」が変わる

停電が1日で終わるなら、蓄電池の種類による差は小さくて済みます。差がはっきり出るのは2日目以降です。理由は、昼間に太陽光で充電し直せるかどうかにあります。

蓄電池には、太陽光発電と連携しない「単機能型」と、太陽光パネルと一体で動く「ハイブリッド型」があります(ソーラーパートナーズの解説)。単機能型は、停電前に貯めた分を使い切ったら終わりです。ハイブリッド型なら、晴れた日中に太陽光の電気で冷蔵庫を動かしながら蓄電池に貯め、夜にそれを使う、というサイクルを回せます。

ただし、太陽光があっても雨や雪の日が続けば充電量は伸びません。「太陽光があるから何日でも大丈夫」と考えるのは危険で、天気が崩れた前提の容量を持っておく必要があります。太陽光がすでにある家は、パワーコンディショナが停電時の自立運転に対応しているか、蓄電池と連携できるかを確認するのが先です。

📖 用語チェック

自立運転=停電時に電力会社の電線から切り離し、蓄電池や太陽光だけで家に給電する運転モード。
単機能型=太陽光と連携せず、蓄電池の充放電だけを行うタイプ。
ハイブリッド型=太陽光パネルと蓄電池を一体で制御し、太陽光の自家消費を最適化するタイプ。停電が長引いたときに昼間の再充電ができる。

災害時に蓄電池が守れるもの・守れないもの

蓄電池が守れるのは「電気で動くもの」だけです。当たり前に聞こえますが、ここを整理しておかないと備えに穴が開きます。内閣府の停電対策ページでは、足元灯や懐中電灯など停電時に使える照明、調理の手段、暖をとる・涼をとる手段の準備、給水ポンプ停止による断水への備え、医療機器を使う家庭の予備バッテリーを挙げています。

このうち蓄電池が直接カバーできるのは、照明・冷蔵庫・通信機器の充電・一部の冷暖房です。一方、マンションの給水ポンプが止まれば水は出ませんし、ガス管が損傷すればガスは使えません。蓄電池を買ったのに水の備えがゼロ、という家は、停電2日目にトイレで困ることになります。

判断のコツは、停電中に困ることを「電気」「水」「トイレ」「情報」に分け、蓄電池が担当するのは電気と情報だけだと割り切ることです。そのうえで、蓄電池に任せる家電をリストにすると、必要な容量が見えてきます。

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蓄電池は災害時に何時間もつ?答えは割り算ひとつで出る

稼働時間は「容量÷消費電力」、ただし容量は8〜9割で見る

蓄電池で家電が何時間動くかは、「稼働時間(時間)=蓄電池の容量(Wh)÷家電の消費電力(W)」で計算できます(Anker Japanの解説)。単位のWhは「1時間あたり何W使えるか」を表すので、割り算するとそのまま時間が出るわけです。

ここで注意したいのが、カタログに書かれた容量をそのまま使わないことです。蓄電池の中の電気は直流で、家電が使う交流に変換するときに5〜10%程度のロスが出ます。さらに電池を守るため、残量を完全にゼロまでは使わない設計になっています。そのため、定格容量の約80〜90%を「実効容量」として計算するのが基本です。

たとえば定格10kWhの蓄電池なら、実際に使えるのは8〜9kWh前後と見積もります。この1〜2kWhの差は、冷蔵庫を半日以上動かせる量です。計算するときは、必ず定格容量に0.8〜0.9を掛けてから割り算してください。見積書に「実効容量」の記載がある場合は、そちらの数字を優先します。

家電ごとの消費電力を並べると、差は20倍以上ある

同じ蓄電池でも何時間もつかが大きく変わるのは、家電の消費電力の幅が広いからです。LED照明1部屋が30〜50Wなのに対し、電子レンジは1000〜1300W。電子レンジを1時間使う電気で、照明なら20時間以上ともせる計算になります。

