夏の夕方、急に部屋が暗くなってエアコンが止まったとします。「このまま復旧を待てばいいのか」「電気が戻ったらすぐ電源を入れていいのか」「停電中に冷房を動かす方法はあるのか」と、迷うことが一度にいくつも出てきます。
先に結論をお伝えします。停電でエアコンが止まること自体より、復旧直後の扱い方で差がつきます。大手エアコンメーカーの公式FAQは、通電直後は本体が初期設定を行っているので3~5分ほど待ってから操作すること、複数台を同時に運転するとブレーカーが落ちる可能性があることを案内しています。停電中も冷房を使いたい場合、ポータブル電源は定格出力1500W以上・瞬間最大出力2000W以上が目安です。ただし部屋が広いと、この条件を満たしても足りないことがあります。
この記事では、停電直後から復旧までの手順、畳数別の消費電力から逆算した電源の選び方、蓄電池とV2Hの違い、冷房が使えない時間の暑さ対策、2027年の新省エネ基準との関係までを、公式情報の数字をもとに整理します。売り手の立場ではなく、「自分の家には何が必要か」を判断する材料としてお使いください。
・停電直後にやることと、復旧後に3~5分待つ理由
・ランプ点滅やブレーカー落ちが起きたときの対処手順
・畳数別の消費電力(6畳508W〜23畳2472W)から逆算する電源の条件
・ポータブル電源・蓄電池・V2Hの違いと、エアコンなしで暑さをしのぐ方法
停電でエアコンが止まったら、最初にやるのは「プラグを抜く」こと

エアコンが停電で止まり、電気が戻っても動き出さない理由
停電するとエアコンは運転を停止します。ここまでは誰でも想像がつくと思いますが、意外と知られていないのは、電気が戻っても元の運転に自動で戻るとは限らないという点です。メーカーの公式FAQ(停電時の運転について)では「停電時はエアコンの運転が停止します。通電後、改めて運転を開始してください」と案内されています。
理由は、エアコンがコンプレッサーや基板を制御するコンピューター製品だからです。電源が途切れると制御は一度リセットされ、通電したときに初期設定からやり直します。同じFAQによると、通電時に上下風向ルーバーは閉じないので、閉じたいときは停止ボタンを押すよう書かれています。「電気が戻ったのにルーバーが開いたまま」という状態は故障ではなく、この仕様によるものです。
よくあるのが、夜間の停電で寝ている間に復旧したものの、エアコンは止まったままで、朝まで室温が上がり続けていたというケースです。停電が短時間でも、復旧後に誰かが操作しなければ冷房は再開しません。
自分の機種が通電後にどう動くかは、機種ごとの取扱説明書で確認できます。停電が起きる前に一度目を通しておくと、夜間に復旧したときの動きを予測できます。小さな子どもや高齢の家族がいる家庭では、「停電が復旧したら誰がエアコンを入れ直すか」を決めておくと安心です。
停電直後にプラグを抜くよう勧められる理由
停電直後にできる対策として、防災用品メーカーの夏の停電対策の解説は、エアコンのプラグを抜いておくことを挙げています。目的は、復旧した瞬間の電圧が不安定な状態を避けることです。
仕組みとしては、停電が復旧する瞬間、家中の家電に一斉に電気が流れ込みます。エアコン・冷蔵庫・電子レンジなど、つないだままの機器が同時に動き出そうとするので、家の中の電気の流れが一時的に乱れやすくなります。エアコンのプラグを抜いておけば、その瞬間を本体から切り離しておけます。
失敗しやすいのは、慌ててブレーカーを何度も上げ下げしてしまうことです。停電の原因が電力会社側にある場合、家のブレーカーを操作しても電気は戻りません。操作を繰り返すほど、どの時点で何が起きたのか分からなくなります。
判断のポイントは、「近所も暗いかどうか」です。近隣の家や街灯も消えているなら地域全体の停電なので、家のブレーカーは触らずにプラグを抜いて待つ。自宅だけが暗いなら家のブレーカーが落ちた可能性が高いので、分電盤を確認します。なお、プラグが抜きにくい位置にある場合や、コンセントに焦げ・変色がある場合は、無理に触らず電気工事の有資格者に相談してください。
冷蔵庫は開けず、家族を涼しい一部屋に集める
エアコンが止まっている間の暑さ対策は、冷気を逃がさないことと、冷やす範囲を小さくすることの2つに集約できます。前述の防災解説は、停電直後にやることとして、冷蔵庫を開けない、カーテンで遮熱する、家族を涼しい部屋に集める、スマートフォンの充電を確保する、といった行動を挙げています。
理由は単純で、停電中は冷やす力がゼロになるからです。冷蔵庫の扉を開けるたびに庫内の冷気が逃げ、食品の傷みが早まります。部屋の熱も同じで、日差しが差し込む窓を放置すると、室温はどんどん上がっていきます。家族がそれぞれ別の部屋にいると、後でポータブル電源などで冷房を動かせるようになっても、冷やすべき部屋が複数になってしまいます。
よくある失敗は、停電直後に「とりあえず」冷蔵庫を開けて中身を確認することです。確認のために何度も開けると、それだけ保冷できる時間が短くなります。
判断のコツは、家の中で「北向き・窓が少ない・家族が集まれる広さ」の部屋をあらかじめ決めておくことです。停電の備えは、エアコンそのものより、どの部屋でしのぐかを決めることから始めると、次に考える電源の容量も見積もりやすくなります。
電気が戻ったのに動かない・ランプが点滅するのはなぜ?