当サイトで、公開されている消費電力の目安を停電時によく使う家電ごとに整理しました。

📊 停電時に使う家電の消費電力(電気とエネルギーの教科書調べ)
家電 消費電力の目安 停電時の優先度
LED照明(1部屋) 30〜50W 高(夜間の安全確保)
冷蔵庫(400Lクラス) 50〜200W 高(食料の保存)
テレビ 50〜200W 中(情報収集)
エアコン(6畳用・冷房) 400〜600W 季節次第(夏の熱中症対策)
電子レンジ 1000〜1300W 低(短時間だけ使う)

出典:Anker Japanの公開値をもとに作成。実際の消費電力は機種・設定・室温で変わります。

表を見ると、冷蔵庫やテレビは「50〜200W」と幅があります。古い機種や、夏に扉を頻繁に開けた場合は上限寄りになります。自宅の家電の銘板や取扱説明書で消費電力を確認し、この表の代わりに書き込んでおくと、計算の精度が上がります。

10kWhあれば照明・テレビ・冷蔵庫で約42時間

では実際にどのくらいもつのか。公開されている試算では、テレビと照明だけなら7kWhで約42〜45時間、テレビ・照明・冷蔵庫・スマホ充電の組み合わせなら10kWhで約42時間とされています(Anker Japan)。

冷蔵庫を加えると同じ時間を確保するのに容量が増えるのは、冷蔵庫が24時間止まらずに動き続ける家電だからです。照明は夜だけ、テレビはニュースの時間だけと使い方で調整できますが、冷蔵庫は止めると中身が傷みます。停電中の消費電力を押し上げる「基礎代謝」のような存在だと考えるとわかりやすいでしょう。

つまり、10kWhクラスの蓄電池があれば「冷蔵庫を止めずに、照明と情報収集を確保したまま2日弱」が一つの目安になります。逆に言えば、この組み合わせでも3日目の朝には届きません。太陽光で昼間に充電できるか、使う家電をさらに絞るかが、72時間を越えられるかの分かれ目になります。

夏にエアコンを足すと、7,000Whは約7.7時間で尽きる

停電時にもっとも容量を食うのが、夏のエアコンです。夏場の停電で合計消費電力が約820Wになる想定では、7,000Whの蓄電池で約7.7時間、14,000Whで約15.4時間、21,000Whで約23時間という試算が示されています(Anker Japan)。

21,000Whあっても丸1日もたない、というのは意外に感じるかもしれません。エアコン1台で400〜600Wを使うため、照明や冷蔵庫と合わせると消費電力が一気に数倍になるからです。同じ解説では、エアコンを使うなら最低でも10,000Wh以上が安心ラインとされています。

ここから読み取れるのは、「停電中もエアコンを普段どおり使う」前提で容量を決めると、家庭用蓄電池の現実的な容量では足りなくなりやすいということです。高齢の家族がいて夏の熱中症対策が最優先なら、エアコンは1部屋だけ・設定温度を控えめに・家族はその部屋に集まる、といった使い方を先に決めてから容量を考えてください。

72時間を乗り切るには何kWh必要か|3つの運用レベルで逆算

72時間を乗り切るには何kWh必要か|3つの運用レベルで逆算の解説画像

最小限なら5kWh、ただし特定負荷型での話

防災の世界では、救助や支援が本格化するまでの「72時間(3日間)」を自力でしのぐ備えがよく目安にされます。3日間の停電を蓄電池でしのぐ場合、照明・冷蔵庫・スマホ充電程度の最小限の運用なら、特定負荷型で5kWhでも約3日分をカバーできるという試算があります(スマイルエコの解説)。

5kWhで3日もつのは、特定負荷型が「決められた回路にしか電気を送らない」からです。使える家電が限られる分、無意識に電気を使いすぎることがありません。参考までに、1人が1日に最低限必要な電力は約100〜150Whとされています。照明とスマホ充電程度なら、人の数よりも冷蔵庫の有無が消費量を左右します。

ただし「5kWhで3日」は、冷暖房を使わない季節、家族が節電に協力する、という条件つきの数字です。真夏や真冬の停電、在宅療養中の家族がいる家庭には当てはまりません。最小容量で済ませたい場合は、季節ごとに「この機器は使わない」と決めておくことが前提になります。

普段どおりに近づけるほど13〜18kWhへ跳ね上がる

3日以上の停電に備えるなら10kWh以上が推奨され、ある程度家電を使うバランス運用で3日間におよそ13〜14kWh、エアコンなども使う快適運用では15〜18kWhが必要とされています(スマイルエコ)。

10kWhの蓄電池で72時間をもたせるには、1日あたりの消費を3.3kWh以下に抑える必要があります。これは10kWhを3日で割った数字で、実効容量のロスを考えると実際にはもう少し厳しくなります。普段の暮らしでは1日の消費電力量がこれより多い家庭が大半なので、「72時間を普段どおりに」は家庭用蓄電池1台では現実的ではありません。

見極めのコツは、自分の家を「最小限」「バランス」「快適」のどれで乗り切りたいかを先に決めることです。快適運用を選ぶと容量も価格も跳ね上がるので、「最初の1日は快適、2日目以降はバランスに落とす」といった段階的な使い方を家族で決めておくと、必要容量を抑えられます。

🔧 72時間に必要な容量の見極め手順
Step1:停電中に動かしたい家電を書き出し、それぞれの消費電力(W)と1日の使用時間を記入する
↓
Step2:消費電力×使用時間を合計して1日の必要量(Wh)を出し、3倍して72時間分にする
↓
Step3:その値を0.8〜0.9で割り戻し、必要な定格容量を出す(実効容量のロス分を上乗せ)
↓
Step4:太陽光で昼間に再充電できる家は、雨天が続く前提でも足りるかを確認して最終決定する

カタログの容量で計算して2日目の夜に切れる失敗

よくある失敗が、見積書に書かれた定格容量をそのまま割り算して「うちは3日もつ」と思い込むケースです。たとえば定格10kWhを1日3.3kWhで割って3日と計算しても、実効容量が8〜9割なら、使える電気は2日半ほどで尽きます。停電2日目の夜に電気が切れ、冷蔵庫の中身を守れなかった、という結果になりかねません。

原因は二つあります。一つは交流への変換ロスと、電池保護のために残す残量を計算に入れていないこと。もう一つは、停電前に蓄電池が満充電とは限らないことです。普段、電気代を下げるために夜間や朝に放電する設定にしていると、停電が起きたタイミングで残量が半分以下ということもあります。

対策は、計算では必ず0.8〜0.9を掛けること、そして台風の接近など停電が予想されるときは、多くの機種にある「停電に備えて満充電を保つ」モードに切り替えておくことです。モードの名称や操作は機種ごとに違うので、自宅の機種の取扱説明書で確認してください。

⚠️ 失敗しやすいポイント

「定格容量÷1日の使用量」で日数を出すと、実効容量のロス(約1〜2割)と停電時点の残量不足の二つを見落とします。計算は定格容量×0.8〜0.9から始め、停電が予想される日は事前に満充電を保つ設定へ切り替えておきましょう。

1日3.3kWhに抑える節電の組み立て方

10kWhクラスで72時間を目指すなら、1日の消費を3.3kWh以下に抑える運用が必要です。これは「どの家電を削るか」ではなく「どの家電を常時・時間限定・使わないに分けるか」で考えるとうまくいきます。

常時動かすのは冷蔵庫だけにします。冷蔵庫は50〜200Wと幅があり、扉の開け閉めを減らすほど消費は下限に近づきます。時間限定にするのは照明とテレビ。照明は家族が集まる1部屋に絞り、テレビはニュースの時間だけにして、情報収集はスマホのラジオアプリなどに切り替えると消費を抑えられます。使わないに分類するのは電子レンジや電気ケトル、ドライヤーのような1000W級の家電です。短時間でも容量を大きく削ります。

判断のコツは、この仕分けを停電前に紙に書いて冷蔵庫に貼っておくことです。停電直後は慌てて普段どおりに家電を使ってしまい、最初の数時間で容量を大きく減らすのが典型的なパターンです。家族全員が同じルールを共有しているかどうかで、同じ蓄電池でももつ時間が変わります。