通電直後の3~5分はエアコンが「初期設定中」
停電が復旧したら、すぐにリモコンを押さず、3~5分ほど待つのが基本です。メーカーFAQには、落雷などによる一時的な停電や、ブレーカーが落ちて再度通電した直後は、エアコンのシステムが初期設定を行っているため、3~5分ほど待って点滅が落ち着いてから操作すれば通常通り動き出す、と書かれています。
この間、エアコンの内部では基板が状態を確認し、ルーバーや各部の位置を読み直しています。人間でいえば、寝起きにまず周りを確かめている時間です。その最中にリモコン操作をしても受け付けられなかったり、ランプの点滅が続いて「壊れた」と思い込んでしまったりします。
やりがちなのは、反応がないからとリモコンを連打したり、電池を入れ直したりすることです。本体の準備が終わっていないだけなので、リモコン側をいじっても解決しません。
判断の目安は、ランプの点滅が落ち着いたかどうかです。点滅が止まってから運転ボタンを押し、それでも動かないときに次の対処へ進みます。ランプの色や点滅パターンの意味は機種ごとに違うので、「点滅=故障」と決めつけず、取扱説明書で自分の機種の表示を確認してください。
全部のエアコンを一斉にオンにするとブレーカーが落ちる
復旧後に部屋ごとのエアコンを同時に入れ直すのは避けてください。メーカーFAQにも「停電復旧時に複数のエアコンを同時運転するとブレーカーが落ちる可能性があるため、時間を空けて運転してください」とあります。
理由は、エアコンが動き始めるときに一番電気を使うからです。室温が高い状態から冷やし始めると、コンプレッサーが最大に近い力で動きます。停電後の部屋は暑くなっているので、どの部屋のエアコンも同時に全力で動こうとし、家全体の契約容量や回路の上限を超えやすくなります。
ブレーカーが落ちると、また家中の電気が止まり、エアコンは再び初期設定からやり直しになります。暑い部屋で待つ時間がさらに延びるうえ、冷蔵庫など他の家電も止まってしまいます。
見極め方は、「今から動かす家電の合計が、ふだん同時に使っている量より多いか」を考えることです。家族全員が帰宅している夜や、電子レンジ・ドライヤーを同時に使う時間帯と重なると、ブレーカーは落ちやすくなります。復旧後は、一番暑い部屋のエアコンを先に入れ、室温が落ち着いてから次の部屋へと、時間を空けて1台ずつ動かします。
停電が復旧した瞬間、リビング・寝室・子ども部屋のエアコンを全部同時に入れてブレーカーが落ち、再び停電状態に戻ってしまう。原因は、暑くなった部屋を冷やし始めるときの消費電力が大きく、複数台分が重なることです。対策は、3~5分待ってから、時間を空けて1台ずつ運転すること。冷蔵庫など止めたくない家電があるときは、エアコンより先に通電を確認しておきます。
ランプの点滅が続くときは停止ボタンと放電待ち
3~5分待っても点滅が落ち着かない場合は、リモコンの停止ボタンを押し、しばらく時間を置いて基板の電気を抜く方法があります。メーカーのFAQ情報では、ランプ点滅の原因としてエアコン内部の制御システムの混乱が考えられるとし、停止ボタンを押したうえで最低10分以上待ち、基板に溜まった電気を放電させることが重要だとしています。
なぜ待つ必要があるのかというと、電子基板には電気を一時的に蓄える部品があり、電源が切れた直後もしばらく電気が残っているからです。残った電気のせいで、制御が中途半端な状態のまま再起動してしまい、正しくリセットされないことがあります。時間を置けば基板の電気が抜け、次に通電したときにきちんと初期状態から立ち上がります。
失敗しやすいのは、停止ボタンを押した直後にすぐ運転ボタンを押すことです。基板がリセットされないまま再起動するので、同じ点滅が続きます。
判断のコツは、待ち時間をタイマーで計ることです。暑い中での10分は長く感じるので、感覚で「そろそろいいだろう」と操作すると早すぎることがあります。なお、点滅のパターンが取扱説明書でエラー表示として定められている場合は、その機種の説明に従ってください。
それでも動かないときのリセット手順とタイマーの再設定