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全負荷型と特定負荷型、停電の夜に差が出るのはどこか

全負荷型は60A・10kVAまで「いつもの家」が続く

全負荷型は、停電時にも分電盤につながっているすべての回路に電気を送れるタイプで、60Aもしくは10kVAまでの電気が使えます(ソライスの解説)。エアコン、電子レンジ、IHコンロなど、家庭用の電気製品のほぼすべてが使え、複数の家電を同時に動かすこともできます。停電に気づかないくらいの感覚で過ごせるのが最大の利点です。

ただし、「全部使える」ことは「全部使っても長くもつ」ことではありません。全負荷型で普段どおりに家電を使えば、前の見出しで見たとおり容量は数時間から十数時間で尽きます。使える範囲が広い分、消費も増えやすいのが全負荷型の性格です。

価格は特定負荷型より20〜50万円高く、分電盤まわりの工事も必要になります。オール電化住宅でIHコンロやエコキュートを停電中も使いたい家、在宅療養で医療機器を複数の部屋で使う家など、「使える範囲の広さ」に価値がある家庭に向いています。

特定負荷型は回路を選ぶ代わりに長くもつ

特定負荷型は、事前に指定した一部の回路にだけ電気を送るタイプです。LED照明、冷蔵庫、テレビなど100V機器が中心で、全負荷型より消費電力が少なく済むため長時間使えます(ソライス)。コストを抑えつつ、停電時に必要な電力だけを確保したい場合に向いた方式です。

長くもつ理由は単純で、使える家電が物理的に限られるからです。「エアコンを使いたくなっても、その回路につながっていなければ使えない」という制約が、結果的に節電として働きます。72時間の最小限運用で5kWhでもしのげるという試算が特定負荷型を前提にしているのも、このためです。

サイズがコンパクトで設置場所に融通が利くのも利点です。一方で、停電中に使えない部屋が出ること、エアコンや大きな家電は基本的に対象外になりやすいことは受け入れる必要があります。「夜に明かりがあって、冷蔵庫が止まらず、スマホが充電できれば十分」という家庭なら、特定負荷型で足ります。

📊 全負荷型と特定負荷型の違いを比較
項目 全負荷型 特定負荷型
停電時の給電範囲 分電盤全体(60Aまたは10kVAまで) 事前に指定した一部の回路のみ
使える家電 エアコン・電子レンジ・IHなどほぼ全て LED照明・冷蔵庫・テレビなど100V機器中心
もつ時間 使い方次第で短くなりやすい 消費が少なく長時間使いやすい
価格 特定負荷型より20〜50万円高い 全負荷型より安価
向いている家 オール電化・医療機器を使う家 最低限の電気を長く確保したい家

冷蔵庫のない回路を「非常用」に選んでしまう失敗

特定負荷型でありがちな失敗が、どの回路を非常用にするかを業者任せにした結果、停電時に冷蔵庫が止まってしまうケースです。「リビングの照明とコンセント」だけを指定し、キッチンの冷蔵庫の回路が入っていなかった、というのが典型的なパターンです。

原因は、分電盤の回路と部屋のコンセントの対応を施主が把握しないまま工事が進むことにあります。分電盤の回路は「リビング」「キッチン」などと書かれていても、実際には隣の部屋のコンセントが同じ回路に入っていることも珍しくありません。そのうえ、工事の時点では停電中に何を使いたいかを家族で話し合っていないことが多いのです。

対策は、見積もりの段階で「停電時に使いたい家電リスト」を渡し、それぞれがどの回路につながっているかを確認してもらうことです。冷蔵庫、寝室か家族が集まる部屋の照明、スマホやWi-Fiルーターを充電するコンセントの3つは最低限押さえておきましょう。設置後は、停電時に使えるコンセントにシールを貼っておくと、暗い中でも迷いません。

⚠️ 失敗しやすいポイント

特定負荷型の「非常用回路」を業者任せにすると、冷蔵庫やWi-Fiルーターの回路が外れていることがあります。見積もり時に停電中に使いたい家電リストを渡し、回路との対応を書面で確認してください。分電盤の配線作業は必ず有資格者に依頼しましょう。

どちらを選ぶかは「停電中に何をしたいか」で決まる

全負荷型と特定負荷型に優劣はありません。どちらが合うかは、停電中にどんな暮らしを続けたいかで決まります。判断の軸は「使える範囲の広さ」と「もつ時間の長さ」のどちらを優先するか、です。

オール電化でIHコンロしか調理手段がない、夏や冬に冷暖房が止まると命に関わる家族がいる、という家は全負荷型の価値が高くなります。ただしその場合、容量も大きめにしないと数時間で尽きるので、全負荷型と大容量はセットで考える必要があります。

一方、ガスコンロやカセットコンロで調理ができ、冷暖房は衣類や毛布で調整できる家なら、特定負荷型で照明と冷蔵庫を長く守る方が合理的です。価格差の20〜50万円を、容量の上乗せや水・食料の備蓄に回すという選び方もあります。迷ったら、自宅の調理手段と冷暖房の代替手段を先に書き出してみてください。答えはそこから自然に出てきます。

ポータブル電源で代わりになる家、ならない家

コストと手軽さではポータブル電源に分がある

災害時の電源として、据え置きの家庭用蓄電池とよく比べられるのがポータブル電源です。ポータブル電源の最大の利点は、定置型の蓄電池に比べて導入コストが格段に低く、購入してすぐに使えることです(Jackery Japanの解説)。工事が不要で、持ち運べるので避難先や車中泊にも持っていけます。

一方、容量は小さめで大型家電には向かず、2kWhを超えると重くなるという弱点があります。家庭用蓄電池が大容量・高出力で、太陽光と連携すれば継続して充電できるのと比べると、担える役割ははっきり違います。ポータブル電源はスマホやパソコンの充電、電気ケトル、小型家電向け。家庭用蓄電池はエアコンや冷蔵庫、IHコンロなど大型家電の長時間運用向けです。

判断のコツは、「家全体を守る」か「家族の最低限を守る」かで線を引くことです。賃貸住宅やマンションで据え置き型を設置できない家、まず手頃な費用で備えを始めたい家なら、ポータブル電源は現実的な選択肢になります。

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1,000Wh級と2,000Wh級、家族の人数で線を引く

ポータブル電源の容量選びは、家族の人数と冷蔵庫を動かすかどうかで決まります。目安として、1〜2人で最小限の電気を確保するなら1000Wh級、3〜4人家族で電気毛布や冷蔵庫にも対応したいなら2000Wh級以上とされています。持続時間の目安は、1000Whクラスで約8〜12時間、2000Whクラスで約16〜24時間です。

家庭用蓄電池の10kWhと比べると、2000Wh級でも容量は5分の1です。つまり、ポータブル電源1台で72時間を乗り切るのは、冷蔵庫を止めるなど相当に使い方を絞らない限り難しいということです。停電が数日続く前提なら、ソーラーパネルでの充電機能は必須と考えてください。

具体的な製品例として、1024WhのAnker SOLIX C1000 Gen 2は価格帯が10万円台前半(販売時期により変動)とされています。国内のポータブル電源市場はJackery・Anker・EcoFlowの3社で全体の8割以上を占めており、選択肢の多くはこれらのメーカーから選ぶことになります。容量を決めてから、出力やポート数、重さを比べる順番が迷いにくい選び方です。

実は「電池の種類」と「充放電回数」の方が容量より効く

ポータブル電源を容量だけで比べる人は多いのですが、意外と知られていないのが、災害用としては電池の種類と充放電回数の方が長く効いてくるという点です。災害用の電源は、買ってから何年も「いざというとき」を待ち続けます。その間に電池が劣化していては、容量が大きくても意味がありません。

たとえばBLUETTIのAC240は、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用し、3500回以上の充放電サイクルと6年保証をうたっています(BLUETTI公式)。同社のAC300+B300Kは、2764Wh・AC出力3000Wで、充放電サイクルは4000回以上です(BLUETTI公式)。リン酸鉄リチウムイオン電池は電気自動車にも採用される種類で、長寿命なのが特徴です。