停止ボタンと放電待ちでも直らないときは、コンセントとブレーカーを使ったリセットを試します。FAQ情報で紹介されている手順は、いったんエアコンのコンセントを抜く、ブレーカーをOFFにしてからONにする、エアコンのコンセントを差し直して電源を入れる、配管や室外機の動作を確認する、必要に応じてタイマーを再設定する、という流れです。
コンセントとブレーカーの両方を切るのは、エアコン本体への電気を完全に断ち、基板を確実に初期状態へ戻すためです。停電が復旧したときの不安定な通電で制御が乱れていても、一度すべてを切ってから入れ直せば、通常の立ち上がりと同じ状態から再スタートできます。
見落としやすいのが、タイマーと日時です。メーカーFAQでは、停電するとタイマー予約はすべて取り消されるため再設定が必要で、リモコンの日時情報も消去されるため日付と時刻を再設定するよう案内しています。「夜に切れるはずのタイマーが動かなかった」「朝の予約運転がされていなかった」という原因の多くは、この再設定忘れです。
このリセットでも動かない、室外機から異音がする、水漏れや焦げたにおいがするといった場合は、自分で分解したり配線を触ったりせず、メーカーのサポート窓口や有資格の業者に点検を依頼してください。
部屋の広さで必要な電力は508Wから2472Wまで開く

畳数別の消費電力は、12畳を境に一段跳ね上がる
停電中にエアコンを動かす電源を考えるなら、まず自分の部屋のエアコンがどのくらい電気を使うかを知る必要があります。電気料金の解説メディアが集計した適用畳数ごとの平均消費電力は、6畳508W、8畳583W、10畳651W、12畳1062W、14畳1130W、18畳1883W、20畳2035W、23畳2472Wです。
数字を並べると、10畳用の651Wから12畳用の1062Wへ、大きく跳ね上がっているのがわかります。エアコンは部屋の広さに応じて冷やす能力を大きくする必要があり、その分コンプレッサーを強く動かす設計になっています。6畳用と23畳用では、消費電力に大きな開きがあります。
停電対策で起きやすいのは、「エアコンなら1台いくら」とひとくくりに考えてしまうことです。寝室の6畳用なら小さな電源でも届く可能性がありますが、リビングの18畳用を動かそうとすると、必要な電源の規模がまるで違ってきます。
判断のコツは、停電中にどの部屋のエアコンを動かしたいのかを先に決めることです。第1章で決めた「避難する一部屋」のエアコンの畳数を確認すれば、次章で説明する電源の条件と比べることができます。適用畳数は本体の側面やリモコン、取扱説明書、型番の検索などで確認できます。
| エアコンの適用畳数 | 平均消費電力 | 定格1500Wの電源と比べると | 定格3600Wの大型電源と比べると |
|---|---|---|---|
| 6畳 | 508W | 定格の範囲内(メーカーが駆動可能と示す例あり) | 範囲内 |
| 8畳 | 583W | 定格の範囲内 | 範囲内 |
| 10畳 | 651W | 定格の範囲内 | 範囲内 |
| 12畳 | 1062W | 範囲内だが余裕は小さい | 範囲内 |
| 14畳 | 1130W | 範囲内だが余裕は小さい | 範囲内 |
| 18畳 | 1883W | 定格を超える | 範囲内 |
| 20畳 | 2035W | 定格を超える | 範囲内 |
| 23畳 | 2472W | 定格を超える | 範囲内 |
※消費電力は出典の集計による平均値。実際の値は機種・室温・外気温で変わります。表は出力の大小だけを比べた目安で、動作を保証するものではありません。電圧やコンセントの形状が合わない場合は接続できません。
1時間の冷房代は6畳15.7円、23畳76.6円(出典の試算)
消費電力がわかれば、電気代も計算できます。計算式は「消費電力(W)÷1000×電気料金単価(円/kWh)」です。前述の解説メディアの試算では、冷房の1時間あたりの電気代は6畳で15.7円、12畳で約30円、23畳で76.6円、月額の目安は6畳で1405円、23畳で5091円とされています。