見極めのコツは、スペック表で「電池の種類」「充放電サイクル数」「保証年数」の3つを必ず確認することです。安さだけで選ぶと、数年後の台風シーズンに容量が落ちていた、ということになりかねません。加えて、年に数回は実際に充放電して動作を確かめておくと、いざというときの失敗を防げます。

📋 プロフィールカード:BLUETTI AC240
分類・方式 ポータブル電源(リン酸鉄リチウムイオン電池)
容量・出力の目安 1536Wh(拡張時最大10,136Wh)、AC出力2000W(純正弦波)、重量33kg
寿命・保証年数 充放電3500回以上、6年保証、防水防塵IP65等級
向いている用途 据え置き型を置けない家の停電対策、屋外での使用。セール時は129,960円程度(43%割引適用時・変動あり)

周波数50Hz/60Hzと「ソーラー充電」を見落とさない

ポータブル電源を選ぶとき、見落としやすいのが電源周波数です。日本の電圧は100Vですが、周波数は富士川(静岡県)と糸魚川(新潟県)を境に東側が50Hz、西側が60Hzに分かれています(シャープ公式)。規格が合わないと、家電が正常に動かなかったり寿命が短くなったりする可能性があります。

現在は自動判別で両方の周波数に対応するポータブル電源が主流で、家電側もヘルツフリーが主流になっています。ただ、海外向けに設計された製品や古い家電を組み合わせる場合は注意が必要です。購入前に、出力周波数が自分の地域に合わせられるかを確認してください。

もう一つがソーラー充電です。停電が数日続く前提なら、ソーラーパネルで充電できる機能は必須になります。ポータブル電源は充電できなければ一度使い切って終わりなので、ソーラーパネルと組み合わせて初めて「数日の停電に強い電源」になります。また、屋外で使う可能性があるなら、防水・防塵性能もIP65等級を目安に確認しておくと安心です。

車とエコキュートも停電時の「蓄え」になる

V2Hなら40〜60kWh、家庭用蓄電池の5倍以上

家庭用蓄電池以外で、災害時に大きな電源になりうるのが電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)です。これらの車のバッテリーは40〜60kWhと家庭用蓄電池の5倍以上の容量があり、停電時に2〜4日分の電気をまかなうことも可能とされています(電池バンクの解説)。

車の電気を家に送るには、V2H(Vehicle to Home)という機器が必要です。V2Hは車から家への給電と、家から車への充電を双方向でやり取りする仕組みで、家庭用蓄電池と同じく特定負荷型と全負荷型があります。満充電の状態から節電すれば、1週間以上もたせることも可能とされています。

さらに太陽光があれば、停電中も昼間の発電で車に充電できるので、停電が長引いても移動手段を確保できます。ただし、太陽光との連携は一部の機種に限られます。EVをすでに持っている、あるいは次の車をEVにする予定がある家なら、蓄電池より先にV2Hを検討する価値があります。

V2Hの費用は130〜160万円、対応車種の確認が先

V2Hの導入費用は、機器費が99〜160万円、設置工事費が20〜30万円で、合計130〜160万円程度が一つの目安です(設置条件・時期により変動)。具体的な機種例として、ニチコンのVSG3-666CN7は出力6.0kWで約128万円程度とされ、停電時には自動で放電し、分電盤も自動で切り替わります(タイヨウコウカカクの製品ページ)。

最初に確認すべきは、自分の車がV2Hに対応しているかどうかです。多くのV2H機器はCHAdeMO規格を搭載した車に対応しており、トヨタ・日産・三菱・マツダ・ホンダ・SUBARU・ベンツ・BYDなどの対応車種があります。ただし同じメーカーでも車種によって対応が異なるので、購入前に必ず対応車種リストを確認してください。

V2Hで失敗しやすいのは、「停電時に車が家にない」ケースです。平日の昼間は通勤で車が出ている家では、昼間の停電時に家に電気を送れません。車の使い方と在宅時間を照らし合わせ、V2Hが本当に役立つ時間帯を考えてから導入を判断しましょう。

Q EVがあれば家庭用蓄電池はいらない?
A 容量だけで見ればEVの方が大きいので、V2Hがあれば災害時の電源としては十分なことが多いです。ただし車が家にない時間帯は給電できません。車の在宅時間が短い家や、停電中に車で避難・移動する可能性が高い家は、家庭用蓄電池やポータブル電源と組み合わせる方が安全です。
Q 停電中にエコキュートのお湯は使える?
A タンク内にお湯が残っていれば、シャワーや蛇口から使えます(温度調整はできません)。ただし集合住宅などでポンプ給水の場合、停電時はお湯が出ません。新たな沸き上げはできないので、残っているお湯を大切に使いましょう。

エコキュートのタンクは「お湯の蓄電池」

オール電化住宅なら、見落としがちな災害時の備えがエコキュートのタンクです。エコキュートのタンク容量は370〜560L程度あり、停電時もタンク内にお湯が残っていれば、シャワーや蛇口から使えます(パナソニック公式)。温度調整はできませんが、電気が止まっていても水圧で押し出されるので使えるわけです。

さらにタンク下部には非常用取水栓があり、ホースをつなげば生活用水を取り出せます。2〜4人家族で2〜3日分の生活用水の目安になるとされ、トイレを流す水や体を拭く水として役立ちます。前の見出しで「蓄電池は水を守れない」と書きましたが、エコキュートはこの穴を埋めてくれる存在です。

判断のコツは、停電前にタンクにどれだけお湯が残っているかを意識しておくことです。台風が近づいているときは、沸き上げを増やしておくとタンクの蓄えが増えます。非常用取水栓の位置と開け方は機種ごとに違うので、平常時に取扱説明書で確認しておいてください。

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取水した水は飲めない、集合住宅では出ないこともある

エコキュートの非常用水には、注意点が二つあります。一つは、飲料水には適さないことです。タンクの水は生活用水として使い、飲み水は別に備蓄しておく必要があります。もう一つは、タンク内のお湯が高温の場合があるため、取り出すときにやけどに注意することです(パナソニック公式)。

また、集合住宅などでポンプを使って給水している場合、停電時はお湯が出ません。これはエコキュートの問題ではなく、建物の給水ポンプが止まるためです。この場合でも非常用取水栓からタンク内の水を取り出せる可能性はありますが、蛇口からお湯が出ることを前提にした備えは成り立ちません。

「エコキュートがあるから水は大丈夫」と思い込むのは危険です。飲み水は別に確保し、エコキュートの水はトイレ・洗い物・体を拭く用途に回す、という役割分担を決めておきましょう。取水作業に不安がある場合や、タンクまわりの配管に損傷が見られる場合は、無理をせず業者に相談してください。

費用と2026年度の補助金、災害対策として割に合う家は?

平均210.1万円、容量が増えるほど総額はこう変わる

家庭用蓄電池の価格は、平均容量12.25kWhで総額210.1万円(税込)、1kWhあたり17.2万円というデータがあります(ソーラーパートナーズ)。容量別では、9〜10kWhの平均が195.7万円、12〜13kWhが205.0万円、14〜15kWhが236.5万円です。

容量が増えても総額が比例して増えないのは、工事費やパワーコンディショナなど容量に関係なくかかる費用があるためです。災害対策として72時間の「バランス運用」を目指すなら13〜14kWhが目安です。容量12〜13kWhの平均価格は205.0万円、14〜15kWhは236.5万円なので、この帯が一つの予算感になります。保証年数はメーカーにより10〜15年です。

メーカー例として、京セラのEnerezzaは5.5kWh・11.0kWh・16.5kWhの容量があり、半固体の粘土型電池で20000回の充放電サイクルをうたっています(京セラ公式)。長州産業のSmart PV Multiは6.3〜16.4kWhのハイブリッド型で15年保証、価格帯は157.6〜284.9万円程度です。同じ容量でも価格に幅があるので、複数の見積もりを取って内訳を比べることが大切です。

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2026年度の国の補助金はすでに受付終了

蓄電池の補助金として注目されていた国のDR補助金は、2026年度、予想を上回る早さで予算上限に達し、受付を終了しました(ソーラーパートナーズ)。2026年度の単価は3.45万円/kWh(前年度3.7万円から引き下げ)、上限は1申請あたり60万円でした。