ただし、この試算は出典が設定した単価と使用条件に基づくものです。同じ出典では2026年の電気料金単価の目安を40~41円/kWhとしており、さらに2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWhです。契約している電力会社・プランや燃料費調整額によって単価は変わるので、自分の検針票の単価を式に当てはめるのが一番正確です。
停電とは直接関係なさそうな電気代の話をするのは、消費電力が小さいエアコンほど、停電時の限られた電気で長く動かせるからです。ふだんの電気代が安い機種は、停電時の電源への負担も小さい。平常時の節電と停電時の備えは、同じ数字でつながっています。
判断のコツとしては、買い替えを検討しているなら、カタログの消費電力や期間消費電力量を「電気代」と「停電時の電源の持ち」の両面で見ることです。

表の数字は「平均」。実際は起動直後に大きく、安定すると下がる
先ほどの消費電力は、あくまで平均値です。出典の解説も、部屋の広さ・断熱性・外気温などに応じて変動し、夏場や冬場の厳しい気候では消費電力が増えるとしています。
エアコンの消費電力が一定でないのは、インバーター制御で能力を上下させているからです。暑い部屋を冷やし始める直後はコンプレッサーを強く回し、設定温度に近づくと回転を落として少ない電力で室温を保ちます。停電で室温が上がった部屋は、まさに「一番電気を使う状態」からのスタートになります。
ここでの失敗は、平均値だけを見て電源を選ぶことです。「6畳用は508Wだから、定格ぎりぎりの電源で足りる」と考えると、起動直後や猛暑日にそれを上回ったときに電源の保護機能が働き、出力が止まってしまうことがあります。
見極めのコツは、平均値に対して電源の出力に余裕を持たせることです。さらに、断熱性の低い部屋や西日が当たる部屋は消費電力が増えやすいので、遮光カーテンなどで冷房の負担を下げておくと、同じ電源でも持ちが変わります。窓の断熱が弱い家では、停電対策と窓対策をセットで考えると効果的です。
ポータブル電源で冷房を動かすなら「定格1500W・瞬間2000W」が最低ライン
定格出力と瞬間最大出力、両方の条件が必要な理由
ポータブル電源でエアコンを動かす条件について、ポータブル電源メーカーの公式解説は「定格出力が1500W以上、瞬間最大出力が2000W以上の製品が目安」としています。ここで大事なのは、2つの出力を両方満たす必要があることです。
定格出力は「連続して出し続けられる電力」、瞬間最大出力は「起動時など、ごく短時間だけ出せる電力」です。エアコンのコンプレッサーは、動き出す瞬間に運転中よりも大きな電力を必要とします。定格が足りていても瞬間最大が足りなければ起動の時点で止まり、瞬間最大が足りていても定格が足りなければ運転を続けられません。
よくある勘違いは、容量(Wh)の大きさだけで選ぶことです。容量は「どれだけ長く使えるか」を示す数字で、「エアコンを動かせるか」は出力(W)で決まります。容量が大きくても出力が小さいモデルでは、エアコンは動きません。
判断のコツは、スペック表で「定格出力」「瞬間最大出力(サージ出力)」「容量」の3つを分けて確認することです。まず出力でエアコンを動かせるかを判断し、そのうえで容量で何時間使えるかを考えます。順番を逆にすると、動かないモデルを選んでしまいます。
容量1229Whのモデルで冷やせるのは6畳用が目安
具体的なモデルで見てみます。前述のメーカー解説で取り上げられている製品は、容量1229Wh・定格出力1500W・瞬間最大出力2400Wで、6畳用エアコンの駆動が可能とされています。
| 分類・方式 | 据え置き寄りの中型ポータブル電源(コンセント出力つき) |
| 容量・出力 | 容量1229Wh/定格出力1500W/瞬間最大出力2400W |
| エアコンとの相性 | メーカー解説では6畳用エアコンの駆動が可能 |
| 向いている用途 | 寝室など小さな部屋を短時間冷やす/スマートフォン・照明の電源確保 |
ここで押さえておきたいのは、容量から見ると冷房はそれほど長く持たないことです。6畳用の平均消費電力508Wで割り算すると、容量1229Whでは半日どころか数時間分にとどまる計算になります。しかも実際には起動直後の電力や変換時のロスが加わるので、計算値より短くなると考えておくのが現実的です。
失敗しやすいのは、「エアコンが動く」と書かれているのを見て「停電中ずっと冷房が使える」と思い込むことです。動かせることと、長時間使えることは別の話です。
判断のコツは、冷房を「最も暑い時間帯だけ」「寝つくまでだけ」といった使い方に絞る前提で考えることです。スマートフォンの充電や照明にも電気を残したいなら、冷房に回せるのはさらに短くなります。
リビングのエアコンを動かそうとして止まる失敗
停電対策としてポータブル電源を買ったのに、いざ停電したら動かなかった。これはエアコンの畳数と電源の出力が釣り合っていないことが原因のケースが典型です。
「定格1500Wならエアコンが動く」と聞いて購入し、停電時にLDKの18畳用エアコンにつないだら起動しなかった。原因は、18畳用の平均消費電力1883Wが定格1500Wを上回っていることです。対策は、動かしたい部屋のエアコンの適用畳数と消費電力を先に確認し、電源の定格出力に余裕があるかを比べること。広い部屋を冷やしたいなら、大型モデルを選ぶか、停電時は小さな部屋に移って冷やす運用に切り替えます。
この失敗が起きやすいのは、家族が一番長く過ごすのがリビングで、「停電時もリビングを冷やしたい」と考えるのが自然だからです。しかしリビングのエアコンは畳数が大きいことが多く、消費電力も大きくなります。
見極めのコツは、第3章の表で自宅の各部屋のエアコンを当てはめてみることです。12畳・14畳用は定格1500Wの範囲には収まるものの余裕が小さく、起動時や猛暑日には不安が残ります。18畳以上の部屋は、定格1500W級の電源では難しいと考えておくほうが安全です。
電源の容量や優先順位の決め方は、こちらの記事でも整理しています。

200V対応の大型モデルは「冷蔵庫と照明を2日以上」の発想
より大きな出力が欲しい場合は、200V対応の大型モデルという選択肢もあります。前述のメーカー解説では、容量4096Wh・定格出力3600Wの大型モデルについて、冷蔵庫と照明とスマホ充電なら2日以上使えるとしています。
定格3600Wあれば、第3章の表で見た23畳用の平均消費電力2472Wも数値上は下回ります。ただ、ここで注目したいのは、メーカーが大型モデルの使い道として示しているのが「冷蔵庫・照明・スマホ充電を2日以上」という点です。容量が4096Whあっても、大きなエアコンを動かし続ければ、それだけ早く電気は減っていきます。
やりがちな失敗は、大型モデルを買ったことで安心して、停電中に冷房を長時間つけっぱなしにし、翌日に冷蔵庫やスマートフォンの電源が残っていない状態になることです。停電が何日続くかは、停電が始まった時点ではわかりません。
判断のコツは、「冷蔵庫・照明・通信を先に確保し、冷房は余った分で使う」という優先順位を決めておくことです。大型モデルは本体が重く、置き場所や充電方法も考える必要があるので、購入前に設置場所と、太陽光パネルなどでの充電手段があるかを確認しておきます。
長い停電に強いのは蓄電池かV2Hか
家庭用蓄電池は「数日以上の停電」を想定した設備
ポータブル電源より長い停電に備えたい場合、次の候補は家庭用蓄電池です。蓄電池の価格解説では、数日以上の長期停電に対応でき、太陽光発電と組み合わせれば昼間に発電・蓄電できること、10~15年の長期使用を想定していることが示されています。
価格は、同じ解説によると本体と工事を含めた総額が、小容量タイプで約90万円、大容量・全負荷型では300万円超になるケースもあるとされ、標準的な容量12.25kWhクラスの平均は約210.1万円程度です(1ソースの情報で、時期や設置条件により変動します)。ポータブル電源とは価格の桁が違うので、停電対策だけのために導入するかどうかは慎重に考える必要があります。
よくある失敗は、「停電でもエアコンが使える」という説明だけで導入を決め、電気代の削減効果や回収年数を検討しないことです。蓄電池は停電時だけでなく平常時の自家消費にも使う設備なので、太陽光発電の有無や電気の使い方で価値が大きく変わります。