国の制度で残っている受け皿の一つが、みらいエコ住宅2026事業です。リフォーム全体の補助上限が最大100万円/戸(住宅の建築年に応じて変動)で、蓄電池の設置も補助対象になっています。ただし、蓄電池単体でどれだけ補助されるかは要件次第なので、「100万円もらえる」と考えるのは誤りです。

補助金は年度ごとに内容が変わり、予算がなくなれば期限前でも締め切られます。業者の「今なら補助金が使える」という言葉だけで契約を急がず、事業の公式サイトで受付状況を確認してから判断しましょう。自治体独自の補助金がある場合もあるので、お住まいの市区町村のホームページで「蓄電池 補助金」と検索してみてください。

災害対策だけで元を取ろうとしない

蓄電池を検討するとき、「電気代の節約で元が取れるか」と「災害時の安心」を混ぜて考えると判断を誤ります。災害時の備えという価値は、節約額のようにお金で回収できるものではないからです。

よくあるのは、「停電対策にもなるし、電気代も下がるから実質タダ」という営業トークを信じて契約するケースです。電気代の削減額は、太陽光の有無、自家消費率、電気料金プランによって大きく変わり、前提条件によっては回収に長い年数がかかります。災害対策としての価値は、その回収計算とは別枠で考える必要があります。

判断のコツは、「災害対策としていくらまでなら払えるか」を先に決めることです。たとえばポータブル電源とカセットコンロ、水の備蓄で十分と考えるなら、据え置きの蓄電池は不要かもしれません。逆に在宅療養の家族がいて停電が命に関わるなら、回収年数に関係なく導入する理由があります。お金の損得と安心の価値を分けて考えると、納得のいく選択ができます。

家庭のタイプ別、災害時の電源の組み合わせ

ここまでの内容を、家庭のタイプ別に整理します。どれか一つが正解ではなく、自分の家に近いパターンを選んで組み合わせるのがおすすめです。

📊 家庭のタイプ別・災害時の電源の選び方
家庭のタイプ 向いている電源 考え方
賃貸・マンション、1〜2人 1000Wh級ポータブル電源 工事不要。照明とスマホ充電を確保
戸建て・ガスで調理できる 特定負荷型蓄電池または2000Wh級以上 冷蔵庫と照明を長くもたせる
オール電化・太陽光あり 全負荷型ハイブリッド蓄電池 IHとエコキュートを含めて昼に再充電
EVを持っている V2H 40〜60kWhの車載電池を家に回す
医療機器を使う家族がいる 全負荷型+ポータブル電源 機器の予備バッテリーと二重化する

どのタイプでも共通するのは、電源だけでなく水・食料・トイレの備えを組み合わせることです。医療機器を使う家族がいる場合は、機器メーカーや主治医に停電時の対応を確認し、蓄電池とは別に機器専用の予備バッテリーを用意しておくことが内閣府の停電対策でも勧められています。

まとめ

⚡ この記事の結論

蓄電池は災害時、10kWhで照明・テレビ・冷蔵庫を約42時間支えます。停電中に動かす家電を先に決め、容量と給電方式を逆算しましょう。

✅ 要点チェック
  • ✔ 計算式:定格容量×8〜9割÷消費電力
  • ✔ 72時間の目安:10kWh以上、快適なら15〜18kWh
  • ✔ 給電方式:全負荷は範囲、特定負荷は時間
  • ✔ 代わりの電源:ポータブル電源・V2H・給湯タンク
  • ✔ 補助金:2026年度の国DR補助は受付終了

最初の一歩は、蓄電池のカタログを見ることではなく、「停電中に動かしたい家電」を紙に書き出して消費電力を調べることです。そのリストがあれば、必要な容量も、全負荷型か特定負荷型か、ポータブル電源で足りるかも、自分で判断できるようになります。

※価格・補助金は2026年9月時点の情報です。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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この記事を書いた人

電気とエネルギーの教科書編集部です。テーマに関する基礎知識や選び方を、公式情報など確認できる情報をもとに編集しています。掲載後も定期的に見直し、変更があれば更新します。

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