判断のコツは、停電対策の価値と平常時の節約効果を分けて考えることです。国のDR補助金や自治体の補助金が使える場合もありますが、年度ごとに内容や受付状況が変わるので、見積もり時点の公式情報で確認してください。容量の考え方はこちらの記事が参考になります。

蓄電池のカタログを並べてみると、5kWh、7.7kWh、9.8kWh、16.4kWhと数字がずらりと並んでいて、「結局うちは何kWh必要なの?」というところで手…
V2Hは電気自動車の20~70kWhを家に回す仕組み
電気自動車(EV)を持っている、または購入予定の家庭なら、V2Hも選択肢になります。V2Hの価格解説によると、V2Hは電気自動車から住宅へ放電できる機器で、EVの電池容量は20~70kWh程度。家庭用蓄電池の4~20kWhと比べて大きく、より長時間の停電に備えられるとされています。
理由は単純で、EVはもともと車を何百キロも走らせるための大きな電池を積んでいるからです。その電池を家の電源として使えば、家庭用蓄電池より大きな容量を停電時に使えることになります。
ただし価格は安くありません。同じ解説によると、V2H機器の販売価格は機種によって99万円程度から、上位機種では240万円程度のものまであり、これとは別に基本設置費用が20~30万円程度かかります(価格は1ソースの情報で変動があります)。V2Hと分電盤の距離が遠い場合などは追加工事が発生する可能性もあります。
失敗しやすいのは、EVを日中の通勤などで使う家庭が、「停電時に車が家にいない」可能性を考えずに導入することです。判断のコツは、車が家にある時間帯と停電の起きやすい時間帯が重なるかを考えることです。CEV補助金や自治体の補助金の対象になる場合もあるので、見積もり時点で確認します。
| 項目 | ポータブル電源 | 家庭用蓄電池 | V2H |
|---|---|---|---|
| 容量の目安 | 1229Wh〜4096Whの例 | 4~20kWh(標準12.25kWh) | EVの電池20~70kWh程度 |
| 費用の目安 | 製品による(工事不要) | 総額約90万円〜300万円超 | 機器99万円程度〜+設置20~30万円 |
| エアコンとの相性 | 定格1500W級なら小部屋向き | 給電範囲の方式で変わる | 機種・給電範囲で変わる |
| 向いている家庭 | 賃貸・マンション、まず短時間の備え | 太陽光がある持ち家 | EVが日中も家にある家庭 |
※蓄電池・V2Hの価格は1ソースの相場情報で、時期・設置条件により変動します。
「停電しても家中の電気が使える」とは限らない
蓄電池やV2Hを導入しても、停電時にどの回路へ電気を送れるかは機器の方式で決まります。ここを確認しないまま導入すると、「停電したのにエアコンのある部屋には電気が来なかった」ということが起こり得ます。
全負荷型=停電時に家全体の回路へ電気を送れる方式。特定負荷型=停電時に電気を送る回路をあらかじめ選んでおく方式。特定負荷型の場合、選んだ回路にエアコンが入っていなければ、停電中にそのエアコンは動きません。
V2H=Vehicle to Homeの略。電気自動車の電池から住宅へ電気を送る仕組み。
方式によって違いが出るのは、停電時に使える電気の量には上限があり、家中の家電を一度に動かすとすぐに足りなくなるからです。そのため、停電時に電気を送る先を冷蔵庫や照明のある回路に絞る設計が選ばれることがあります。前述の価格解説でも、大容量・全負荷型は総額が300万円を超えるケースがあるとされ、方式によって費用も変わります。
失敗しやすいのは、見積もりの段階で「停電時にエアコンを使いたい」と伝えず、エアコンのない回路だけが停電時の対象になっていたケースです。導入後に回路を変えるには追加の工事が必要になります。
判断のコツは、見積もり時に「停電時に使いたい家電とその部屋」を具体的に伝え、どのエアコンが動くのかを書面で確認することです。分電盤や配線の工事は電気工事の有資格者が行う作業なので、自分で回路を変えようとしないでください。
冷房が使えない時間の暑さはどうしのぐ?
エアコンが止まった室内は35℃以上になることもある
停電中、電源がなくてエアコンを動かせない時間は必ずあります。まず知っておきたいのは、エアコンなしの室内は気温35℃以上になることも珍しくないという点です。前述の防災解説でもこの点が指摘されています。
室温が上がるのは、屋根や壁、窓から熱が入り続ける一方で、それを外へ出す手段がなくなるからです。特に窓は家の中で熱が出入りしやすい場所で、日差しが直接入ると室温は短時間で上がります。夜になっても、日中に屋根や壁にたまった熱が室内へ伝わり続けるので、思ったほど下がりません。
よくある失敗は、「夜だから窓を閉めたままでも大丈夫」と考えることです。熱が逃げ場を失い、寝苦しい状態が続きます。
判断のコツは、室内に温度計を置いて、体感ではなく数字で室温を見ることです。停電中は照明もないので、電池式やアナログの温度計を防災用品と一緒にしておくと、次の行動を決める目安になります。高齢の家族や乳幼児がいる家庭では、暑さを感じにくい、あるいは自分で訴えられないこともあるので、室温を定期的に確認してください。
遮光カーテンと対角線の窓で「風の通り道」をつくる
電気を使わずに室温の上昇を抑える方法は、日差しを入れないことと、風を通すことの2つです。防災解説では、遮光カーテンを閉めること、対角線上にある2か所の窓を開けて風の通り道をつくることが挙げられています。
対角線上の窓を開ける理由は、空気が入口と出口を持つことで初めて流れるからです。1か所だけ開けても空気はほとんど入れ替わりません。部屋の対角に入口と出口をつくると、風が部屋全体を通り抜け、こもった熱を外へ押し出します。
失敗しやすいのは、日差しが当たっている側の窓を開けたまま、カーテンも開けてしまうことです。熱い外気と日差しの両方が入り込み、かえって室温が上がることがあります。
判断のコツは、時間帯によって使い分けることです。日中の日差しが強い時間は遮光カーテンを閉めて熱を入れず、外気が室温より下がる朝夕や夜に窓を開けて風を通します。防犯上、窓を開けておけない場合は、在宅して目の届く範囲で開けるなど、安全との兼ね合いも考えてください。
首・手首・脇を冷やし、気化熱を使う
部屋全体を冷やせないときは、体を直接冷やす方法に切り替えます。防災解説では、首・手首・脇など太い血管のある部位を冷やすと全身の体温を効率よく下げられること、濡れタオルと扇風機を組み合わせて気化熱を利用する方法が紹介されています。
気化熱とは、水が蒸発するときにまわりから熱を奪う現象です。濡れたタオルに風を当てると水の蒸発が進み、そのぶん周囲の熱が奪われます。エアコンのように電気で熱を運ぶのではなく、水の蒸発を使うので、充電式の扇風機やハンディファンの小さな電力でも効果を出しやすいのが利点です。
準備しておくものとして、同じ解説は保冷剤、経口補水液、充電式扇風機、ハンディファン、冷却タオルを挙げています。やりがちな失敗は、停電してから冷凍庫の保冷剤を探して何度も扉を開けることです。保冷剤の置き場所を決めておき、取り出すのは一度にとどめます。
判断のコツは、充電式の扇風機やハンディファンを平常時から満充電にしておくことです。停電中はポータブル電源の電気を冷房より扇風機に回すと長く使える、という選択肢も生まれます。
実は「冷房を動かす」より「移動する」が安全な日がある
停電対策というと「どうやって家でエアコンを動かすか」に目が行きがちです。しかし、実は一番確実なのは、涼しい場所へ移動することです。防災解説でも、室温が28℃を超えそうな日はエアコンなしで乗り切ろうとするより、涼しい場所へ連れ出すほうが安全だとしています。
停電の範囲は限られていることが多く、少し離れた場所は電気が通っていることがあります。ポータブル電源の容量には限りがありますが、移動すれば電気の心配はありません。家で冷房を動かす準備と、移動先の候補を決めておくことは、どちらか一方ではなく両方必要です。
こう言えるのは、家庭で用意できる電源には必ず限界があるからです。第4章で見たとおり、ポータブル電源で冷房を動かせる時間は限られます。停電が長引いたとき、電源が尽きてから移動を考えると、暑さで体力が落ちた状態で動くことになります。
失敗しやすいのは、「せっかく電源を買ったのだから家で頑張ろう」と、移動の判断が遅れることです。特に高齢の家族は暑さに気づきにくいことがあります。体調に異変を感じたら、迷わず医療機関や救急に相談してください。
判断のコツは、移動先の候補(親族の家、停電の範囲外にある施設など)と移動手段を、停電前に家族で話しておくことです。「室温が上がり続け、電源の残りも少ない」とわかった時点を、移動に切り替える合図にすると迷いが減ります。
計画停電と2027年の新省エネ基準、備えと買い替えはどう考える?
2026年の計画停電は公式発表なし、それでも夏と冬は備える
「計画停電が来るのでは」と心配している方もいると思います。防災情報サイトの計画停電の解説によると、2026年5月時点で、経済産業省・各電力会社から「2026年に計画停電を実施する」という公式発表・スケジュールの公表はありません。
一方で、同じ解説は電力需給の厳しくなりやすい時期として、冷房需要で電力がピークになる7~9月と、暖房需要が増えて太陽光発電が低下する12~2月を挙げています。電気は大量にためておくことが難しく、使う量と発電量を常に釣り合わせる必要があるので、需要が集中する季節ほど余裕が小さくなります。
よくある失敗は、「公式発表がないから備えなくていい」と考えることです。停電の原因は計画停電だけでなく、台風や落雷、地震などの災害もあります。計画停電がなくても、夏の停電リスクがなくなるわけではありません。
判断のコツは、計画停電の有無に関係なく、この記事の手順を「夏の定期点検」として見直すことです。同じ解説では、情報収集手段、照明、モバイルバッテリー、カセットコンロ、暑さ寒さ対策、現金・食料・水の備蓄、在宅医療機器への対応が備えのポイントとして挙げられています。在宅医療機器を使っている家庭は、かかりつけ医や機器の取扱事業者に停電時の対応を確認しておいてください。
2027年4月から壁掛け型エアコンの基準が最大34.7%引き上げ
エアコンの買い替えを考えている方に関係するのが、いわゆる「2027年問題」です。エアコンメーカーの公式解説によると、2027年4月に家庭用エアコンの省エネ基準が強化される予定です。対象は2027年度が壁掛け型エアコン、2029年度から天井埋め込み型・床置き型・マルチタイプで、性能の改善要求は最大34.7%とされています。
この基準はトップランナー制度によるものです。最も省エネ性能が高い製品の水準などをもとに基準値を定め、メーカーに対して適用する仕組みです。同じ解説では、現在のスタンダードモデルの約7割が基準に届いておらず、低価格帯のエアコンが市場から姿を消して本体価格が上がる可能性がある、とも指摘されています。
停電対策の視点でこの話を見ると、省エネ性能が上がるほど同じ冷房に必要な電力は小さくなります。第3章で見たように、消費電力が小さいエアコンほど、停電時のポータブル電源や蓄電池の電気で長く動かせます。
ただし、価格の上昇はあくまで「可能性」として語られているもので、どの製品がいくら上がるかは現時点で確定していません。判断のコツは、「値上がり前に急いで買う」ではなく、今のエアコンの状態と使用年数から買い替えの必要性を先に判断することです。
今使っているエアコンを急いで買い替える必要はない
2027年問題でよく誤解されているのが、「今のエアコンが使えなくなる」という話です。前述のメーカー解説は、トップランナー制度は製造事業者に適用される制度で、家庭で使っているエアコンを買い替える必要はなく、引き続き使用できること、2027年度基準によって修理ができなくなることもないことを明記しています。
理由は、この制度が「これから作って売る製品」の基準だからです。すでに家に設置されているエアコンの使用を制限するものではありません。
ありがちな失敗は、「使えなくなる前に」と焦って、まだ使える機種を買い替えてしまうことです。一方で、使用年数が長く調子が悪いエアコンを「2027年まで待とう」と使い続け、真夏に故障して停電時どころか平常時の冷房もなくなる、という逆の失敗もあります。
判断のコツは、2027年という年号ではなく、今のエアコンの状態で決めることです。冷えが悪い、異音がする、停電からの復旧後に不具合が出やすくなった、といったサインがあれば、買い替えを検討する時期です。そのときに、停電時に使う予定の部屋のエアコンは消費電力の小さい機種を選ぶ、という視点を加えると、備えと節電を両立できます。
家庭のタイプ別、停電とエアコンの備え方
ここまでの内容を、家庭のタイプごとに整理します。誰にとっても正解になる一つの方法はなく、住まいと家族構成で優先順位が変わります。
賃貸・マンションで大きな工事ができない家庭は、ポータブル電源と電気を使わない暑さ対策が中心です。定格1500W級のモデルなら寝室など6畳程度の部屋を短時間冷やすことを目安に、遮光カーテン・充電式扇風機・保冷剤を組み合わせます。ベランダの扱いなど共用部の制約がある場合は、管理規約も確認します。
太陽光発電がある持ち家は、昼間に発電した電気をためられる家庭用蓄電池の価値が出やすい家庭です。ただし停電時にエアコンの回路へ電気が届くかは方式次第なので、見積もり時に確認します。EVを持っていて日中も家にあることが多い家庭は、V2Hで大きな容量を使える可能性があります。
高齢の家族や乳幼児がいる家庭は、電源の準備に加えて、移動先と移動の合図を決めておくことを最優先にしてください。どのタイプでも共通するのは、「復旧後は3~5分待って1台ずつ」という手順を家族全員で共有しておくことです。
まとめ
最初の一歩は、停電時に家族が集まる部屋を一つ決め、その部屋のエアコンの適用畳数を確認することです。畳数がわかれば、第3章の表で必要な電源の規模が見えてきます。あわせて、復旧後は3~5分待ってから1台ずつ運転するという手順を、今日のうちに家族で共有しておいてください。電源を買うかどうかは、その後で判断しても遅くありません。
※価格・料金単価・補助制度は記事作成時点(2026年度)の情報で、変わることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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